2025年04月05日

神保町のあの名店のカレーに近づけるかも


ぼくのカレーづくりは子どもの頃に遡る。好奇心が高じて小学生の頃には一通りの料理はできるようになっていた。どういうわけか、うちの台所は広くて冷蔵庫から電子レンジまで6メートルある。調理器具の主力はガスだが(オール電化にしないのは災害対応のため。アウトドア用の持ち運べるガスバーナーが2機、イワタニのガスカートリッジの高出力機が1台と災害対策も万全)、炊飯器は6台(炊飯専用と保温専用の真空炊飯器、米以外の調理用、マスク乾燥用など)、両面グリルプレート(肉専用)、サンヨーのスチームコンベクション、温度調理電子レンジ2台、オーブントースター1台、スロークッカー1台、ホットデリ2台、精米機1台などが揃っているが、いずれも廉価で全部合せて10万円ぐらいかな。それに測定器(非接触赤外線温度計、芯温計、スケール2台)やタイマー4台が稼働中。

仕事は夜中までやっているが、その合間で調理するのは心がなごむ。といっても、のんびりやっているのではなく、調理中は厨房を走り回る(飲食店のよう。仕込みが終わるとまた仕事に戻る)。調理をすると運動ができる一石二鳥である。

ぼくはグルメでないので外食はほとんどしない。家でつくるので満足していることもある。家人からカレーのリクエストがあったので、きょうは新しいルーを使ってみることにした。それがグリコのZEPPINという商品。

近年の製品改良で減塩仕様となったという
https://with.glico.com/infocenter/column/report.html?number=54748
https://cp.glico.com/foods-tasty/
減塩リニューアル後の商品を、Amazonのレビューを見ると評価が二分されているが、この商品をどう捉えるかで食生活のタイプ、ひいては人生の健康をある程度予測することができると思う。

時間短縮のため、タマネギは炒めず電子レンジとホットデリで仕上げていく。始めて使うルーの味見をしてみると、「これはいける」。ルーはもちろん煮込まない。火を止めて入れて5分放置してかきまぜると、やや冷めるので少し温めて仕上げの香辛料を入れて混ぜたら火を止める。この味だったら、神保町のカツカレーの名店「南海」に近づけるのではとひらめいた。

これはキッチン南海のカツカレー。列はかなり長かったが時間は10数分で順番が回ってきた。黒いカレーが食欲をそそる。大盛りのキャベツも特徴。同店は閉店されたが、後継の店もあるようだ
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旨味の冗長さで味が濁るので、頭のなかで味を描く。酸味を付加したいので(南海風ではないが)トマトを入れる(南海のカレーは野菜の旨味が濃厚だが酸味は尖っていない)。素性が良いので足し算が違和感なくできていく。隠し味に高橋ソース(カントリーハーベストのウスター)を加えると少し南海に近づく。仕上げはガラムマサラで香辛料感を出してできあがり(色彩を黒くするのはできなかった)。写真ではおいしそうに見えないがそれが普段の家庭料理の良さでもあり「絶品」というよりは毎日食べられる吸い込まれ感を究めたという感じ。気に入ったので今度は別のアレンジを施してみよう。
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あり合わせの豚のこま切れ肉や野菜でつくったので見栄えは良くないが、何杯でも食べられるカレーに仕上がった。ハウス印度カレーなどとともに、専門店の風味に近づけるベースとしてはとても良いと思う。


posted by 平井 吉信 at 00:22| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2025年01月25日

トマトの季節 節約しつつもおいしさを


農作物全体が値上がりしているが、生産者の手取りは増えていないともいわれる。大好きなトマトも2年前と比べて2〜3割ぐらい高くなった印象があるけど、好きなものはやはり回数を少なくしても買いたい。それでもトマトは値上げ幅がまだ抑えられているように感じるのは、施設園芸で出荷量が多いため(競争原理)ではないかとも考えるけど。

地場の生産者では、あいさい広場に出品する樫山農園の「ももりこ」というトマトを買うことが多い。
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糖度、酸味、旨味が濃縮されている。樫山農園さんへは何度が伺ったが、すべてのハウスの栽培環境を遠隔で監視して事務所からパソコンで制御しており(その事務所もITベンダーのような洗練されている)農業のあるべき姿を先取りしている。このほかには鮎喰川の沖積平野の砂地でつくる鎌田農園さん(徳島市国府町)が水遣りの技術とも相まってすばらしい。県内では水の丸高原産もキョーエイのすきとく市に並ぶときに購入する。こちらは高原トマトである。県外ではハローズで常時並んでいる岡山のサラという農場のミニトマトをよく買っている。

スーパーを回っていて、目に付いたトマトがあったので2袋購入してみた(1袋258円は安い)。トマトはこれからが旬であり、楽しみな季節となってきた。

トマトは何にでも使える。少し鮮度が落ちてくると、カレー、鍋、うどん、ラーメンなどあらゆるものに使う。トマトには旨味成分が豊富なので出汁のような役割を果たすが、酸味を付加することで味の輪郭をつくりたいときに使っている。ホールトマトの缶詰は切らさない(ダイスカットよりもホールが好き。調味料要らずでパスタのソースが簡単にできる。隠し味にウスターソースを使うこともある)。

今回は、特売の全粒粉のマフィン(大手パンメーカー)に、たむらのタマゴの目玉焼き、そして岡山のサラトリオ(198円のレタスの仲間の詰め合わせ。値上がりしていないので使う機会が増えた。生で食べると柔らかくておいしい)を挟むこととした。
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調味料はマヨネーズ少々と、キャンドゥに売られているバルサミコケチャップ(少量で使いやすい)。これと手煎れのコーヒーで良い朝食になる。
posted by 平井 吉信 at 12:19| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2025年01月03日

「ゆこう」をつくる生産者に想いをはせて(しろいぬ珈琲/おかだファーム=小松島市櫛渕町)


ゆこうは、徳島県の勝浦川流域に産する香酸柑橘で、スダチとダイダイが自然交配したものといわれる。このブログでは以前から、ゆこうの良さをお伝えしている。この日は、これまで出会ったゆこうのなかで、もっともおいしいと思えるゆこうを生産しているご夫婦に出会って、ゆこうを味わうとともに、お二人のゆこうにかける想いに共感したので記しておきたい。

料理人やパティシエによれば、ゆこうが香酸柑橘でもっともおいしいという人もいる。徳島市の濱喜久さんや、月ケ谷温泉の奥崎料理長、素材系の菓子でいえば、ゆこうのシフォンをつくっているhowattoの伊豆田裕美さんなどはそうおっしゃるのではないか。
→ ゆこうの記事は タグからどうぞ

今回はhowattoさんからの紹介で、ゆこうの生産者で、おかだファームを運営している岡田伸一郎さん(農業はサラリーマンの兼業として)と、農園の広報とカフェのしろいぬ珈琲を担当する奥様の明子さんにお話を伺ったもの。初対面であったのでお話の内容を正確に理解できていないかもしれないが、書いてみようと思う。

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ゆこうとは、スダチ、ユズのような香酸柑橘の一種。その風味はこれまでに知られているどの香酸柑橘にも似ていない。強いて言えば、レモンのようにさわやかな酸味が先行しながらも濃厚なみかん系の果汁のおいしさがふくよかに香る。鮮烈かつ豊潤でありながらユズのような癖はなく、まろやか。香りが鼻腔に立ちこめて、舌だけでなく呼吸によっても味わえる(岡田さんのゆこうは、まず香りで味わってください)。ぼくにとっては、ゆこうのない人生は考えられないぐらい、冬の暮らしに浸透している。ゆこうには、口腔環境や腸内環境を調える作用があることも徳島大学の堤理恵さんらの研究等で明らかとなっている。
→ 研究成果をわかりやすくまとめた資料「徳島クワトロシトロス〜すだち、ゆこうの機能性の探究〜」(PDF)

このブログでも紹介している小松島市櫛渕町(櫛淵町とも書く)は、里山の風景が濃厚な地区。この地で、農業を営む岡田さんご一家は、タケノコ、やまもも、ゆこうを中心に、レモンや伊予柑、甘夏など多品種をいずれも無農薬で栽培されている。おかだファームは、岡田慎一郎さんとご家族で運営している。近年では地球温暖化で冬でも気温が高くカメムシなどの虫害に遭うことが増えたという。虫を防ぐのは人海戦術でやらざるをえない。

