2013年09月05日

空間、食べ物、緑―。風土がつくる和菓子


日常の仕事の合間に、ふと訪れる中途半端な時間。
次の行動への準備を行うでもなく、
ただ、人生が通り過ぎるのを傍観するがごとく。

田園を走っていて、通り過ぎそうな道ばたに
気を引く空間を見つけた。

クルマを停めて目を見開いたのは
店先の広大な面積を占める草むら。
小雨のなか傘もささず、眺めている。
この感性に惹かれてしまった。

花鳥風月などと気取らなくても
この庭には哲学がある。
「雑草が茂っているだけではないか」
(そう見える人は自然とは無縁)
植物がありのまま繁っているように見えて
実は、人の手が導いている。
モノカルチャー(単一の植物が整然と植えられている)ではない
生態系の多様性を庭に落とし込もうとしたものだろう。
(秋の七草、萩も控えめに咲いていた。一つひとつ山野草を見つける歓びがある)
何もしていないように見える「無為の為」。
この庭がそこまで行っているかどうかは別にして
その精神が和菓子に通じるとの箴言を受け止めた。

そしてカフェへ。
(この店が洋菓子店なら立ち寄らなかった)
メニューを眺めていてなかなか決まらない。
振り返れば、昼を駆け込んで
午後のワークショップを終えた夕刻。
ご飯を食べたい気持ちが胃袋の過半数となって、
赤飯点心(630円)という文字を指で押さえていた。

この赤飯、塩加減が絶妙で
小豆の旨味をほくほくと噛みしめる。
蒲鉾、吸い物も付いて
和食の小宇宙を表現しているよう。
いや、かたちではなく、これは旨い。
(滅多に来られないけれど、明日も食べてみたいと思った)
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後の席は3人様、関東方面の抑揚で話をされている。
注文されたのは巨大なかき氷。
思わず歓声が上がっている。
写真を撮影するわけにはいかないけれど、
ちらりと見て納得した。

女性が菓子を召し上がるのなら、
こちらのメニュー(風菓遍路、840円)はいかが。

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ぜんざい、ロールケーキ、わらび餅、ゼリー、塩昆布、緑茶。
ぜんざいはこの組み合わせのなかで、
塩味もあって引き締める。
赤飯の小豆の滋味に通じる幸福感。
それぞれの菓子の食感、風味を楽しめる。

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多様な生態系を模した表の庭、
カフェのガラス越しに眺める裏庭、
そして菓子店舗の生け花。
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和菓子が風土から生まれることを実感させてくれる。
良い食事は良い風土から。


これまでも
暮らしと密着する自然を保全する活動を
少なからず行ってきたつもり。
20世紀、急速に失われた日本の風土、
特に白砂青松や山河の存在。
それがなくなると、人々の心からも消えてしまう。
そんな世界で和菓子が生き残っていけるのか。

人災で取り返しのつかない結果となった福島。
欠如した想像力と誰も責任を取らない体制。
オリンピックより前に、
もっとやるべきことがあるのではないか。

その日その刹那を懸命に生きている。
それで十分に満足しているけれど、
自分だけの幸福を素直に喜べない。

(和菓子処 福屋 盛壽の郷にて)
タグ:カフェ 菓子
posted by 平井 吉信 at 00:46| Comment(0) | 食事 食材 食品 おいしさ
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