2014年06月08日

「おもてなし(表裏なし)?の伊座利de海女さんや漁師のおばちゃんが営むイザリCafe」 そして伊座利キャニオン

おもしろい。
表題のカギ括弧内はぼくが付けたのではなく
カフェのチラシから。

さらに、漁協のWebサイトに
自虐的だが自信に満ちた問答が。
(ここから引用)

「アラメちゃん」の特徴を一応、前向きに捉えてみました。

●味がない     ⇒   調味料となじむ。味がしみ込む     
●海藻臭さがない  ⇒   食べやすい。
●スジスジ ⇒ この食感がたまらない!
●戻すのは簡単! でもアラメだけでは…
●食べ方がようわからん!  ⇒ 調理意欲が湧く。

(ここまで)

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由岐町の阿部(あぶ)・伊座利(いざり)地区は
かつて陸の孤島と形容されていた。

でも、いまのこの地区にはヒトの可能性がいっぱいある。
地元が問いかけ続けているのは集落(共同体)のあり方。

子どもがいなくなることは集落の崩壊を意味する。
そこで移住する人を増やしたいが、それを目的とすると失敗する。
(売上もそうだが結果として得られるもので目的ではない)
伊座利では留学と称して短期間の受入を行い、
集落に迎え入れるかどうかを見極める。
(相手方は溶け込めるかどうか)

なぜ、定住ではなく留学なのか。

いまの時代、「定住」をめざすことがすでに不自然。
なぜなら、ひとの生きるかたちが変わってきている。
10年ぐらいの単位でやりたいことをやりつつ
(ときに遠回りや下準備をしつつ)
10年=1クールとして人生を実践する人が増えている。
いわば循環型(ぼくもそうだけど、いまの仕事を10年後もしているとは思えない)。

まちの人が田舎に住むことの課題は3つある。
(1)生きていくための経済手段の確立
(2)住居と共同体へのなじみ
(3)教育と緊急医療の体制

移住する人にとって
短期間でこれらを見極めるのは容易ではない。
また、受け容れ側も新しい風が
よい影響をもたらすかどうかわからない。
伊座利のような小さな集落にとってはなおさら。

伊座利のような地区に移住したいと考える人は
20代前半で就職し、30代までに家庭を築いて定年まで
という直線的な人生を選ばない人だ。
だから、まっしぐらに移住することは
直線が単に折れ曲がっているだけ。
田舎暮らし=定住ではなく
人生の10年を過ごす選択肢として提示する必要があるのではないか。

ということで、
留学は来訪者の思惑と受け容れ側の事情が合致している。
短期滞在として留学を行うところから移住する人も出てくる。

過疎対策として定住促進に力を入れる自治体が増えている。
施策として議会の理解は得られやすいが、
実はIターンは敷居が高い。
上述の課題に加えて、
・体質として地域に合うかどうか、
・作業にこき使われたり活性化に駆り出されるのではないか、
・自分がやりたいことが実現できるか(自分の時間が確保できるか?)
などの懸念がある。
やりたいこと―それは人生を通してのライフワークの場合もあれば、
十年程度の課題であることもある。
だから、数ヶ月、数年住むという選択肢が必要となる。

上勝町では、(株)いろどりが窓口となって
インターンシップ事業を実施し、
事業終了後に移住したIターンが30名を越えた。
その人たちは町内で就職ないしは起業した
(上勝町は四国でもっとも人口の少ない町である)。
また、移住しなかった人たちとも縁ができたことで
県外の上勝ファンを創造できた。

コミュニティという言葉には、
教育、社会や自然との付き合い方、共助や防災まで含んでいる。
伊座利では、よその家の子どもが悪いことをしたら叱る。
まちでそんなことをしたら、
モンスター両親が血相変えてやって来る。
でも、伊座利は地区全体がひとつの大きな家族のよう。
自分の時間さえ確保できたら、大家族は悪くないと思う。

不器用だけどモノサシがぶれないから
マーケティングの匂いがしない。
小さな集落だからこそ経済価値だけで判断しない。
伊座利では齟齬を生じないよう
集落全体で子どもの教育のあり方を明確に打ち出している。
言い換えれば、来訪者に選ばれつつ、
来訪者を選ぶマッチングを行っている
(理念を発信しない地元事情だけの定住促進は選ばれない)。

伊座利の物語については末尾のリンク先を見るとして
全国から、わざわざここへ来る人がいるという
イザリCafeへ行ってみた。

★ ★ ★ ★ ☆

漁港からすぐの高台に漁協と並んで立っている。
目の前の漁港で採れたものを出すから
人気のさしみも出せる日と出せない日がある。
魚の種類も変わる。
それでいい、それがいい。
(でも、その日の魚種を黒板に書いてあるとなおいいのだが)

さしみといえば、冬が旬だけど
海が荒れたらひと月近く出漁できないこともある。
エビフライ定食などは通年あるらしい。
(もちろん地元のエビだろう。次はそれを)

伊座利のある由岐町は
イセエビ、アワビ、ナガレコ(トコブシ)、アラメなど
高級食材が水揚げされる。
タチウオ、アマダイ、イサキ、グレなども採れるはず。
ぼくもときどき由岐の網元さんから魚をいただく