それでも無農薬を続けるのは、それが誰かの口に入る食べ物だからであり、手間が掛ってもそうしたいと思っているから。無農薬が尊いというよりは、誰かに食べてほしいと思う気持ちを大切にしているから。いただくときにはその想いを受け止めたい。

おかだファームのゆこうは可能な限り、木なりの完熟で収穫されている。風味の濃厚さはこれまで経験しなかったもの
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おかだファームでも農産物をあいさい広場など直売所に出品しているが、消費者は価格だけで判断しがちである。岡田さんも農園の理念、なぜ、手間をかけてつくっているかという世界観などを伝えていく必要があるかもしれない。

明子さんは、農園に隣接した場所で、おかだファームの果物を使ったドリンクを提供されている。しろいぬ珈琲では、イベントや店先での催事販売も行なっているので、Instagramを参照ください。
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完熟ゆこうと砂糖だけでつくられた飲み物を提供されているが、これまでに味わったことがない濃厚な果汁の凝縮されたおいしさ。ゆこうの魅力が体内の宇宙を音を立ててかけめぐる感じ。
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農園のなかの構築物といっても、薪ストーブもあり、南面のみ開けて冬の北西の季節風を遮るので寒くはない。休みの日にお二人と会話をしながら飲み物をいただくことはかけがえのないひとときとなるはず。ぜひ、一度訪れて、コーヒーやゆこうの飲み物を注文されてみては?
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このブログでは思いや信念を持って行動している人たちを、当事者のご了承を得ないまま勝手に書いている。余計なお世話のブログだけど書かずにはいられないので。

追記
帰りに立ち寄った櫛渕八幡神社のフウの木の紅葉と神社のたたずまいが素敵だった
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追記その2 ぼくのゆこうの飲み方(冬の風物詩)
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絞り器で手絞り(ゆこうを横から見て斜め四つ切りにしておく)
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絞った果汁を蜂蜜かメープルシロップを好みで入れて熱い湯で割る
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口腔環境を調えたり整腸作用がある。風邪の予防にもなっているかもしれない。毎朝の仕事開始時にくつろぎで始められる
posted by 平井 吉信 at 18:39| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2024年12月28日

雪どけ口溶けケーキの場面


おとぎの世界のようなこの一瞬。つくる人がいてこそ。
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雪にとざされた草原の果実のおもむき
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おとなが童心に還る場面の刹那にて
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posted by 平井 吉信 at 19:02| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2024年09月16日

スリランカのカレーも CoCo壱番屋のカレーも 家庭のカレーも みんな違ってみんないい


エアコンなしの夏を何度も乗り切ってきた。それは環境のためでも我慢でもなく、人類は地球温暖化を防げないと見切って、身体を暑さに慣らそうと20年かけて改造に取り組んだため。災害多発期で停電が発生することにも対応するため。

ただし自分はそれでよくても体調の優れぬ家族や高齢者のことを考えてポータブル電源を確保した。エアコンも短時間なら動かせるが、DC扇風機と冷蔵庫を稼働させながら体温を上げさせないことが可能となった。

暑い夏に食べたくなる料理はカレー。そこでスリランカ料理の店、マータラ(徳島市住吉)でカレーランチをいただいた。誰もが描く南アジアのカレーを、日本人向けに調整しつつ最大公約数のおいしさを実現していると思う。シェフはスリランカ人で奥様は日本人(県内のご出身)とのこと。

カレーランチは、ターメリックで炊き上げた日本の米に、チキンカレー、レンズ豆カレー、野菜カレーの3種に、パパタン(豆の粉でつくった塩味のチップス)、なすペヒ(揚げなすのマスタードソースマリネにサラダが付いてくる。徳島では得がたい風味なのに、どこか家庭の味のような親近感。
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その翌日に、CoCo壱番屋のカレーを再現したくなった。店で食べるよりは自宅でたっぷり食べたいので、久しぶりにココイチ再現カレーをつくってみた。

・ハウス印度カレー(定められた分量の2/3)→ 風味も色調もこれをベースにするのが似せやすい
・タマネギはフライパンで炒めず電子レンジで加温後に鍋へ(時間短縮&焦がさない→尖らせないため)
・小間切れの豚肉。ニンニクは焦がさない
・2辛相当に調整するため、赤唐辛子を1本
・夏場なのでジャガイモは割愛(余ったものは急速冷凍するがそれでもジャガイモは避ける)
・ニンジンは中2本(やや多めだが、傷みかけているものを使い切るので。夏バテにはこれぐらいでよし)
・隠し味に、ウスターソース(高橋ソース・カントリーハーベスト)、ムッティのトマトペースト、デカセールのメープルシロップ(グレードAアンバー)
・好みでガラムマサラを追加


オリジナルのココイチの雰囲気を尊重しつつ、家庭用なので具が多いうえ、コクもキレもこちらがあるけれど、べたべた感が皆無でいかにものカレー風味を抑えているので食べ飽きない。胃がもたれないすっきり感と満足感でCoCo壱番屋を上回る

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(何回かお代わりをした後の思い出し撮影なので見かけはご容赦を)
いつもは、スロークッカーや、ホットデリのような通電する鍋を使うのだが、急いでいたのでガス料理のみ。

四国の右下に亜熱帯のグンバイヒルガオが定着しようとしているこの頃、夏が長く秋が短く冬が唐突にやってくるようになったから、カレーを食べる(つくる)頻度が上がっているかもしれない。

posted by 平井 吉信 at 20:56| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2024年06月14日

梅酒とは、いのちの湧き出す泉 


梅酒、梅干しづくりを始めて20年余りになる。梅酒と梅干しは6月の風物詩ともいえるところが、2024年は梅の歴史的な不作。県内では神山町、旧美郷村が産地であるが、徳島新聞の記事では「梅の開花時期の2月中下旬に気温が乱高下した影響で受粉がうまくいかず、実がなりにくかったのが要因」とのことで、「収穫量が例年の1、2割程度にとどまる農家も」とのこと。農家によれば過去半世紀で例がないほどの不作で自家生産用にも事欠く状況とのこと。

美郷地区は梅酒の特区ともなっており、標高の高い生産地でもあるので生産者によっては農薬を使っていない。使っている生産者も安全安心が担保されている。いつもは生産者のお宅に伺って、収穫を終えて戻られる頃を見計らって直接わけていただくことが多かった。電話で伺ったところでは、どなたさまもお断りせざるを得ない状況であるとのこと。

梅の鮮度が香りと味の濃密さに影響していることがわかってしまうと、流通ものでは理想の状況にはならない(生産者が当日出荷している直売所などは例外である)。鮮度の高さは、水に浸して灰汁を取る時間を少なくするねらいがあって、採れたての芳香と相まって酸味が際立ち、雑味がなく透明感が高いのにいくらでも飲めそうな心地よさ。お金を出せば買えるだろうと思われるかもしれないが、やはり自家用と販売用では一粒一粒の手間のかけ方が違う。数万円の梅酒でもこれだけのことはできていないのではないか。誤解を怖れずに(誤解されても構わないが)、すべての飲み物のなかで自作の梅酒がもっともおいしいと思っている。

ぼくは酸味がとても好きで、もしかしてすべての味覚のなかでもっとも惹かれる。トマトやイチゴなども酸味が基本にあって、そこに甘味や旨味が後を付いてくる感じをよしとしている。後味まで濃厚なのに、いつのまにかさっと消えているはかなさ。誤解を怖れずに(誤解されても構わないが)、梅酒のない人生なんて考えられない。

6月になってから直売所を覗き込む。スーパーの地産地消コーナーも見てみるが、価格に驚いてしまう(今年は稀少なので理解はしているのだけれど)。そんなとき、前日に道の駅神山で見たという情報が寄せられた。次の日は日曜なので朝の開店に合わせて来店したところ、潤沢とまではいかないが、かなり並べられていた。数少ない生産量を出品していただけることに感謝しかない。

