からだが小さくなったと仮定しよう。
その身体で野山を散策してみる。
舞台はまたも那賀川の河原。
秋にはナカガワノギクが咲き乱れていたところ。
今回は春の妖精に遭いにやってきた。
そのエフェメラルは、オキナグサという。
高校野球の深紅の優勝旗のような色の花びらを持つ。
鷲敷ラインはカヌーの練習のメッカ。

まずは、スミレの仲間が出迎えてくれる。

付近は、那賀川本流の豪快な流れのすぐそばに
周辺の山々から湧き出した沢が本流へと注ぐ。
その途中で、岩場と砂をくぐり抜けながら
独特の生態系をつくる。

沢はところどころで池となり、
孵化したオタマジャクシが生息する。
川の流れの実験もできる。

生態系の豊かな場所は多様な生命のゆりかご。
生物のひとりとして謙虚になれるし
生きている実感をもらう場所でもある。

さて、ドラマは始まる。
悪い薬を飲んで
身長は10センチに縮んでしまった。
幸い、持っていたカメラも同じ縮尺で小さくなったので
引き続いて写真は撮れる。
しばらく付近を散策するも、スミレばかり。

おや、人間の歩く遊歩道の脇で
オキナグサを発見した。
普段の背の高さだと見過ごしてしまいそうである。

群生している一角に出た。

双子が同じ仕草をしているから
足を止めて眺める。

これから花を咲かせるつぼみだろう。

白い毛で覆われている。
春一番乗りをめざしているからだろうか。
けれど、他の春の草が芽吹く頃には
オキナグサのようなエフェメラルはいなくなってしまう。
時間差で春を生きるのも生存戦略なのだろう。

何だか威嚇されているような。

見上げると、大きな目が怖い。目玉おやじのようだ。

ほんとうは心やさしい春の妖精なのだ。

空がまぶしいのか、
深紅の花びらはいつもうつむいているけれど、
やがてこの場所が
頭をもたげたオキナグサでいっぱいになる頃には
那賀川の春たけなわ。
野草も次々と主人公が登場する季節となる。
一寸法師になって迷い込んだ人間が
ふと見上げた空に浮かぶのは
春の妖精オキナグサの深紅の太陽。
降り注ぐ陽光に負けない
光のシャワーを浴びている。
福寿草、ユキワリイチゲ、オキナグサ…
この次は、カタクリとシコクカッコソウに遭えるかも。
zzzz zzz z
春眠暁を覚えず―。
ラジオから流れる音声で気がつくと、
鳴門高校が勝ったようだ。

ワタシハコノママネムリマス
オキナグサのひとりごと。
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