ブログに載せたあのユリを見せてください。
そう言われても、すでに終わっているだろう。
しかし、その場合は轟の滝に行ってみる、という代替案がある。
吉野橋を渡ると、水が切れた海部川が見えてきた。
夏にこれだけ低い水位は見たことがない。
これでは水温が高すぎて友釣りにならないだろう。
鮎も上流へ逃げているのではないか。
赤橋周辺では道路工事中。
道路が拡張されると川の姿も変わっていく。
赤橋の上流には海部川中流域で最大の淵がある。
1995年の樫の瀬の改修もがっかりした。
あそこは、竹林で遮られた場所に、絶妙の瀬と淵と湧き水があり、
テントを張る場所は砂地で水面から高い。
まさに、真夏の夜を過ごす世界最高の場所、だった。
魚が水紋を描き、
星がひとつふたつ輝きを増すと、
やがて夜のとばりが降りてくる。
焚き火を眺める川の時間が訪れる。
夜はカジカの合唱を聴きながらテナガエビを採る。
眠くなれば、河原の椅子でそのままうとうと。
ギター、三線、笛を演奏する仲間もいる。
1995年までは。
昼食は滝の近くの木陰で
テーブルと椅子を並べて拡げていただこう。
自宅で下ごしらえをした
畑で採れたての野菜で昼食をつくる。
短時間塩ゆでしたオクラ、
オリーブオイルで炒めたあと、
しそドレッシングをかけたカボチャ、
完熟の大きなトマトを縦切りしたもの、
それにデミグラスソースのハンバーグを
ご飯とともにワンプレートにしたもの。
これに、龍馬1865があればなおよかったが。

暑い一日なので滝へ行こう。
涼しさという点では、轟の滝に優る場所はない。
滝の飛沫の蒸散熱で谷間はひんやりとしており、
何時間でもいられそうな気がする。
でも、水量が少ないので迫力はないだろう。
そう思ってクルマを停めて5分程歩いた。
すでにたくさんの人たちがたたずんでいる。
滝は画面右奥なのでまだ見えない(そう慌てずに)。


途中の岩場で小さな赤紫の花が咲いているのに気付いた。
イワタバコは、水が滴る岩場に群生する。

あちこちの岩陰から
深紅の一つ目がここを訪れる人を見つめている。








水量が少ないはずの轟の滝であったが、
苔むした岩、
岩の割れ目ごしに見える滝のたたずまいは
思わず発してしまう歓声か
声にならない沈黙を与える。





この感覚、なぜなんだろう。
他の滝を見てもこの感覚は生まれてこない。
自問自答するうち、自然に辿り着いた。
そう、見る人が天の岩戸に閉じ込められた
天照大神なのである。
岩の割れ目から白い水が龍のごとく
躍動している。
岩の向こうに何があるのだろう、見たい。
疼く好奇心と、このままで充分という満足感が
すべてを忘れさせる小さな水しぶきに包まれて
心の眼がひらかされる。
轟の滝、ここはそんな空間なのだ。
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