品種は鶯宿を3袋(約3kg)求めたが、価格は例年と同じぐらいであった。できれば価格はもう少し上げていただいたらと思うのだが。
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袋から出したところ。ありがたさにじんと来る。梅の程度は優秀である(ハネたのは2個のみである)。
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水に浸したところ。水の存在を透明にしているのは梅のつややかな光沢
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4リットル瓶を3つ漬け込んだ。これを1年寝かして1年かけて飲みきるつもり。
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地球温暖化の影響はじんわりとさまざまな影響が出てくるだろう。高齢化が進む生産者が梅の手入れや摘果ができなくなれば梅の木も元気ではいられない。温暖化と農業が直面する問題は食糧自給率が低い日本の最重要課題。ミサイルや戦闘機を増やすカネがあったら真剣に暮らしを考えよ! 消費が増える政策をただちに真剣に実行せよ!
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posted by 平井 吉信 at 23:32| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2024年02月10日

竹鶴12年を再現できないか


酒は飲まないし飲みにも行かない(コロナでなくても)のだけれど、家で少量の酒を味わうことがある。
酒は愉しいときこそ味わいたい。やけ酒や酔い潰れるなんてつまらない。酒は人を堕落させる道具ではないから。

気が付くと、自作の梅酒を筆頭に、日本酒、焼酎、泡盛とそれなりの銘柄が揃っている。ただしビールはアルコール度数0%の龍馬1865と知人のつくるクラフトビール以外は飲まない。

21世紀初頭のウイスキーが売れなくなった冬の時代、西暦2000年にニッカから発売されたのが創業者の名前を冠した初のウイスキー「竹鶴12年」。

ウイスキーブームの現在からは信じられないことだが、ぼくの手元にも山崎12年など現在では数万円のウイスキーがあった(当時は5千円台)。竹鶴12年も2千円少々(1980円のときもあった)で買えた。

その後、NHKの「マッサン」でブームになる頃には竹鶴12年は終売となったが、ぼくの乏しいウイスキー体験ではこれがいまも最上である。初めてこのウイスキーに触れたとき、こんなにおいしい酒があるのかと感動した。食品として表現するなら、甘味、酸味、適度な苦みが次々と顔を出しながらも(ほら、人間が縦に重なって顔を出しながら踊る振り付けのように)、親しみやすく、気品高く、庶民の幸せをボトルに詰めました、とでも言いたげに。

山崎12年の花が溶けてしゅわっと広がる味と香りの洪水もよかったが、基本となる方向性は竹鶴のほうが好きだ。終売となってからは竹鶴17年(4〜5千円)を3本買って、先日その2本目を飲み終えたところ(1本飲むのに5年ぐらいかかっていることになる)。山崎12年の良さを教えてくれたのは、小豆島YHで働いていた青年で料理の腕前が良い人であった。何の話だったかは忘れたけれど意気投合したことを思い出した。

竹鶴17年はもちろんおいしいウイスキーで素人のぼくが語るまでもないのだけれど、ぼくは竹鶴12年のほうが好み。想像するに、ウイスキー冬の時代の製品なので、若くても12年の原酒を、なかには20年を超えるようなものも混ぜていたのかも。さらにモルトを引き立てるグレーンの役割が大きく、飲みやすさにつながったのかもしれない。

竹鶴は余市と宮城峡のモルトを使っているとされるが、余市10年を飲んだとき、これまたピートの苦みという先入観ではなく、ミルクのような浮遊する甘味を感じて驚いた。宮城峡12年(まだ半分は残っている)では濃厚に詰め込まれたウイスキー成分を味わう際に、まずはそのままで、そして少しずつ加水しながら開かせていく楽しみがある。

竹鶴12年を既存のウイスキーのブレンドで再現できないかと思って、候補に選んだのがブラックニッカ(スペシャル。近所のスーパーで税込1600円ぐらいで売られていた)。親父は酒飲みではなかったが、応接室にはブラックニッカが置かれていて、ときどきはコーラ割りなどを楽しんでいた。21世紀初頭はウイスキーが潤沢に選べたので、ニッカからはオールモルトという商品もよく買っていた。顔なじみのブラックニッカ(派生ではないオリジナル)はいつでも買えるだろうと思っていたので。つまりブラックニッカ人生初体験(2024年)なのである。

ブラックニッカ(スペシャル)はシリーズのなかで唯一オリジナルを継承している。その風味も飲みやすいが、決して甘味ほやほや路線やハイボールの引き立て役ではなく、単独でも存在感がある。ある意味では、竹鶴12年の突き抜けたバランス感をやや下げて実現しているように思う。密度感があって香りの開く奥ゆかしさとふくよかであって透明感がある竹鶴12年には及ばない。そこでブラックニッカと竹鶴17年をブレンドしてみたのだ。

その結果、マッサン当時の竹鶴17年(2010年代半ば)と、ブラックニッカ・スペシャル(2024年)を1:2でブレンドしてみたら、竹鶴12年の感覚が味わえたのだ。
良いウイスキーはそれを味わっていた当時の人々との交流を思い出させてくれる。
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追記
サントリーの知多は、新しい銘柄で近所の店で4千円少々で販売していたもの。トップの発言の不快感からサントリーの不買運動を続けているが、これは例外にしてシングルグレーンのウイスキーという新境地を見たくなったので購入。これはこれで新たな地平線を開いたと感じる。ウイスキーの多様な生態系のひとつとして評価される製品と思う。


posted by 平井 吉信 at 12:05| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2024年01月08日

被災地でコーヒーを愉しむ機会があるとしたら


まずは、水、食糧、暖房、風呂とトイレが充足されるのが先決だけど、おいしい水と熱源が確保できたら、熱いコーヒーでしばし気分が良くなることがあるのではと。

そのときのコーヒーは、手軽に入れられてゴミが出ないインスタント。カフェインが苦手な方や夜でも飲めるカフェインレスが望ましい。

そう書くと、味に期待できないと思われるでしょうが…。
カフェインレスのインスタントコーヒーに期待せずに人生を過ごしていたのは同じでした。

ぼくは空腹時にカフェイン(コーヒー)を飲むと胃の調子が悪くなるというか、空腹感が増すのに食欲が落ちるとでもいうか。食前と夜のコーヒーは避けていた(欲しくもならない)。

それでもコーヒーを飲みたくなるときがある(普段は県外から取り寄せた数種類のスペシャルティコーヒーのみを飲んでいます)。仕事を夜遅くまで続ける場合や脂っこい味の濃い料理を食べたときなどにすっきりしたい。

そんなときに、豆を計量して、湯を専用ケトルで沸かしつつ、手動ミルでガリガリと豆を挽き、ハリオのV60ドリッパーにフィルターを装着する。ハリオはあっさり感が出るが、落とし方が早いと酸味が目立つ傾向がある。そんなときはハリオ専用フィルターを使わずに、汎用フィルターで抽出速度を落として煎れる。

いずれにしてもこの段取と手間が億劫になる。ゆえにインスタントでいくつか試してみたが、どれも焦げ臭いのやら酸味の質が悪いのやら苦いだけでコクがないのやら(誰もが知っている著名メーカー数社のブランド)。

そのなかで期待せずに買ったこの製品だけは違った。
このインスタントコーヒーは、ほのかな甘味すら感じるプリンのカラメルのような心地よい香りと苦みや雑味、嫌な酸味のない優れた後味が得られた。作り方は熱湯を注いでかき混ぜるだけ。その際に薄めにつくるのがコツ。そうすると前述の特徴が湯のなかに解きほぐされて堪能できる。ウイスキーをストレートで飲むよりも水割りでやるほうが新たな味が見えてくるあの感じ。

ときに続けて飲みたくなることもある。後味の良さ、ざらつきのないまろやかな透明感、それでいて口当たりのやわらかい芳醇ささえ感じた。いったいどんな技術が使われているのだろう。
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レインフォレスト・アライアンス認証農園産コーヒー豆を100%使用。カフェインはほとんどカットしてもポリフェノールはカットしないとか。

追記
このコーヒーは、近所で売っている自家焙煎のスペシャルティコーヒーよりもおいしい、というとほんとうかなと思われそう。例えば、ノンアルコールの龍馬1865とはヘニンガーのゲステルが通常の缶ビール(アサヒとかキリンとかの著名な銘柄)よりおいしいと思う人はきっと合うはず。コーヒーは焦げ臭いぐらいガツンと来るのがうまい(←ほとんど豆の味がしない)と思っている方は止めておきましょう。




posted by 平井 吉信 at 22:27| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2023年11月19日

食品製造販売でもっとも大切なこと 理念と科学


はからずしも予言のようになってしまった。10/28の投稿「おいしさが見える世界観 でもほんとうに大切なことは目に見えない」で指摘を行った。その抜粋はこちら。
限られた量しかできないのは食品製造の宿命として、そこに無理がある場合はすぐにわかる。売れるからといって数日前から菓子を焼いたとしても、良質の材料を使っていることをアピールしていても、その使いこなしがどうなのか? 何より食品にとってもっとも大切な衛生管理や品質管理はどうなのか?

