こんな呪文がある。
海越えて誉められに行け
いわばこれは上の句。
それを受けて応えるのは
「ぶどう饅頭」。

これが自然に口から出るのは50代から上の徳島人。
分からない人は、県外からやって来た人か、
40代半ばぐらいから下の人。
ぶどう饅頭は日之出本店の特製。
「海越えて…」は
地元四国放送でテレビコマーシャルで流れた文言の一節。
封入されている一億円札とともに、
子どもに夢を運んでくれた。

うちの近所にあったハレルヤ本店の金長まんじゅうとともに
徳島を代表する銘菓。
さて、このぶどう饅頭(金長まんじゅうも)、
いっときはほとんど買わなくなっていた。
商品、パッケージとも子どもの頃から変わっていないため
「なんだ、ぶどう饅頭か」と一瞥をくれるだけ。
(パッケージが変わらないのはいいことなんだけれど)
個人的な感想だが、子どもの頃に夢見た
あのぶどう饅頭の風味が変わったような気がして。
(あの頃と比べておいしいモノは増えたから)
ところが、「阿波の逸品」の審査を行うようになって
さまざまな特産品や郷土菓子を口にする機会が増えた。
数え切れない新製品と比べても
この二つの完成度は抜きんでていると思う。

いや、確かに一時より味も良くなっている。
ぶどう饅頭は鼻腔に抜ける香りを楽しみつつ
咽を通るときの幸福感。
お茶で流してもう一本。

この頃は、季節限定や地区限定などのぶどう饅頭も出ているが、
断然おいしいのはオリジナル(緑の箱)だ。
滋味あふれるという言いたい風味は
初代(創業者)が夢を込めた菓子だったからだろう。
徳島のみやげには何がいい?
ごく普通の人であるならば、
ぶどう饅頭か金長まんじゅうを買っておけば間違いない。
ぼくはそう思う。
いつか、ぶどう饅頭と金長まんじゅうを
同じ皿に載せて眺めてみたいものだ。
追記
四国のおいしい饅頭といえば、
南予卯之町に本店を置く山田屋のまんじゅう。
故吉田首相をはじめ、歴代首相も眼を細めたという。




これと「りぐり山茶」でいただくひとときは
何物にも代えがたい四国の贅沢。
しいてこの3つの菓子を一言で表すなら
ぷーんと鼻をくすぐる甘さと完成度の高さ 「金長まんじゅう」
香りを愛でつつ何度でも食べたくなる 「ぶどう饅頭」
おいしすぎて、一度食べるとしばらくは間隔を開けたい 「山田屋まんじゅう」
(県内では、吉野川SA上り(徳島へ向かう方面)で購入できる)
→ 四国内の販売先一覧(ただしそごう徳島店にはないようだ)
松山の「坊ちゃん団子」、
高知の「かんざし」「土佐日記」
香川の「かまど」「灸まん」。
庶民の愛する四国の和菓子の共通点は
「子どもの憧れ、おとなの和み」だ。
さらに追記。
徳島の郷土菓子では、なると金時を取り上げる場面が少なくない。
でも、成功していると思える菓子はそう多くない。
金時のほくほく感はそのまま食べてみたい。
おいしい素材だからとそのまま菓子に使ったら冗長な感じ、
くどい感じが残る。
前述の山田屋まんじゅうは、素材の旨味を吟味したうえで
素材のエッセンスを凝縮した感じで
ぎゅっと旨味を抱きしめるような「おいしさ」をつくりあげている。
しかし、そのことが
普段着のおやつとしてリピートしにくくなっている。
(価格の問題ではない)
鳴門金時の菓子は
素材とは別の方向をめざさなければならない。
言い換えれば、
金時そのものがおいしいので
菓子としては味覚を誘引する「甘み」が必要。
それによって、味わう脳を「甘み」から「旨味」に向けさせる。
けれど、その橋渡しがうまく行かないと
冗長感につながる。
さらに製造コストと賞味期限という
流通上の課題がある。
(いくらおいしくても賞味期限が短い、安くないとなれば商品力は弱い)
そんな理由で、
なると金時の菓子は菓子職人にとって挑戦テーマとなり得るのだ。
さて、なると金時を使ったパイを神戸の菓子メーカーが製造している。
サイコロ状の金時に糖分を補っているが、
製法によっては量産が可能でコストダウンが可能とみる。
そして土台にパイ生地を置いて
食感の変化を演出して風味の冗長性から逃れている。
好みからすれば、甘みがやや重いが
パイ生地がシャッキとした歯ごたえで
意識を甘みからうまくそらせる。
おそらくは
賞味期限の問題から糖度をあまり下げられないのだろうし
1個100円前半という価格帯(ユーザー層)からすれば、
この甘みとヴォリュームがわかりやすさになっているのだろう。
鳴門金時の使いこなしとともに
普段着のおやつとしてのあり方として参考となる例だ。
神戸 アビルテ 鳴門金時パイ

さらにさらに追記。
「モンドセレクション」金賞などの
表示がある食品を見かけることがあるが、
風味や品質の良さと関係があるのかどうかは不明。
(個人的にはその表示はメーカーの経営姿勢を表していると判断して避けている)
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45歳ですが
『躍進また躍進海越えて誉められに行けぶどう饅頭』
口をついて出ます。
身近な人で試すと
40代では半々でした。
キャッチコピー、キャッチフレーズを
調べてみると
「ごほんといえば…」
などと商品名をいわせる
上の句もあれば
ドラマ主題歌で
「姓はオロナイン、 名は軟膏」
などの歌詞もありました。
ジブリアニメのコピーでは
「このへんないきものは まだ日本にいるのです。たぶん。」
わかりやすいですね。