徳島市と小松島市の間の海岸には
大神子(おおみこ)、小神子(こみこ)と呼ばれる渚がある。
小神子は知られざる保養地で
一部上場企業や個人の別荘などが点在する小さなリゾートである。
小神子へは小松島港を見下ろしながら山を越えていく。
大神子は、広大なテニスコート、病院などがあり
夏場はバーベキューなどで賑わう。
こちらは徳島市の論田町から入っていく。
大神子と小神子の間には
長い海岸線(奥小神子)があることが地図からわかるが、
崖にはばまれて渚づだいに行くことはできない。
そこで日の峰山の裏を降りてたどり着けないかと
ここ数年ルートを開拓している。
10数年前には、小神子の集落の裏から海岸線に並行の
トラバース道があることがわかった。
しかし滅多に人が通らないせいか草が生い茂り、
夏場はマムシや蜘蛛の巣、ハチなどに阻まれて進軍がままならない。
そこで冬に何度か挑戦するうちに
国土地理院の25000図に荒れ地の記号がある地点に辿り着いた。
そこは幾筋の沢が流れ込み、
冬でもからみついた枯れ草が行く手を阻む難所で
海は見えるものの渚に近づけない。
荒れ地と渚の位置関係からは
荒れ地の末端は崖になっている様子が伺えた。
うっかり足元を踏み抜いて崖から転落する怖れもあると思った。
だから、鉈やロープのような装備が必要と判断して
ここ十数年近づいていなかった。
ところが数年前、散歩がてら日の峰山を散策すると
稜線から海へ下る遊歩道ができていることを発見した。
下っていくうちに
かつてたどったトラバース道とも交差していることがわかった。
遊歩道は下がりきると(海までまだ遠い)
再び上へと反転して稜線に戻る。
その場所で横切る沢を下ると
例の荒れ地へ続いていることがわかった。
海岸性照葉樹の林を抜けて荒れ地へと出た。
相変わらず行く手を阻む植物に足を取られ
荒れ地の入口まで引き返した。
すると、この荒れ地を南に巻くことができるのではないかと気付いた。
崖と荒れ地の間の林の斜面をたどってみよう。
そして、ついに渚へと出た。
見慣れない海岸性の植生も趣を添えている。
季節はずれに黄色い花を見つけた。
こんな時期に花を咲かせるなんて。
(流れ着いた園芸種の種から発芽したのかもしれない)
なんだか原始の海辺のような感じがした。
奥小神子の渚から振り返ると降りてきた稜線と
そこに刻まれた2つの谷筋が見えた。
パノラマモードで360度の写真を撮って
稜線を目指して登り始めた。
まちの近くでこんな冒険ができるなんて…。
幼い頃からこんな冒険が大好きなのだ。
(ブログに書かないほうが良かったのかもと思いつつ、冒険を楽しんでもらえたらとも)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
標高100メートル少々であっても森は森

稜線から遊歩道を下っていく。海まではまだ遠い。

赤と黒に惹かれた

沢筋に出会う。ここから海岸性の照葉樹の森が広がる。



沢筋をたどる。水は荒れ地へと流れ込んでしみていく
水が潜り込むと森から荒れ地へと景色が変わる


海が見えたけど背の高さの低木と枯れ草に阻まれてこれ以上は進めない。

振り返ると日の峰の稜線がある。

荒れ地の南を迂回するルート

そして奥小神子の渚へ


季節はずれの黄色い花


稜線へ戻ると南に小松島の市街地が見える

市街地へ降りる頃には日の入りとなった。


追記
小松島港から小神子へは根井鼻と呼ばれる半島状の地形がある。
この辺りを地元では「通り魔」と呼んでいると父から聞いたことがある。
通り魔へは小神子の山上にある別荘の周辺から降りる散策路がある。
主に磯釣り師が通っている。
通り魔には、小島に挟まれた地形があり、
危ないので子どもが近づかないように名付けたのが由来ではと推察。
この沖にはなにがしかの人間の居住の痕跡が沈んでいるといわれ、
かつて市内在住の人が潜水調査を行っていたと記憶している。
(何かを発見されたと新聞に掲載された記憶がある)
大神子の沖合には「お亀千軒」という伝説があり、
おそらくは数百年前(少なくとも室町時代以前)の南海大地震で
海に沈んだ地形が通り魔の沖合にもあったのではないだろうか。
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日の峰周辺は小さい頃からの探検エリアでしたから。
稜線から降りるアプローチは
低山とはいえ相当困難で
かつて発見した小神子からの
トラバース道もいまは荒れてしまい、
ところどころ崩壊しているよう。
遊歩道を見たときは驚きました。
誰かとすれ違ったこともないほど
知られていない散策路です。
そこからさらに谷を下ると
荒れ地に出られて
「秘密の隠れ家」と
子どもが名付けそうな場所を
いかに抜けるかがカギでした。
それは、荒れ地を回避すれば
良かったのです。
まちの近くにある
誰も行かない空白地帯という
不思議さがいいですね。
私が小さい頃は、春はわらびやイタドリを採ったり、夏は、サザエやアワビを取って、遊んだものです。
また、浜の呼び名についてもご教示をいただきました。
存在そのものがほとんど知られていないため、
誰に聞いても答がわからず、
国土地理院の地形図にも記載がないものでした。
もっとも日峰山も通称で柴山が名称だとか。
小神子から水平移動の小径をたどった際に
民家の跡や石垣を見たような記憶があります。
あれから道はさらに荒れてしまったようです。
地名があるということからもうかがえるのは
集落とは言えないまでも暮らしがあったのでしょう。
その地の利を活かし、
かつてはどのような人がどんな暮らしをされていたのかに
興味が尽きないものです。
わくわくしながら拝見させていただきました。
ありがとうございました。
大神子、子神子は徳島市内の秘境のひとつですね。
昔は海水浴場だったと思います。
危ないから行くなと止められてましたが。
金磯神社の洞窟は、今はどうなってるんだろう。
お邪魔しました。
大神子小神子は、お城下に近い保養の地であり
お亀礒の伝説や通り魔の海域など
いまなおかき立てるものがありますね。
金磯の弁財天と横須松原も郷愁を感じます。
阪神航路があり海水浴客で賑わった往時に
時空旅行してみたい気がします。