全国ニュースになったのでご存知の方もいるでしょうが、東京で11/11〜12にかけて行われた祭事販売で売られたマフィンが重大な食中毒を起こしてしまった。厚生労働省は「喫食により重篤な健康被害または死亡の原因となり得る可能性が高い場合」に当たるリコール対象とした。おそらく東京都内の自宅でつくっていると思われるこの店は製造法を改めて製造数量を減らしたとしても製造環境が問題ではないかという懸念がする(室内がカビ菌などで汚染されている可能性。であればこの場所ではもはや製造できない)。

徳島でも催事販売で人気のマフィン店がある。販売量から推察すれば作り置きの可能性があるし、現場での品質保持や行列への配慮が見えず、見栄え重視でいつかはトラブルになるだろうと予見できたことから当事者に気付いてほしいと思って書いたのが10/28投稿(食中毒が起こればほぼ廃業に等しいのでお節介と捉えて対策してほしい)。

前回取り上げた模範的な事業者(事業者名を書いていないのは当方の配慮)は、さっそく公式Webサイトで菓子づくりの理念と方針について説明されている。それは、マフィンは当日朝に焼き上げたもののみを販売していること、大学での専攻や食品製造業界での経験から衛生管理を熟知していること、密閉した専門の工房で衛生管理に配慮してつくっていることなどが記されており、「おいしさよりも安全が優る」と結んでいる。

衛生管理については、当日朝に焼けば良いといった問題ではなく、焼いたすぐに急速冷凍(近年はブラストチラー、ショックフリーザー、リキッドフリーザーなどさまざまな急速冷凍機が手頃な価格になってきた)して解凍すれば作り置きでも問題はない。

むしろ材料の持ち込み(土壌菌など)や洗浄、容器の扱いや原材料の選定、加工、保管など全体で語られるべきこと。さらに火を入れる際に副原料の水分率などに配慮しなければシフォンもマフィンも商品にはならない。

例えば、イチゴのマフィンであれば、水分コントロールのできない生素材で焼くなどはありえないので、イチゴをペースト状やセミドライにしたうえで生地への影響と風味のバランスから試行しながら決定する。つまり科学的な調理の知見を基本にしながら素材ごとに試作して確認しなければ、上質の原材料を用いた菓子づくりは行えないというのがぼくの意見。

前回紹介した事業者は毎回異なる素材を活かすためにそれを行っている。当たり前といえば当たり前だが、そんなことは買い求める人には関係ないので、量と価格を見て「高い」などとSNSに平気で書き込んでしまう。

実際にこの店の売りであるシフォンケーキにしても、マフィンにしても、おいしさでも他を圧倒していると思うのだが、店主は安全性が第一との商品づくりを行っている。毎回の旬の素材とその確認、試行を経て安全に提供できる数しかつくらないため、そのため週1回のみしか営業できないのである。

マーケティングのテクニック(行列をつくるなど)よりも大切なのはおもいやり。この社会から「見栄え」や「ルッキズム」などがなくなって本質が光り輝くようになれば良いなと思っている。

良い焼き加減。よく加熱されて外はカリッと焼けているが、中はしっとり。あなたが食べているマフィンは中がパサパサしていませんか?
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スコーン
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クッキーの詰め合わせ
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人気の栗のマフィン
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看板商品のシフォン プレーンもおいしいが、時季それぞれの試みがおもしろい。紅茶とスイカの組み合わせの妙
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追記
かつて山間部の第三セクターの宿泊施設にYショップに加盟して売店を設置してみればと提案したことがある。町内にコンビニがないので宿泊客向け、住民向けにもなる。3大コンビニと違って24時間営業の縛りもなく、独自の町内産品も販売できるゆるやかな運営ルールである。

そのような利点だけではなく、災害時にはヤマザキの持つ風味保持技術が活きてくると思っている。添加物に依存して保存性を上げているのではなく衛生管理を高度に行って保存性を上げたうえであらゆる場面を想定して必要な食品添加物を配合していると理解している。添加物=悪、無添加=安全の単純な図式でなく(安易に添加物を使うのでもなく)、目的に応じた適切な考え方を採用すれば良い。

山間部の自治体ではライフラインの途絶や1本しかない主要道(県道)が通行不能となれば、町民や宿泊客の食事を数日確保しなければならない(町民全員というわけにはいかないが)。そのための意味もある。残念ながら想定される売上高が商品供給の相手先からは足りないということで見送ったとのことであった。

食の安全性は重要であるとともに、場面ごとに価値のあり方は異なるが、規模に関わらず果たすべき義務は同じである。お菓子は誰かの幸福の場面をつくるためにあるのだから(すべての商品やサービスはそうでしょう)。
posted by 平井 吉信 at 12:34| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2023年10月28日

おいしさが見える世界観 でもほんとうに大切なことは目に見えない 


心が軽やかにならないのは自分のことではないから。どこを見渡しても、政治の劣化、戦争、生態系の破壊…と心が安まることがない。だって身の回りのことは自分が生きている世界のことだから、別々に考えることはできないから。

だからといって、楽しみを持ってはいけない、ということではない。身近なところに(探しに行こうとすれば)小さな幸福は散りばめられている。それを集めて誰かが(自分も含めて)元気になれたらそれはそれで良いこと。

「おいしい」ってどういうことだろう? 
世の中で行列ができる店は数え切れないぐらいあるけれど、そのなかにほんとうにおいしい店(もの)はあるだろうか?と疑問を拭えない。

ぼくは職業柄、そんな食べ物や店を見いだす機会がある。限られた量しかできないのは食品製造の宿命として、そこに無理がある場合はすぐにわかる。売れるからといって数日前から菓子を焼いたとしても、良質の材料を使っていることをアピールしていても、その使いこなしがどうなのか? 何より食品にとってもっとも大切な衛生管理や品質管理はどうなのか?

ぼくは以下の視点で見ている。どれも大切だが、規模や業種によって重み付けは異なる。
・食品を業務として提供するので菌数管理や芯温など火入れを含む高度な衛生管理(これらは風味とも密接な関係がある)
・原材料調達への取り組み。安定供給と持続的な活用法の工夫。生産者や消費者、地域社会にどのような影響があるかを考慮
・科学的な食材調理の知識(マギーキッチンサイエンスなどに代表される分子調理や原材料や風味の組み合わせの妙)
・地域の食文化を理解した上で独自の提案で新たな魅力を創出
・マーケティング(売るためのナラティブ=盛った価値)ではなく、それを届けた人たちの幸福を考えてつくられている。
これをすべて見通せないと食品の評価はできないと考えている。

シフォンケーキやマフィンを例にとっても、徳島で(というか全国的にも)上記の基準をすべて満たす事業所はおそらく存在しない。ほとんどの店はそれよりも見せ方(小道具の使い方、見栄えのする外観など)や売り方に力を入れている。
事実そのような店は売れている。確かに売れているが、そこにあるのは次々と消費される「盛った価値」である。そしてほとんどの人はそれで満足しており、何がどのように違うのかをわからないまま消費しているともいえる(ほんとうに良い店はFacebookやInstagramの「いいね」を集めようとしていない。SNSすらやっていないこともあり得る)。

ここで紹介する店は徳島では数少ない上記の基準を90%以上満たす店である。目には見えなくてもそこが大切というところは手を抜いていない(これが一般の人には見えない)。徳島の秋を閉じ込めた焼き菓子の世界に浸っていただけたらと企画したもの。

