2013年08月11日

真夏の「スコール」(松田聖子) Blu-spec2 CDで


連日40度を超える地域がどこかで観測されるという猛暑。
きょうは日曜日だけれど仕事をしている。
その事務所の気温は32.6度、湿度77%。
でも、快適。
食欲はまったく落ちず、仕事もはかどるのは、
時間をかけて慣らしたから。
(いきなり真似をしても難しいですよ)

地球温暖化が予想されていた頃、
海、山、川が好きな人間にとって
時間をかけて身体を高温に慣らしていこうと
考えたのが約十年前。
毎年エアコンの稼働日数を少しずつ減らしていき、
心理的にも涼しく過ごせる工夫を加味し、
ついに昨年にエアコンを取り外すことに。
(8000メートルの高度に一月かけて慣らすのと同じ)

水分を意識して取らないのもコツ。
世の中は水分を取れの大合唱だが、
必要以上に取りすぎていないだろうか?
(逆に高齢者は咽の渇きを意識しにくい。ならば、発汗量などから必要な水分と電解質の量を算出して表示、警告するような携帯型の測定器を誰か開発しないだろうか)

暑い夏を涼しく過ごす工夫のひとつは音楽を聴くこと。
「あまちゃん」ブームで、かつてのアイドルに光が当たっているけれど、
ユニットでうたうことが多いあの手のモノにはなじめない。
(仕掛けの匂いが濃厚で好きではない)
「あまちゃん」はその舞台裏を皮肉っているようにも見えるが。

そんなおり、ソニーから、
Blu-spec CD2」という技術を応用した
音楽CDのシリーズが2013年7月に発売された。
(通常のCDラジカセやCDプレーヤーで再生できる)
買ったのは、松田聖子の「SQUALL」(彼女のデビューアルバム)。

この年の冬は大雪に見舞われるのだが、
夏はからりと晴れ渡って空気が澄んでいた。
そんな1980年夏の発売。

実はレコードも持っているけれど、
ターンテーブルに載せる時間はなかなか取れない。
(オンキヨーのデジタルアンプのフォノEQも実用的ではないし)
そこで、CDを買ってみた。

さあ、かけてみよう。
少しずつ音量を上げていく。
再生装置は、デスクトップに接続したTIMEDOMAIN light
(仕事オーディオ)。
そして、オンキヨーのデジタルアンプA-1VLに接続した
無垢マホガニーの箱でソフトドームが奏でるビクターのSX-V1(部屋オーディオ)。
(ハイエンドオーディオ装置の持つ「嫌な重苦しさ」がないのが良いところ)

一曲目の「南太平洋サンバの香り」、
言葉尻を捉えるつもりはないけれど
「南太平洋 ポリネシアの香り」とか「フラの香り」、
もしくは、「大西洋 サンバの香り」か。
でも、これでいい。
作詞家は百も承知で「南太平洋」の持つ南洋の果てしないロマンと
「サンバ」の持つ非日常のざわめきを感じながら
語感の良さも加味して直感的に付けたのだろう。

波間を縫ってサンバのぞめきがフェードインすると、
聖子の声が登場、
リズムと旋律をていねいに出し入れしながら
声に寄り添う。
キーは高めで、
声が裏返る手前のハイトーンを引き出している。

数十年に一人の逸材と見抜いたからこそ、
デビュー曲に「裸足の季節」を使ったのだろう。

歌いこなすのには技術を要する楽曲である。
揺れ動く心を暗示する半音階を多様しつつ、
弾ける若さを表現するため音程の跳躍も随所に散りばめ、
場面展開にはコード進行を変える。
(音程を追いかけるだけで大変=音程のずり上げやオーバーシュートしないよう)
印象的なサビは親しみやすい旋律で
わかりやすい音程と伸ばす音符でハイトーンを際だたせる。
(計算し尽くされた楽曲である)
うまくいけば、
他のアイドルとは楽曲の難易度で差を付け、
(歌いこなすことで耳に残る)
表現力でさらに印象づけるという戦略だったのかも。

