若い頃、インドを旅していたこともあった。
そんな彼がケータイを使う姿など想像もできなかった。
数年前、懐から取り出したメカを見て驚いたのだ。
いまでは、写真付を送信してくれるようになった。
彼とは、石井孝明。藍染め職人である。
よく考えてみると、
スマートフォンはともかく、
ケータイすらいまだに使っていないのが平井吉信さんである。
(その代わりノートパソコンをオンオフ問わず持ち歩いているが)
まあ、それはともかくとして。
送られてきたのはこの写真。

なんだろう。
わからない。
けれど、時間とともに染みてきた。
じわりじんわり。
表現できなくて。
(…沈黙)
陳腐だけれど、言葉に綴ってみる。
雲間からこぼれる陽射し。
それは太古から変わることはない。
太陽はいつも空と海に色を与える。
その呪縛を取り除いて
(絵画という範疇を飛び越えて)
時代を照らす光を描いたのだと。
(やはり時代へのメッセージを持っているのだ)
たゆたう波。
そこに遊ぶ光は太古から不変の遠い時空間を映す。
抽象的であって写実的、写実的であって抽象的。
和でもなければ洋でもない。
岡本太郎が越えようと試みた表現。
仕事場のトタンに無造作に掲げられて
ケータイで撮影した。
それだけ。
どこに置かれようと関係ない。
そこにあるではないか。
そんな石井孝明の心が透けて見える。
これだけの表現を
芸術家ではないひとりの職人として成し遂げるには
どれだけ自然への洞察とそれを表そうとする意思の力、
ひらたくいえば内面の葛藤があったことだろう。
オブジェとか作品というよりは
剥き出しの精神であって
しかも葛藤の痕跡をとどめていない。
良い染め物にしよう、見る人を驚かせてやろう、
そんな作為がなく
それなのに、そうなってしまった―。
彼の照れとおだやかな笑みが見えるようではないか。
やったな。
今度、ビールを飲もう。
追記
ケータイで撮影されたこの画像はオリジナルを再現しているかどうか。
実物に当たってみたい。
→ 石井君のエピソード
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