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商品や店の説明はしないのはマーケティングの片棒を担ぎたくないから。実際に食べてみたい人は以下のヒントから自分で探して実際に足を運んで買い求めて確かめてください。

・徳島市内で毎週金曜日のみ営業している。
・旬の地元の素材を見繕ってつくるので次の週には同じ商品はないことが多い。


今回は焼き菓子だが、SNSさえやっていないのに、広大な食の世界を独自にきわめて、地道に積み重ねている製品や事業所、店がある。ほんとうに紹介したいのはそんなところだけれど、紹介することで迷惑がかかることを懸念する。それまでその店の本質を理解し長く応援している人たちが手に入れられなくなったり、行列による近所迷惑などが起こりえる)。

それでも伝えていかなければ悪貨に駆逐されてしまうことも起こりえるという矛盾を抱えて第三者として頼まれもしないのに発信している(お金をもらっても広告記事は書きません)。こんな世の中だから、ほんものに近づく努力をしている人たちに思いを馳せてみたいから。

posted by 平井 吉信 at 22:40| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2023年07月16日

ようやく夏の日照りがあらわれたので 漬け梅の土用干し


このブログは梅干し、梅酒、梅コンポートづくりをよくとりあげるけれど、子どもの頃から梅が好きなので仕方ない。市販品には満足しにくく、特に梅酒の量販品(高級品含む)はどれだけ高くてもうーん?という感じ。

梅の酸味を活かしたいので砂糖を控えめにしたい。すると衛生管理に手間がかかり抽出にコツが要る(梅酒をつくれば材料費だけでも1千円やそこらでできないことがわかる。販売価格数百円の梅酒ってなにそれ? 梅の味がしないし)。それは高価な商品でも生産性(原価に対する利幅)が求められるのは同じ。それに求める風味も違う。もっと素材感のあるものが欲しい。だから自分がつくるしかないのだ

梅干しは複数の樽で紫蘇の量を変えて付けている(塩分濃度は15%に統一)。しその風味が勝ちすぎると梅を支配してしまうので、しその多い少ないのムラを意図的につくって干すときは一斉に干す。色が多様なのはそのため。梅の表面の照り返しを見ていると、夏が来たという感じだね。
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追記 土用干し2日目
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posted by 平井 吉信 at 10:20| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2023年06月27日

青梅の季節 寝る前に梅を仕込む日々


六月になると、梅を栽培している農園に青梅(鶯宿)を取りに行く。これは梅酒用とする。鶯宿は6月中下旬で終わりとなるが、完熟した個体を漬け梅(梅干し)にすることもある。南高梅のほうが梅干しには適するといわれるが、ぼくは気にしないでそのときに手に入る梅を仕込む。

梅酒は収穫して1日以内のものを漬け込む。香りや酸味を活かしたいから。砂糖も控えめにする。ていねいに仕込みをすれば傷むことはない。

以前は35度の米焼酎で仕込んでいたが、入手が難しくなったので35度の泡盛(久米島の久米仙など)で漬けていた。コロナ下でそれも出回らなくなり、ここ数年はホワイトリカーにしている。どこでも入手できるタカラとサントリーで比べてみたが、この2社は原酒で味わっても圧倒的な優劣があり、梅酒にして1年経過したもので比較してもその差はまったく縮まらない(どちらが安売りされる場合が多いかでもわかる)。
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梅酒に回すもののうち、やや熟成が進んだものはコンポートとしている。砂糖は想定されるよりうんと控えめ。ある温度までをゆるやかに上げては水を何度か替えるのがコツ。梅の酸味を活かしたいから。糖度が下がると傷みやすいとされるが、そこは製法で気を付ければ問題ない。
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この梅のコンポートは口のなかにするりと入って種を呑み込みそうになるぐらいおいしい。甘味は抑えている。それでもやさしい滋味とつるんとした味。これ以上の梅のコンポートがあるとは思えない。
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子どもの頃から梅干しが好きで台所でつまみ食いしていた(なんという小学生)。市販の梅干しも悪くないけれど、自分でつくるのはさらにていねいにつくることができる。梅ひとつひとつを高濃度食品添加物アルコールで磨き上げて低い濃度の塩分(15%)で漬けるのが流儀。あとは漬け梅を紫蘇に付けたものを土用干しするだけ。紫蘇づけの作業を機械化できるとは思えない。この工程こそ自家製の強みがもっとも現れる気がする。まもなく始まる紫蘇漬けが愉しみ。
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posted by 平井 吉信 at 22:33| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2023年05月07日

これはなんと! 四万十ぶしゅかん アイスキャンデー(久保田食品)― 作り手の執念と余裕を感じる仕上がり 


久保田食品(株)は高知県南国市にあるアイスキャンデーの製造会社である。高知県や四国内の消費者にはアイスクリンなどでもおなじみの会社で、とても質の高い氷菓を提供している。

ぶしゅかんとは、高知県四万十市(中村)の香酸柑橘。特産品になったのは近年で、それまでは地元で当たり前に採れて当たり前に消費されていた。農薬を使わずとも百年程度は実をなり続けるという。

公式Twitter記事
https://twitter.com/kubotaice/status/1518411839436050432

四万十ぶしゅかん株式会社
https://shimanto-bushukan.jp/

高知県四万十の禁断の果実
https://www.shakaika.jp/blog/20496/shimanto_busyukan/

【PV】四万十ぶしゅかんの歌 -禁断の果実-
https://www.youtube.com/watch?v=M_cZZFLUo_c&t=1s
(知っている人は出演していなかったが、場所はすべてわかる)

中村の居酒屋では定番となっているぶしゅかん。カツオのさしみやタタキ、メジカ(ソウダガツオ)のさしみなど赤身魚に抜群だが、ビールに飽きて注文するぶしゅかんの酎ハイ(ぶ酎ハイ)がこれまたえい。この世でもっとも「さわやか」な飲み物(おっと、断定している)。ぐいぐい飲みたくなるし、それでいて舌のリフレッシュ効果があるのか箸を止めない飲み物である。

中村では天神橋のなかひら、喜八、栄町の千里、大橋通のたにぐち、やじろ兵衛などで飲んだ記憶がある(料理のおいしさとぼったくりのない安心感と手頃な価格では全国で中村の居酒屋が総合で一番じゃないろうか。みんな市役所に車を停めてのみよる。市も開放しちょるし、市の職員もまちなかに出あるく。おおらかでえい。むろん帰りは代行)。

その風味はどう形容すればよいか? ユズと違って料理を邪魔しない(さしみにユズは想像したくない)。すだちと違って、えぐみが少なく、果汁も多い。ゆこうと似ているかというと、ゆこうから旨味やまろやかさを減じてライムのような透明感。それでいて全体の雰囲気はやさしい。

栽培に手間いらずといわれる四万十ぶしゅかんが、なぜか中村でないと育たないという。その理由を推測するに、四万十川が江川崎からくるりと向きを変えるが、この四万十川と支流の広見川にあるのではないか。

四万十市江川崎は多治見市と並んで最高気温を誇る盆地である。豊後水道を抜けた季節風が愛媛県三間地区から広見川を抜けて四万十川との合流点の江川崎に達する。そこからさらに中村まで狭い川筋を北北西の風が一直線に走り抜けて中村に入って平野部となる。中村は高知県西南部でありながら冬は雪が多く寒いといわれるが、それと海からの暖かい風が出会うことによって霧や夜露をもたらす。しかしもともとは温暖多雨の地域である。これらの条件が複合的に重なって四万十ぶしゅかんがこの地でしか育たないのかもしれない。

地域性を持つ香酸柑橘としては、四万十ぶしゅかん、上勝ゆこう、北山村じゃばらが三大産地と思っているが、そのなかでも人為的でない地域性では四万十ぶしゅかんが際立っている。

前置きが長くなりました(このブログの名物?というか特徴)。
久保田の四万十ぶしゅかんキャンデーのできばえを書きたい(写真は撮ってないがよ。溶けるじゃろ。下の会社公式で画像を見てね)。
https://kubotaice-shop.jp/item-detail/1116691

