ネアンデルタール人とクロマニヨン人(ホモ・サピエンス)が交雑していた証しとして、現代人に一定のネアンデルタール人由来の遺伝子があるとの見解が世に出されてまだそれほど年月が経っていない(2010年)。
絶滅したネアンデルタール人が今日の人類にまで痕跡(影響)を残している、ということがあって喜んだ。なんといってもネアンデルタールマニア、ネアンデルタール人ファンなのだ。それどころか、いまも生き続けてホモ・サピエンスと共存できていたらなと思っている。
ネアンデルタール人の遺伝子の解析からは、白い肌、青い目、ブロンドの髪といった特徴が抽出されるそうだ(アフリカ人にはこの遺伝子はごく少ない)。つまりこれらの特徴は白人の外観に通じる。程度の差こそあれ、今日の人類はネアンデルタール人のDNAを受けついでいる。
フランスのブルニケル洞窟でネアンデルタール人の住居跡が発見されたが、この場所は入口から350メートルも奧につくられている。火を使っていた痕跡はもちろんある。そうでないと暗闇のなかでたどり着けない。年代測定では17万年以上前である。
ネアンデルタール人は、死者を埋葬するときに花を手向けたとされる。高齢者や障害者が長生きしたこともわかっている。ワシの羽根や爪、貝殻の装飾品も見つかっている。言語能力もホモ・サピエンスと遜色ないことがわかっている。
一方で体格は現代人よりも大きく筋肉質、脳の容量はやや大きい(ネアンデルタール人が現在生存していれば大相撲の横綱はモンゴル人ではなくネアンデルタール人だろう)という彼らが約3万年ほど前に絶滅したのはなぜか?
参考までにチューリヒ大学が復元したネアンデルタール人の少女の顔。21世紀のまちを歩いていても違和感がない。かつてイメージされたネアンデルタール人とのあまりの違いに驚く人もいるだろう。ぼくはホモ・サピエンスよりネアンデルタール人が本能的に生きていたのではないかと想像している。
https://www.swissinfo.ch/jpn/%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%92%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E3%81%AB%E5%8F%A4%E9%AA%A8%E3%81%AE%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%82%E3%82%8A/5904308
COVID-19が流行の2020年、スバンテ・ペーボ教授はコロナで重症化するDNAはネアンデルタール人がもたらしたとしている。これは余談だけれど、交雑によって獲得する免疫もあれば、病気で不利に働く遺伝もあるだろう。コロナの影響が民族で異なるとすれば、それは遺伝子の相違が関わっている。
近年になって人類の多様性が少しずつわかってきた。学生の頃習った教科書にはネアンデルタール人は旧人とされていたし、デニソワ人(学名が付いていない)やホモ・フローレシエンシス(ホモ・エレクトス・エレクトス=ジャワ原人との関連性が濃厚か?)はいなかった。台湾海峡から出現した澎湖人はアジア第四の原人(ジャワ原人、北京原人、フローレス原人)とされるし、ルソン島で発見された謎の人類ホモ・ルゾネンシスは新種の可能性が高い。アジアは人種の堝だったのだ。
デニソワ人は、ネアンデルタール人と近い位置づけにあり、実際にネアンデルタール人とデニソワ人の混血の子どもが発見されている。大きな流れでいえば、ホモ・エレクトスから分岐した現生人類に至る流れ(ホモ・アンテセッサー、ホモ・ハイデルベルゲンシスなど)からデニソワ人・ネアンデルタール人の祖先とホモ・サピエンスの祖先へと分化。しかもデニソワ人、ネアンデルタール人、ホモ・サピエンスは同時代に存在しただけでなく交雑(セックス)しており、デニソワ人の遺伝子はメラネシアやアボリジニなどに多く残存する。インドネシアは人類遺伝子の多様性の堝である可能性もある。日本人には、デニソワ人由来、ネアンデルタール人由来の遺伝子の両方があるとされる。
いずれにしてもホモ属ではホモ・サピエンス以外の種は絶滅しており、ホモ属を未来へつないでいく現生人類の責任は重いという実感が湧いてくる(それなのに、つまらないことに明け暮れているよな)。
→ 人類史マップ サピエンス誕生・危機・拡散の全記録
2013年に南アフリカで発見された脳の小さな人類、ホモ・ナレディは上半身は古い世代の人類のようで下半身は現代人のようと形容された。化石の年代について約30年前との測定との発表がある。このことはホモ・サピエンスやホモ・ネアンデルターレンシスがいた時代と同じである。人類の起源、文化、交雑、進化の興味は尽きない。
(ところでぼくのATOKは「ホモ」と入力すると、ホモ族がすべて候補として表示されるようになっているので入力は楽である)。
ぼくはペーボ博士が好きである。この方がいなければぼくの好きなネアンデルタール人の真実が世に明らかとならなかったかもしれないから。ノーベル生理学・医学賞受賞、おめでとうございます。
夢中になって読んだ本
買って良かった本
全ページがカラー。全ページに大型の写真、図版、イラスト、復元図で散りばめられていて食後に眺めるひとときは欠かせない。ナショナル ジオグラフィックの好著(もちろん日本語版である)
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