香川県の風景は飽きることがない。
高知や徳島のような大河、愛媛のような高峰はなくても
低い山が遠く近く重なりながら、
霞みに浮かぶさまは息を飲むほどだ。
高徳線の特急「うずしお」はよく利用するが、
讃岐津田駅と造田駅間の里山の風景は心惹かれる。
細い道が竹藪のなかをくねるように上がっていくところがあって
ごの先はどんなふうになっているのたろう、見たいと思う。
(初めてこの路線に乗る人はなつかしさを覚えるだろう)
都市近郊の田園地帯に終の棲家を求めて住むのなら、
志度はいいだろうなと思う。
(「人生の楽園」に出てきそうな風景)。
そして、なんといっても瀬戸内海に浮かぶ島々。
小豆島が好きで何度か通ったが、
それとて瀬戸内の大きな入江に浮かぶ島嶼群の
一部である。
ぼくにとっては、さぬきうどんがなくても
香川が十分に魅力的。
だから
「さぬきうどん それだけじゃない 香川県」
というコピーは、
かえってさぬきうどん以外に魅力がないと
発信しているようにも見えたのだ。
香川に行くのに不謹慎なようだが、
徳島でうどんを食べた。
時刻は昼過ぎ。
現地に到着する頃には
どの店もうどんは売り切れているというのが理由のひとつ。
ぼくは、かけうどんが好きなので、
それなら徳島の名店がいいと思っている。
久しぶりにうどんを食べて
(外食でうどんを食べるのは年に数回)
香川へ訪れる気持ちを高めておこうと。
(これまでにも讃岐の名店は何度か行っているので)
鳴門を超えて国道11号線は寂しい海沿いを走る。
県境を越えると引田のまち。
白鳥、三本松から津田に入って
内陸の東かがわへ入る。
先月だったか、
「人生の楽園」で放映されたジェラート店は
大盛況だった。
オーナー夫妻も
あまりの集客に戸惑っていらっしゃるのではないか。

そのまま一般道を西へクルマを走らせ、
高松中央I.Cを過ぎて
いちごの生産者が栽培ハウスの隣で
いちご関連のスイーツを売る店にやってきた。


さっきジェラートを食べたので
かき氷にした。

それが絶品だった。
かき氷は京都や東京などでは千円を超えるのが珍しくないが
凍らせたいちごの素材感をたっぷりと味わえて
この価格(400円)はいい。
(屋台で売られている合成シロップと価格帯が変わらないのに)
それは、自家製いちごのコンポートをたっぷりとかけたもの。
しかも、量も手頃でいい。
自社のいちごを知ってもらうアンテナ店としての役割もあるのだろう。
(季節限定とあとで知った)
生産している現場の隣に
質素な建物やテントで食べさせるというのはいい。
初期投資がかさまないことで、
余分な仕掛けやデザインが介在せず
伝えたいこと
例えば、ていねいに育てたいちごそのもののおいしさが
直截的に伝わるような気がする。
スカイファームもそろそろ閉店時刻が近づいた。
今朝の徳島は、小雨がちで後に曇りとなった。
香川でも曇りがちの天気ではあるが、回復に向かっているようだ。
それなら、五色台へ行こう。
五色台は西の坂出から海沿いに時計回りにアプローチした。
この海沿いの道は
瀬戸内に接する香川〜愛媛特有の風景で
おだやかな海、迫る山際、狭い道が
夏の日の郷愁をかき立ててやまない。
五色台からは瀬戸大橋が見える。
太陽は少しずつ西に傾いてきた。
遮っていた厚い雲が破れて
光が舞い降りてきた。

それは、荘厳な立方体のようで
最後の審判の舞台を見せているようだった。
背後に瀬戸大橋が影絵となる。

おそらく雲の背後では
華麗な夕焼けが繰り広げられているのだろうと。
(空に映る情報がそう教えてくれる)
そう思っていると、
それまで黒子の活躍を見せていた太陽が
舞台へ現れた。


太陽が沈もうとすると、
雲は背景に隠れて
太陽が6000度の表面温度と100万度のコロナをまとって
水平線に居座った。



それから20分、
西の空と海はあかね色に染まり
赤と青の入り交じる実験をしながら
少しずつ照度を落としていく。






20代の頃、滞在していた南太平洋のランギロア環礁で
360度紅に染まりながら暮れた夕景が眼に焼き付いている。
「魅惑の宵」をうたいながら。
追記
徳島に戻る頃、空腹感を覚えた。
瀬戸内海の大きな水たまりをみたあとで、
トンカツが食べたくなった。
徳島医大前の「潦」(にわたづみ)へと。
潦とは、
雨が降ってできた水たまり、その水が流れているさまを表す。
日本人はこんなに美しい言葉を残している。
それを店名に選んだ人の感性もいい。
夫婦お二人のお人柄がにじみ出ている。
無口で温厚だけれど、手を抜くことなく
黙々と料理をつくるご主人、
いつもいつも気配りをしながら
お客様に料理や雰囲気を楽しんでいただこうとする奥様。
このお二人の奏でるハーモニーに、
心の三つ星を差し上げたい。
それでも、長年の厨房作業は肉体をいじめる。
今後10年、店を続けるために
ご夫婦が考え出したことは、昼の営業を中止し、
メニューを減らし、価格を少し上げる代わりに
変わることなく最高のおもてなしと
料理をお出しするというもの。
食べる人の楽しみのために説明は控えたいが、
上ヒレカツと上ロースの2種類のトンカツ定食(1500円)。
それを手づくりの自家製ソース(2種類)でいただく。
2人連れで行くなら、それぞれが別の肉、別のソースを注文すると
4種類の組み合わせが楽しめることになる。
ぼくはいま真剣に取り組んでいることがある。
まちに残る小さな店、
そこに集まる人々、
店主たちの人生を刻んだ店を
少しでも長くやっていただけるような取り組みを。
(まもなくご紹介できると思う)

楽天でまったく買い物をしなくなって数年が経つ。
思いを大切にする店は、楽天には決して出店しないから。
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