アマゾンでもうっちょる
https://amzn.to/42ffBjk

原材料を見たら、どこまでも四万十ぶしゅかんを信じて心酔しちょるね。

原材料名:ぶしゅかん果汁(ぶしゅかん=高知県産)、砂糖、水あめ

ぼくは湯船に浸かりながら食べたけんど、香りと果汁の豊麗な酸味に打ちのめされたがよ。夢中に冷たい氷をかじる。あふれる香酸柑橘の酸と蜜をなめる蟻の気分なが。
(近所のスーパーにうっちょってよかった)

久保田食品からも四万十ぶしゅかんかも宣伝費はもろとらんけど書かずにはおられんがよ。ざまにえいけん。

追記
牧野富太郎もぶしゅかんの画を残している。
https://www.museum.or.jp/event/70200

牧野博士をイメージしたご当地ジン(マキノジン)でもぶしゅかんが使われている。
https://www.makinogin.com/
https://www.drinkplanet.jp/bartenders/view/183
posted by 平井 吉信 at 12:15| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2023年02月11日

かっぱえびせん 淡路島たまねぎのかき揚げ味 なんだ、これは


ふと立ち寄ったキョーエイ(マルナカにもあった)で見つけたのがかっぱえびせんの限定販売。
たまに食べたくなるのがえびせん(定番品ね)。定番スナック菓子のなかで完成度は群を抜いている。

そうそう、今朝ラジオをかけていたら、オトコは定番を好む(変化を好まない)という心理を説明していた。もともと狩猟がオトコの役割なのでターゲットを設定したらそれ以外は動かない(変化がない)のが安心するらしい。ゴールに向かっての求心力を維持するために変数を減らすということだろう。これはうなづける。

飲食店に行けば注文するものは毎回同じ。同じ季節に同じ場所で同じスミレを見ることに喜びを感じる。だからオトコは限定仕様には興味がないし髪を切る店を変えない(オンナはときどき気分を変えて店を変えるそう)。

飲食店はコロナでもっとも影響を受けた業種だけど、たくさんの経営者の話を聴いていると傾向が見えてきた。立地でいえば郊外の店のほうがやや影響が少ない。繁華街はエリアごと撃沈して人が戻ってこないのだろう。まあこれは当然と思うが、ぼくが注目したのはある経営者から聞かされた傾向。

飲食店といえば女性をターゲットに店づくりをして誘因する傾向があり、男性はそれに付いてくると考えられている。だから多くの飲食店が女性を意識して店をつくりこむ。確かに女性は身の回り3メートルによく気が付くという。メニューも立体感のある盛り付けとか少ない量の小鉢が多く付いてくるとかで女性を喜ばそうとする。量は少なめでも気のきいた演出感があるなど。

ところがそんな店がコロナで苦しんでいるというのだ。むしろ男性の固定客が多い店はコロナで影響が少なかったという。これもおおいにわかる。頻繁に来るオトコ客は同じ席に座って静かに決まり切ったメニューを注文して満足して帰る。一種のルーティンだ。男性の一人客は決して浮気をしないのだ。だから男性の一人客を大切にしている店はコロナでも影響を受けなかったという。

わかるな、これ。出張先などでカフェにひとりで入っていくときのばつの悪さ。入口で店主や店員さんに男性ひとりだけど入ってもいいですか?と必ず尋ねる。まわりに女性たちが陣取る席の取り方にも気を使うので店側が「こちらに」と案内してくれると気が楽になる。女性にとって居心地の良い空間なのだろうけど、オトコひとりはなんだか落ち着かない。だから食べ終わると8秒程度で席を立つ。勘定を済ませながら食事の感想(ひとことぐらい)と礼を言って立ち去り、店を出ると借りてきたネコ状態から自分に戻っている。そうでしたね。

前置きが長くなりました。定番ではなく限定のかっぱえびせんについてです。
袋を空けた途端、香りについて書きたくなった。香ばしさがひときわ際立っている。なんだかうまみやら豊かさやらが袋からたちこめてくる。皿に盛って花を近づけるとさらに納得。旨味成分がメイラード反応で引き出されたまま封印しました、という感じ。

ごめん、商品名を書いてなかった。
「かっぱえびせん 淡路島たまねぎのかき揚げ味」
https://www.calbee.co.jp/products/detail/?p=20221219133247
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瀬戸内海産天然えび100%を使用した生地に、淡路島たまねぎ、徳島県産すじ青のりを使用だとか。(たまねぎパウダーには淡路島たまねぎを60%使用、徳島県産すじ青のりを0.09%使用)。

こんなにおいしい食べ物ってあるの?と驚いた。飲み物は炭酸水がいいと思う。ぼくは自作梅酒を炭酸水で割る。このところ海(里海)の話題で記事を綴っていたからタイムリー。

想像力も働かせて書くけど、限定のこの商品がこれほどおいしいということは、定番商品の製法もかつてと変更、改良されていると感じる。ぼくにとっては感動レベルの商品だった。物価が高くなっておやつも買いづらいこのところだけれど、100エンぐらいで買えるのだから庶民の味方。アメリカならこれは300円以上だなと思ったけれど。安くて高品質でおいしいというのが貧しきニッポンの象徴なんだろうな。3月中旬までの販売だとか。

追記
ここまで書いて定番のかっぱえびせんはどうなんだろうと思って買ってみた。
違う。手が伸びていかない(理由はわからなくても身体は反応している)。
粉っぽい。香りがあまりない、というのは後付けの理由かもしれないけれど
突き抜けた幸福感はなかった(カルビーさん、ごめん)。
今回の限定版の完成度の高さを改めて確認した次第。

posted by 平井 吉信 at 01:40| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2022年08月06日

木陰というコーヒー(豆)


豆を取り寄せて手動のミルで引いて毎日コーヒーを飲んでいる。
1日1杯飲めば満足するのでカフェイン中毒でもコーヒー通でもないけれど
飲みたいコーヒーにはなかなかめぐりあわなかった。
(カフェインは苦手で空腹時は決して飲まない)

コーヒーといえば、がっつりと濃い深煎りコーヒーを飲むのが徳島の通という感じであったが、ぼくはこの人たちが好むそれが焙煎で焦げているだけのように思えて苦手だった。
誰かに阿南市内で焙煎したコーヒー豆をもらったのだが、まさにその状況で、飲むと健康を害するのではと思えるほど(コーヒー通でもないぼくでも身体が受け付けられない)だった。

いつも飲んでいるのは千葉市の小さな焙煎所から取り寄せた豆。東京から徳島に移住してこられた方に紹介いただいたもので、金額は手頃で200グラムで1000円前後のスペシャルティにしては手頃。

その焙煎所も店主は60代になられ、後継者もできていまがもっとも良い仕事をされているのではと感じる。徳島でも若手が浅煎りのコーヒーをめざしてここ数年開店されているが、グレード感は似て非なるもの。まだまだ技術も研究も足りていないように思うが、コーヒーの価格はもしかして彼らの値付けが高いのではとも思える。

いま飲んでいるのは「木陰」と銘打たれたオリジナルブレンドで、
ここ数年で(というか今年に入って)さらに焙煎のステージが上がっているように感じられた。

コーヒーのおいしさをぎりぎりまで攻めて抽出するのではなく、まさに大吟醸のようなゆとりを持って風味をつくっている。親族が遊びに来たら出すのだが、「なにこれ。身体に吸い込まれていく」という。雑味やえぐみが抜けて純度の上がったコーヒーはとげがなく、舌をなめらかに滑っていく。一口飲んで水を喉に入れるような飲み方は必要なく、コップを置いたと思ったその手がまた伸びていく。待ち遠しさを感じるほどで、しかも飽きることのないおいしさ。

入れ方は高い温度(95度)、蒸らしなし。ペーパーによる手落としで例のV60ドリッパーを使う。手動ミルは以下がおすすめ。股の間に挟めるので力が要らず豆がひける。ひとつやるべきことがあるとしたら、余った湯をミルに流して粉が刃物に残らないようにすること。酸化した豆の残渣で風味を壊さない。



定評あるV60シリーズで使っているのはこれ。冬場でもコーヒーが冷めにくい唯一の構造


ドリップポットは新潟県燕市産。高くないけれどよくできている日本の道具。


このブログをお読みの方はご存知のことだけれど、ぼくは仕事場や自分の部屋にエアコンを置いていない。執筆中のいまの気温は夕方で32度。扇風機も使っていない。残念ながら地球温暖化が進むと1990年代に見切ってからはエアコンのない状態に身体を慣らそうと少しずつエアコンを使わないようにして10年ぐらい前に取っ払った。夏の暑さを肯定的に捉えて愉しみたいので。

