2014年05月18日

母川(ははがわ)のツクシイバラ 図鑑をめくる花の小径


ツクシイバラは南方系の野生のバラで
ひとつの株から白、赤入り交じった花が咲くのが特徴。
日本で唯一の群生地とされる球磨川流域では
花を愛でる人々が集まる一大観光資源になっている。
その影には地区の人々の活動があってのもの。
https://ja-jp.facebook.com/nishiki.tukushiibara

それに次ぐ群落が母川で見つかったとの報道があった。
http://www.topics.or.jp/localNews/news/2013/06/2013_13703937059879.html

昨年は6月上旬に探しに行ったが見つけられなかった。
そこで、今回は5月中旬に現地を訪れてみることにした。

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母川は海部川下流に注ぎ込む支流で
ほとんどは湧き水を集めて流れる。
河畔林はあっても河原はない。
浅い流れにオオウナギやナマズが生息する。
その風景は南フランスの農村風景のよう。
6月になればホタル見物でも賑わう。

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普段の母川はまったく静かだ。
河畔沿いの道を行き交う地元の人たち以外は誰にも会うことはない。
(子どもたちはすれ違うたびに見知らぬ旅人にあいさつをしてくれる。南四国ではそのような地区が少なくない)

家を出たのが12時過ぎ。
それでも14時前に現地に着いた。
はやる心でさっそくツクシイバラを探しに散策する。

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どこかなつかしい小径をたどれば河原に近づいていく。
麦わら帽子、半ズボン、虫取り編みに入道雲

列車に揺られ、ひとり旅に出た。
ひなびた駅の陽だまりで降りた。
駅前の雑貨屋で炭酸飲料を買いこむと、
高原行きのバスに乗った。

見渡すかぎりの田んぼ─。
入道雲の下に南アルプスの山々が横たわり、
裾野がかげろうで揺れていた。
こんもりと茂る鎮守の森をいくつか過ぎると、でこぼこ道に変わった。
(どこまで行くのだろう)

バスはほどなく終点に着いた。
朽ちかけたベンチに腰を降ろすと、
バスは砂ぼこりを舞い上げて立ち去った。
バスが見えなくなるまで目で追った。
黄色くかすむ道、ミンミンゼミの声が響いていた。

しばらくは砂利道を歩いた。
少しずつ上がっているようだった。
そして、やわらかそうな草むらを選んで寝ころんだ。
(この空の高さはいつか見たことがある)

生まれた場所を遠く離れ、
住み慣れた街を後にして名もない高原にいる自分。
(どこかで見たような──)

風に吹かれていると、
さみしさとさわやかさが混じり合って、
なつかしいと思う気持ちがした。
傍らのすすきや石ころさえ、
語りかけているような気がした。

何の不足もない人生、けれど何か物足りかった。
彼女は恵まれていた。そして、わずかに退屈もしていた。

だからといって、波瀾万丈の人生を求める気持ちはなかった。
欲しいものは何でも手に入る、
やりたいと思うことがやれる。
人から見れば、うらやましがられるかもしれないが、
このままではひからびてしまうような気がしていた。

遠くから若い男が彼女の座っている場所へ近づいてくるのが見えた。
優里の思索をさえぎる声がした。
優里は麦わら帽子越しの笑顔であいさつを交わした。

旅は、彼女の満たされない気持ちを癒してはくれなかったが、
彼女の胸にはあの高い空が微笑みかけてくれているような気がした。

「空と海」より
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小説のような小径が母川にはある。
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行く手には見たこともない花が次々と現れる。

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これも見応えがある。紅から白、黄色まで遷移する色調。地球上に現れた奇跡か。
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本流から切り放された河跡湖はビオトープ

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母川、晴れ。ゆったりとせせらぐ
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(ここまでがX-E2。ここからがD7000。今回はクローズアップが多かったので一眼レフが活躍)

驚いたのは赤とんぼ(まだそれほど朱くない)

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写真を撮るぼくのまわりにも群がっている
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60oレンズで少しずつ近寄っていくが逃げない。距離は約20センチ。
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原版では複眼の一つひとつがくっきりと捉えられていて精密機械のよう

これは別のトンボだが、まるでひざまづいた妖精のよう
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これも見慣れない植物。
手元のヤマケイ「野に咲く花」では見つからなかった。
園芸種とは思えない。
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群生していたこの植物もわからない。
ウリかナスビの仲間のようだけど可憐。
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名前などわからなくていい。ただ、心を動かされる
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この白い花も新種だ。
花の咲く時期からするとタニギキョウか。いや、違うな。
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これはアカバナと見たが、どうだろう。
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こんな具合に小径をたどると未知との遭遇。
ときの経つのを忘れてしまう。
いま、この瞬間はいまだけ。
たとえ、あなたに悩み事があったとしても。

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背中の紋様がかぶいているてんとう虫
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母川にオオウナギが生息するのは最大の淵「せりわり岩」の辺り。
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この淵の割れ目に棲むという
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木々にも実り
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これも珍しい。
紅から黄色、白まで無限の階調を散りばめて空間にまき散らした「花火」
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イバラが多いが、ツクシイバラではない。
けれど、どうだろう。川面の上になびく風情は
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けれど、その普通のイバラの清楚なたたずまいに沈黙
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2時間をかけて母川の下流一帯を歩いた。

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ツクシイバラの花の時期は終わっていた。
(もしかしたら4月末ぐらいかもしれない)。

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初夏の水音をたたえる母川と河畔林、
次々とページをめくる山野草と木々の図鑑は
癒しの母川ならでは。
(その価値に気付いていないのは地元なのだけれど)

これだけの観光資源なのに
現地は人の手が入っていないので好感が持てる。
(長袖、虫除けスプレーなどのダニ対策をしておきたい)
でも、ツクシイバラはその生息環境からして盗掘の怖れは少ないので
保護の面からも場所を表示して啓発を行う取り組みもあるかも。

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そう、昼を食べるのを忘れていた。
ここからすぐにあるChannel R55へと。

手延べのつけ麺では全国で元祖のお店
人と身体にやさしい食事、気取らない居心地の良さ、
そして手間をかけてつくるほんもののおいしさを
さりげなく提供されている。
きょうはつけ麺にしよう。

静かで深い入り江、那佐湾が一望できる
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緑の階調が凪の海にたゆたう時間、家路を急ぐ人たちの心も海に映る
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かんすいを使った手延べつけ麺が独創的
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地元特産の阿波尾鶏の新メニューは特に完成度が高い。
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これは、まぜそば
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東京から移住された日比さんご夫妻の思いが込められた料理。
コーヒーやパンケーキも楽しめる。
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五感の幸福を充電し、いい一日だったと振り返りつつ
高校の頃から自転車で通った国道55号線を北へ戻る。


追記

徳島は全国最低の観光宿泊数らしい。
高速道路も全国でもっとも遅かった。
けれど、海山川の豊かさから来る食材の宝庫であり
県庁や市役所の近くのまちなかに住んでいても
出羽島や母川、海部川に1時間少々で行ける。

このブログをご覧になって共感される人は
終の棲家として四国東南部は良い選択肢と思う。
生まれてこの方、徳島に住んでいるぼくが
飽きることなく県内を毎週訪れているように。

上勝や神山が有名だが、
その気になって探せば他の地区でも良い選択肢は多い。
県内の自治体で受け容れるしくみや連絡先があれば
投稿していただいて良いかも。


posted by 平井 吉信 at 18:37| Comment(0) | 山、川、海、山野草
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