そして2枚目のシングル「青い珊瑚礁」で弾けた。
この曲もサビが印象的だけれど、
その後の低い音での独白が要。
等身大の18歳が声色を切り替えて表現する。

いま聞いても「若い」(幼い)という感じがしない。
デビュー当時から大人に憧れる感性(=の色気)を持っていたから。
逆に、いまでも小娘のような雰囲気を漂わせている。
(でも、好きなのは10代から20代半ば=1987年までだが)

ファーストアルバム「SQUALL」は、
ピンクのトーンに包まれたアップのジャケットとともに
店頭で光を放っていたことだろう。
(CDの発売前なので30センチLPレコードの時代)

さて、Blu-spec CD2で再発された
このアルバムの音質についても触れておこう。

音が躊躇なく波形が立ち上がる感じで歪み感極小、
アナログの持つ空間に拡がるプレゼンスとは異なるけれど、
それを補ってあまりある低域の安定感と抜けの良さ。
無理なく音楽のエッセンスを凝縮した感じ。
カッティングレベルを上げて
音圧感を演出するのではないかと危惧したが、
得られた再生音は、いつまでも浸っていたいと思える自然な音。
(隣の部屋で聞いてもわかると思う)
こんなCDを80年代に出して欲しかった、と思った。
(久保田早紀の「サウダーデ」も発売されているではないか)

もう一枚、今回のシリーズではない単発のシングルだけれど、
「小麦色のマーメイド」をご紹介。
これには「マドラスチェックの恋人」がカップリング。
彼女のシングルでは、この曲(両面とも)がもっとも好き。
リゾートのはざまに漂う小麦色の娘という
つくられた世界なのだけど、
3分のミディアムテンポの楽曲が非日常の世界観を描ききる。
「音楽ビジネス」の凄みを感じるが、
当の本人はどこまでも涼しげ。
(「潮騒のメモリー」は、「小麦色のマーメイド」へのオマージュか)。

いつも思うけれど、大ヒット曲のなかには、
「なんでこんな曲が?」というのが少なくない。
逆に、いい曲なのに、セールスは伸びなかったという例は多い。
でも、ひとつ言えることは、
売れることをねらって(しかも当たった)
アーティストはその後が続いていない。
売れなくても伝えたいことを地道に伝えるアーティストは息が長い。
メッセージは継続して発していかなければ信頼されない。
音楽ビジネスもマーケティングの縮図のようである。

もちろん、世阿弥の「風姿花伝」が説くように、
若い頃ならではの輝き、きらめきでしか伝えられないこともあるし、
年齢ならではの輝きを付加して磨いていくアーティストもいる。
(感性が枯れてしまった大御所たちの名前は出さないけれど)

カップリングの「マドラス〜」もいい。
マリーナの桟橋に真っ白のクルーザーという舞台設定だが、
陽気に過ぎ去った夏への心象風景を
女の子の心理で切なくも淡々と綴った夏の名曲。
(「Pineapple」で突き抜けた聖子はすでに新しい世界を築いていた)

それからときが過ぎて、1985年の「ボーイの季節」。
(作詞/作曲:尾崎亜美 編曲:大村雅朗)
松本隆の世界観とは異なるリアルな状況で
切ない夏を描ききる。
シングルとしてはここまでしかフォローできないけれど、
ビジネスを越えた魂を感じてしまう。


ソニーの Blu-spec CD2シリーズでは
かつての名アルバムたちが続々と登場する。
Blu-spec CD2が発売されたからといって、
すでに持っている人は、
改めて買い直す必要はないとは思う。
(このシリーズではまだ1枚しか買っていないが)

真夏のひととき、氷を入れたコーラを飲みながら
やわらかな音楽が弾んでいくのも
良い時間の過ごし方かと。
中域の実在感と弾むようでいて自然な音質に打たれたのである。
(それがBlu-spec CD2の本質ではないかと)










Blu-spec CD2
原盤の材料を従来のガラスから、半導体製造用のシリコンウエハーに変更。カッティングマシン本体もBlu-ray Disc用とし、トラックピッチは約20倍、レーザーの照射位置精度は10倍に向上。また、感光剤も金属酸化物の熱記録方式に改めて記録精度を上げたことにより、ジッター値を1/2に低減したもの。


posted by 平井 吉信 at 15:08| Comment(0) | 音楽
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