32度の部屋でホットコーヒーを飲むのだけれど、これが良い。冷たいと香りが鼻腔を抜けていかず残念だから。でもこのコーヒーは冷めてもおいしい。ごくごく飲めて冷めてもおいしいとは焙煎技術の深み。

そこでテーマは木陰。
仕事で鳴門市のウチノ海総合公園の近隣を訪れた際に立ち寄ったもの。しかし海沿いとはいえコンクリートの照り返しは見ているだけで暑いという人もいる。
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そこで鏡のようなウチノ海を目前に芝と樹木が織りなす空間をコーヒーのあてにしてみようかと。
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鳴門市の島嶼部は四国本土と陸続きのようにアクセスできるけれど、その立地の良さは京阪神在住者の終の棲家となり得る資格がある。食材をとっても、鳴門鯛、鳴門金時、鳴門わかめ、レンコン、梨、ドイツ風のパン(日本で第九初演の地でドイツ人の俘虜が地元の人と交流して継承したもの)と全国有数の素材が揃う。鳴門の渦潮、エクシブ鳴門、大塚国際美術館、ドイツ館といったコンテンツも一流。ただし唯一ダメなのが水でこれはまるで飲めない。瀬戸内の気候で雨が降らないから川の下流の水を浄化しているのだろう。浄水器で解決するけれど。
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posted by 平井 吉信 at 18:43| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2022年07月13日

久しぶりの松屋 コロナ下での外食の難しさ 


コロナが流行を始めた2020年4月以降、外食はほとんど機会がない。ほとんどは弁当持参としているからで、WHOやCDCが空気感染(エアロゾル感染)の怖れありと告知する半年以上前にその可能性がありと判断して外食を止めている(年に2〜3回しか外食していない)。

ぼくの場合、交通費と食費の合計はコロナ前の1/100程度に激減している。コロナ感染と後遺症のリスクを考えたらそうならざるをえない。業界のガイドラインでは不十分のところと過剰なところがあるように思う。科学的知見でノウハウは上書きアップデートしていかなければ。コロナで安心できる店があれば客は減らないと思う。そこで飲食店のためのコロナ対策をお伝えしている。
どんな理念で、どんな根拠に基づいて、どのような対策を、どの程度取り組んでいるか、その結果どんな結果(数字)が得られているかを別のブログでお伝えしている。それはお客のためだけでなく自店のスタッフの健康と集客(収益確保)のため。もちろんそこに手間と費用をなるべくかけないようにする。それがDX化だよね。

そんななかでコロナが収まった数日を見計らって、松屋へ出かけた。以前から全熱交換器による換気をうたっているし、松屋の客はほとんど会話をしないし、料理が来るまでマスクは外さないし、てきぱきと食べれば5分程度で出店できる。

久しぶりということで早く食べられるカレーにした。カレーにみそ汁というのもおもしろい取り合わせ。もちろんサラダはありがたい。
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ところで久しぶりの松屋が改善されていることに気付いた。
券売機とPayPay決済は以前から変わらないが、今回は従業員が机に半券を取りに来ないで番号を呼ばれて自分が取りに行く呼び出し方式(高速のSAでおなじみ)に改められていた。

これはスタッフの導線を劇的に短縮するとともに、少人数オペレーションも可能とした。さらにスタッフと来店客の接触を短くする効果も大きい。スタッフが感染すれば人手の確保が難しくなるからだ。

券売機の購入情報が厨房に順番に表示されるとともに、厨房からは手持ちの材料から売り切れをリモートで表示させているはず(もしかして冷蔵庫の中身をAIの画像判定で行っているかもしれない)。

さらにドレッシング。松屋のドレッシングは定評あるものだが、ドレッシングを開けるときに注ぎ口を指で触る危険があったもの。この形状では品質保持やコロナ対策が改善されるこはずである。中身も毎日入れ替えているかもしれない。
(余談だけれど山本太郎は週に3回は松屋の牛丼だと言っていたような)
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先日はシャトレーゼが北島町に再上陸した。四国の同店は次々と撤退し、最後の砦がうちの近所の店舗(四国最後の店)だったのだ。
吉野川の北岸だから行けても年に1回ぐらいだろうけど、順調に行けば吉野川の南岸にも出店されるかもしれない。FC側から見れば配送コストを考えればドミナント出店が望ましいだろうから。

コロナが収束する頃にサイゼリアが出店してくれるとうれしい。
マスクは今世紀中にはずせる環境にならないかもしれない。根源の状況はまったく改善されていないし、それがほとんど不可能なことも書いている。コロナから目をそらさずコロナと共存していく生き方(選択肢)を選ぼう。

追記
マスクを付けると熱中症になるなどと喧伝されているけれど、日経メディカルの記事では国内外の研究者による実証研究では深部体温が上がるなどの報告はないとのこと。マスクと熱中症が無関係であることは確かとしても不快感の問題が残る。周囲にヒトがいない環境でマスクはする必要がない(しても構わないが)。
posted by 平井 吉信 at 23:08| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2021年11月20日

緑濃きもの しっかりしていて 甘いもの 


四国のスーパーでは高知県産、宮崎県産が並べられることが多いが
地元の産直コーナーにはもちろん徳島県産もよく見かける。
(生産量でいえば高知県産は徳島県産の30倍ぐらい多いのだ=野菜生産出荷統計)

ピーマンはおいしい。
食べるときは1人で5〜6個は食べる。
特に白い部分がおいしいので除去しない。

今回は珍しくパンと目玉焼きの朝食で
フライパンで軽く炒める感じ(加熱しすぎないよう)。
(今回は半分に縦切りしているが、丸焼きすると内部が蒸し焼きになって甘みがさらに増す)
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ピーマンは生でもおいしい。
手軽なのは輪切りに細かく切って「くらこん」の塩昆布と合わせる。
簡単な弁当のおかずにもなる。

このピーマンは近所の生産者から直接分けてもらったもの。
標高の高い水はけの良い傾斜地で自然栽培されているもので
一般的な流通(スーパー店頭)ものと比べてえぐみが少なく甘みが強い。
さらに、果実がしっかりしていて長期にわたって崩れない、傷まない。

キョーエイで販売されている阿讃高原豚の特売時に買ったロース肉と。
(筋切りはせず両面を弱火で。脂面を立てて焦げ目を付かせ出てくる水分を紙で吸い取りつつ途中からピーマンを入れて蒸し焼き、最後は水分を飛ばす。固くならずに旨味を閉じ込めて火を通している。醤油と洋辛子で食べる)
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ピーマンがなければ野菜はつまらない。
栄養価が高く安くおいしい野菜で収穫時期が長いということでピーマンは野菜の王様といったところ。
(朝食べたのにまた食べたくなる。10代の頃と体型体重体力が変わっていないのは野菜を中心とする雑食のおかげ。野菜は好きだけど菜食主義やヴィーガンはやらないです)


posted by 平井 吉信 at 13:16| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2021年09月11日

生地がおいしいパン店、生地がおいしい焼き菓子店。季節が一瞬きらめいた


howatto(伊豆田裕美さん)さん、北島大進さん(ブーランジェリーコパン)は食材をおいしさに変える冒険家だ。伊豆田さんは中徳島町でシフォンケーキやビスコッティなどの焼き菓子を、北島さんは徳島市西船場でパン(国産小麦、全粒粉、ライ麦など)をつくっている。

どちらも創業して2〜3年の方だけど県内ではここのでなければと根強いファンが支えている。コロナ下であっても着実に歩まれているお店だ。

共通点は食材を大切にしていること、食品メーカーや研究所での経験がおありで食材の調理を科学の視点で見ていること。
食材を厳選しているというのはどこでも売り文句だが、実際に風味に反映していながら、そのことをうたっていないのには理由がある。
食べればわかるから。また稀少な食材は枯渇するリスクがあることを知っているから。

howattoではプレーンのシフォンケーキが食材そのもののおいしさを提案しているし、あこ天然発酵の酵母を使うコパンの食パンは流行とは無縁の小麦を噛みしめる歓びを感じさせてくれる。それは一億総グルメ時代に原点の魅力をあえて伝えようとしているかのようだ。