そう、みんな魚を楽しみにしている。

阿南市福井町から峠を越えて海が見えた。
ぐんぐん高度を下げていく。
道路は大型バスが対向できるぐらい快適で
もはや陸の孤島は過去の形容詞。
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集落のなかを伊座利川が流れる。
この風情が妙。
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道ばたにはハマダイコンやムラサキカタバミなど。
これはおそらく園芸種が野生化したもの。
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海岸性のシシウド属のよう。ハマウドか。伊座利川沿いにて。
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漁港が見えると右に曲がり黒の建物が見えてきた。
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これがイザリCafe
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名前を書いてテラスで潮風に吹かれているとすぐに名前を呼ばれた。
注文したのはいざり御膳。
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今日のさしみの魚種は、イサキ、ブリ、サバ、カツオ、グレあたりか。
サバは佐賀関や土佐清水のサバに負けないものであった。
イサキは甘みがあるのでわさびなしで味わう。
カツオはまだ脂が乗っていない。
グレは歯ごたえがある。
沿岸のグレはオキアミで大きくなっているので美味。
浜から直送された素材ならでは。
(でも、もしかしたらサバを除いて一日寝かせて熟成させているかも)
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遠くから来た人たちで賑わう。相席の前のご夫婦と歓談を。
ジャズが流れる店内はカフェ。メニューは漁港食堂。
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地元(日和佐)の絵本作家梅田俊作さんの作品が壁に。
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朝顔に囲まれた東向きのイザリCafeのテラス。
朝日(アマテラス)を眺めながら
海女を眺めるテラス
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(実は職業としての海女さんを募集中
http://www.izarijin.jp/uploads/photos0/22.pdf

漁港内に浜がある。

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振り返ればカフェが。
連ドラの「あまカフェ」に先だって
地元の思いが沸騰して産み落とされた。
「新しい公共」や「共助」よりも時代を先取り。
そして7年。

伊座利川のすばらしさが心に残る。
海はもちろん、伊座利地区でもっとも魅力ある地域資源かも。
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どこがって?
行けばわかる(感じる)はず。

たぶんこの川は水生生物の宝庫。
山から下りてきて水はほとんど
人家にまみれることなく海へ注ぐ。

河口は川がそのままたどりつく。
(生まれて一度も自然の河口を見たことがない人がいまの日本に9割以上はいると見た)
だから海と川を自由に行き来できる。
川は清浄で隠れ場所も多い。
エビやカニ、ウナギがたくさんいるはず。
(四国のあちこちの川でテナガエビ採りをした経験ですぐにわかった)

河口近くにはグランドキャニオンのような壁があり
その裾野を洗う。
この様子が漁港から手に取るようにわかる。
伊座利川は海に近づくと漁港と
伊座利キャニオン」の間を流れるのだ。
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山から出てきた伊座利川は集落の間を流れる。
小さな橋がある。
その橋の上から水の流れを見るともなく眺める。
水は漁港(海)へ辿り着く。
その先で父(夫)が漁をしている。
この橋に名前を付けるとしたら
いざり想い橋」略して「いざもい橋」。

この川を見るためだけに伊座利へ行く価値がある。
なぜ、これまで気付かなかったのか。
観光案内にも伊座利川は載っていない。
伊座利の自然や風土をもっと知りたい。

ただし、伊座利地区は大人数が押しかければ地元は迷惑。
クルマを分散して停めても10台〜20台が限度。
伊座利キャニオンにしても
大多数の人は
四国でも一級の観光資源に気付かず帰っていく。
ただ、感じる人には
伊座利キャニオンは無限の驚きと感動を与えてくれる。
(地元の人たちも気付いていないけれど)

阿南バスが運営するコミュニティバスは、
伊座利、阿部、志和岐、由岐を結ぶ公共交通。
(このコースはまちでしか運転をしたことがない人は通らないこと)
由岐まで出れば、JR四国の宝と呼ばれる特急「室戸」が使える。
(室戸岬までは行けないのに「室戸」という)
(しかし、牟岐から阿佐海岸鉄道に乗り換えれば、一般道路も走れる魔法の両用車両を使えるかも)
↓ URLが泣ける。キタテツではなくアサテツなのだ。
https://ja-jp.facebook.com/asatetu.ganbaru

しかも駅長は現役のイセエビ。プロモーションビデオもある。
山や橋がないのにトンネルをくぐる場面もちらりと映し出されている。

「それいけ!伊勢えび駅長あさちゃんてっちゃん」
http://www.youtube.com/watch?v=uIXFgM7yN5g
↑ 石焼いも子さんの才能が爆発


路線ですれ違いの苦労話も含めて運転手さんと談笑した。
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心が折れないなら路はある。
海崖と小さな3つの集落を抜けて由岐から帰路に就いた。
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伊座利港。後方に伊座利キャニオンが見える。
河口に展開する渓谷地形から海崖への遷移、
それに漁港という人工物、
これらを集落にかかる橋からこれらを遠望する妙。
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北へ向けては蒲生田岬まで無人の海岸線。
南を見れば、集落のある入江は見えないので
海崖の連続する室戸阿南海岸国定公園の白眉。
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キャッチフレーズ 「なにもないけど、なにかある!」
伊座利
http://www.izarijin.jp/

伊座利校
http://www.izarikou.minamicho.ed.jp/

イザリCafe
http://izari.sblo.jp/

小さな漁村の奇跡の復活劇〜徳島県・伊座利地区
http://kasakoblog.exblog.jp/9913849/

※ 美波町ではわかりにくいので旧町名の由岐町で表記。
※ アラメは由岐が全国に誇れる海藻(地域資源)。水に戻すだけでサラダ感覚で食べられる。
※ 阿南市蒲生田岬から室戸岬にかけては室戸阿南海岸国定公園であり、
  平成26年6月に50周年を迎える。
→ 室戸阿南海岸 国定公園指定50周年
http://shikokunomigishita.jp/docs/2013112800022/



posted by 平井 吉信 at 00:00| Comment(0) | まちめぐり
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