山へを行くのは登山というより森の散策に近い。
通常のコースタイムの2倍から3倍かかることも珍しくない。
歩き方は体幹をねじらず一定の小幅で歩く
ナンバ歩きなので翌日に疲れが残ることはほとんどない。
(日常の疲れを癒すために温泉感覚で山へ行っている感覚)
山の楽しみは森を歩くこと。
そしてそこで出逢う山野草や樹木との遭遇。
それが年に数日しかない逢瀬であることも。
今回は那賀奥の樫戸丸に咲くというオオヤマレンゲ。
森の貴婦人と呼ぶ人もいる。

土須峠から日本一長い剣山スーパー林道へ入って
約12km先に登山口がある。
前日に温帯低気圧に変わった台風がもたらした大雨で
林道は随所に土砂崩れが発生。
倒木や尖った石がゴロゴロ。
これがタイヤの横腹を切り裂くことになりかねない。
クルマから降りて、斜面を見ながら手早く石をどけていく。
この界隈の砥石権現、高城山、樫戸丸、天神丸といった山々は
スーパー林道がなければ、アプローチから登山まで数日を要したはず。
まさに、猟師や測量士のみが深山幽谷に分け入って辿り着いた桃源郷。
いまは、スーパー林道から汗もかかずに到着してしまう。
ようやく辿り着いた「風の広場」にはシカがいた。
近づいても逃げることなく悠々と草を食べている。
シカの食害が深刻であることを物語る。

風の広場から、樫戸丸の山頂を望む

さてと、樫戸丸に向けての登山を開始。
1時間半ほどの尾根伝いは口笛を吹きつつ森林浴である。
森は光と風を自在にまとって
変幻自在の紙芝居を魅せる。
だから、道草をしつつ歩を進める。
見かけた植物は、タツナミソウの仲間、


イチゴかバラの仲間か。白い花はオオヤマレンゲのよう。

黄色もある

フタリシズカ

トリカブトの仲間(有毒)、バイケイソウ(有毒)。
シカに食べられない植生や
その間に紛れて目立たない植生だけが残っていることがわかる。

バイケイソウの花を拡大

ところが、シカの届かない樹木の花は真っ盛り。


ハルゼミは、ヨーチエン ヨーチエンと鳴いているように聞こえる

サルスベリの木はなぜ、こんな生き方をするのか?

森の時間を過ごした大木が尾根沿いに連なる





開けた森と尾根の樹幹のトンネル、
バイケイソウの群落を通り抜けて
オオヤマレンゲの生息地へ辿り着いた。
ここは金網が設置されていて、
こちらも安心して見ることができる。

開花がやや早かったせいか、大雨のせいか
花の終わったものが多く、2013年の盛りは2〜3日前ではなかったか。
残った花は本日咲いたものだろう。
それは白い衣をまとってうつむいている。






そして、
曇り空を縫って太陽の光が斜め上から差し込めた。
そのとき、天女が舞い降りてきた。
葉裏の陽光を透かしてみる雪の純白がほのかに萌えているよう。
まっすぐこちらを見つめてくる。
こちらもじっと見上げる。

風もやんだ。シャッターを切ろう。
このときオオヤマレンゲの姿を借りて舞い降りた天女を。

追記
樫戸丸に行ったら
林道沿いにある唯一の施設、ファガスの森高城(たかしろ)で
鹿肉入りカレーを食べてみよう。
(鹿肉を食べることが生態系保全につながる)
土須峠から北へ帰る人は、岳人の森で京都帰りの料理長の食事を、
→ このブログでも紹介
南へ帰る人は、四季美谷温泉の鹿肉料理に舌鼓を打ち、
→ このブログでも紹介
上勝経由で帰る人は、月ケ谷温泉の薬草料理がおすすめ。
→ このブログでも紹介
(徳島市内へ帰る人はどのルートも使える)
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