このおいしい生地の上に、地元を中心とした季節の素材を大胆に使ってみせる。それがまた驚きなのだ。
(食べてしまったあとで「しまった」と思ったので写真はないが)コパンではマリトッツォをいち早くつくっているけれど、大手の商品とは比較にならない風味のようだ(価格も大手の2倍以上なのだが、食べた人は必ず再訪するという)。

金曜日のみ営業のhowattoを昨日訪問すると、スイカのシフォンがあった。
(商品名/紅茶とスイカのシフォン)
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佐那河内村の方からみごとなスイカをご提供いただいたという。しかし焼き菓子にスイカ?と思ってしまう。さてどんな仕上がりかは帰ってからのお楽しみとして。

さらに佐那河内産のスダチ(さなみどり)、阿波すず香、ゆずを使用している、とある。
冒険家というのは菓子ともっとも相性が悪いスダチ類を使おうとする点だ。
さなみどりは、ぼくの知識が間違っていなければ日本で1軒だけの生産者(大仲さん)がつくっている稀少なもの。いや、稀少なだけでなくこれを知ったら料理人はたまらないだろうと思える食材。

→ さなみどり すだちから生まれた豊かで潤う香酸柑橘 

店内は秋の素材がお目見えしている。
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大きな実が入った栗はディスプレイにも使っているが、現在仕込み中というものだそう。
栗の出所は福原純子さんが営む有機農園小七郎さん(上板町)。

小七郎さんの野菜や果実は有機だからどうだ、というのではない。形式的な安全性(有機JAS認証)だけではなく、食材としての磨き上げが高い次元に到達している。不思議なのは生命力の強さを感じる(色艶が良い、見映えがするなど)のに、人間が食べておいしいという点だ。なにか植物はそれをつくる人の思いを感じ取って(感応して)人間に生命を捧げている、というと神秘的になりすぎるけれど。

以前に玄米を分けていただいたが(うちでは炊飯の前に精米して五分づきで食べる)、米の粒のふくよかさはこれまで見たことがない(味わったことがない)ものであった。ただし手間をかけるため反収は驚くほど少ないという現実がある。

howattoさんでは小七郎さんの食材の可能性を菓子として使っている。近々小七郎農園の特集を行うそうだ。この栗も尋常ではない立派さだが、これが今秋の菓子としてお目見えする日も遠くないだろう。


さてと家に辿り着いた。
鼻腔までを含めた身の回りと身体の無害化(コロナ下のルーティンで10分以上はかかる)ももどかしく、紅茶を入れてみた。

生地は紅茶だが、やはり生地がいい。
耳たぶをさらにやわらかくしたかのような限りないやわらかさ、しっとりとしたふくらみ感。
そこにスイカの果実がしたたかに存在感を放っている。

スイカやほとんどが水分なので菓子にどのように応用するのか?
その答えが紅茶(アールグレイ)とスイカとされたのだろう。
感覚的に表現すれば、紅茶の風味がスイカを活かし
スイカの風味が紅茶の存在を際立たせているといえる。
この組み合わせはどのように見いだされたのだろう?
(味覚の合わせには何らかの科学的な根拠がありそうである)
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この商品、9月10日の店頭のみの再現だろうと思った。
予感がしたのでほかのお客様のことを考えて1個だけ買った。
それを家で小さく切り分けてスプーン1個ぐらいだけど味わって食べたのだ。
(自分だけが独占してもうれしくないだろう)

味わった体験を言葉に置き換えるのはむなしくなりそうだけど
ここに書いていることが心の動きといえば十分だろう。
ここでは素材も来店客も一期一会で季節と人を結わえていく場なのだ。

howatto https://howatto.jp/
ブーランジェリーコパン https://www.instagram.com/minnano.copan5.51/

追記 店内の感染対策について

どちらのお店も感染症対策は万全で模範事例だ。
コパンさんではCO2センサーを目に見えるところに設置されている。
howattoさんで許可をいただいての計測はご覧のとおり500ppmの前半。
野外が410〜450ppmなので外と変わらないほどだ。
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実際にあちこちで許可をいただいて計測しているが、ロスナイのような全熱交換器(デルタ株は全熱交換器+4〜5万円クラスのHEPAフィルター空気清浄機が対策の要)がフル稼働しているオフィスで人数制限をしているところでは600〜700ppm程度、一般的な出勤状況だと800〜1000ppm程度が多いようだ。数値が下がれば眠気も減るので生産性は上がる。真夏の熱波も真冬の換気も窓開け換気と違って快適に行えるのがロスナイ。そのロスナイを使って24時間換気を行うことでコロナでの安全の目安としている700ppmを越えないことを啓発している。
全熱交換器の導入は、コロナに限らず感染症対策や快適な環境の提供、省エネルギーの3つの利点から費用対効果が高い。HEPAフィルターがないのに高価な空気清浄機(5万円以上の海外製など)やら実空間での効果が疑わしくむしろ体調不良の原因となり得るイオン(ナノイーやらプラズマクラスターなどの名称のオゾン)吹き出し装置、抗菌コーティングなどを導入する資金があったら日本製の全熱交換器を導入すること。デルタ株に対して何が有効か、何が対策の要諦か、情報の取捨選択と科学的な根拠に基づく理知的な判断ができなければムダなものを買わされてしまう。

posted by 平井 吉信 at 12:42| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2021年08月29日

焼豚玉子飯


愛媛の人、特に松山から東予にかけてなら、ほとんどの方はご存知かも。
今治名物の焼き豚玉子飯。
目玉焼きが2個、そして焼き豚が満載。
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目玉焼きをつぶしてかき混ぜて食べる。
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意外といけるのだ。むつこいのではと思ったが、もやしのスープがオアシスとなって食べられる。
もともとはまかない用だったとか。
数回食べたことがあったが、量は思ったより多くなかったとしても晩飯は食べずにいけそうと思えた。
(店名は重松飯店。写真はコロナ下の数年前のこと)

夏バテ気味の人は自宅でつくってみては?

追記
愛媛はソウルフードが全国有数の県かもしれない。
宇和島の鯛飯、今治の焼き鳥や焼豚玉子飯、松山のことり、アサヒといった甘い鍋焼きうどん、でゅえっと(松山市駅前商店街)やドリップ(西条市)のナポリタン。なかでも宇和島はおみやげに迷うほど名物が多い。自宅からもっとも遠いけれど、日帰り出張(0泊2日)なんて強行軍のセミナーなどもやったな。すべてコロナ前のことだけれど。

posted by 平井 吉信 at 00:16| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ

2021年08月27日

ムロトアナンカイガンカクテル

夏らしさが戻ってきたかと思ったら秋の風を感じる。
もう2021年の夏は戻ることはないだろう。

咽の渇きを癒そうと飲み物をつくる。

甲類焼酎(キンミヤ) 3
トマトジュース(カゴメ無塩)3
炭酸水(サントリーストロング) 3.8
ゆこう果汁(西地食品)0.2

名付けて
ムロトアナンカイガンカクテル

南海の孤島の倦怠を風速8kmで吹き飛ばす南海の孤島で
ひといきつくためのひとときに
夏の夜に音楽を聴くときの夏の夜に
岬へ向けてまがりくねったみちをたどる岬と
果実の生命力を感じとれる果実をイメージしてつくりました。

と、シニアカクテルブレンダー(アドバンスド・コースB、2021年創設コースから)なら言うんだろうな。
(公益財団法人日本シニアカクテルブレンダー協会から引用)

このカクテルのスパイスはゆこう果汁。
徳島県南部固有の香酸柑橘でゆずとだいだいの自然交配したもの。
風味はユズのようなクセはなく、酸味に透明感があってまろやか。
→ ゆこうについてはゆこうタグから
ゆずと同様に絞り手(製造会社)で風味が違う。
これを数滴垂らすと味わいと香りが一体となって立ってくる。
徳島の人以外は入手しがたいのでレモンで代用可。
タグ:ゆこう
posted by 平井 吉信 at 23:03| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