2013年01月05日

鳴門市ドイツ館、第九の里、そして20代のベートーヴェン


大麻比古神社から続く
ドイツ館では、
高知市出身の写真家・前田博史(はくし)さんの
写真展「然」が開かれていた(1/14まで)。

D7K_3085.jpg

四国の4つの新聞社で発刊した「花もよう―四国の山を歩こう」で、
いい感性をしていると思った写真家だった。
花を撮影しても、その花が生きている環境が伝わってくる写真。
それは、アートの視点からではなく
科学的な背景を知っている人という感じがした。

例えば、写真集「NIYODO BLUE」が
注目を集める同じ高知県の高橋宣之さんが
水と光のオブジェの表現を行うのに対し、
前田さんの視点には「生態系」があるように思われる。

この写真展のことは知らなかったが、偶然遭遇したから驚いた。
今回は、東北の森と四国の森が主題だが、
館内では、室戸の世界ジオパーク登録を記念して発刊された
写真集「地音」(ジオ)が展示されていた。
館内で購入できる。

→ 室戸ジオパーク認定おめでとう


ドイツ館1階のエントランス周辺(無料)にはドイツの特産品が並べられている。ドイツワイン、ドイツビール、チョコレート、おもちゃ、工芸品などさまざま。この日出会った館内の担当スタッフは品格があって感じの良い女性ばかりであった。二千円を超えるワインを求めたが、価格以上の品質であった(スタッフと相談して選ぶと良い)。
D7K_3091all.jpg

ドイツ館2階(有料)の館内展示物。坂東俘虜収容所の様子を再現したもの。第九初演のエピソードの紹介などの動く仕掛けもある。
D7K_3110_NX2.jpg

D7K_3121_NX2.jpg

D7K_3140-1.jpg

DSC_1541.jpg

ドイツ館の隣には道の駅「第九の里」がある。
同じ建物に、軽食を食べさせる屋台「インビス」がある。
覗いてみると、営業を行っているので入ってみることにした。
ドイツ風のソーセージを使ったフランクフルトが売りである。

いくつか注文してみたところ、
ライ麦パンにハーブで味付けしたホットドッグ
「ヴラードヴルスト」が特に良かった。
これにスープとセットでいただくと良い。
毎日でも食べられそうな感じがする。

D7K_3060a.jpg

D7K_3072-1.jpg

とても感じの良い女性が応対していただけるのも良し。
全国FCのファーストフードやショッピングセンターのフードコートでは
この満足感は得られない。
近所の人たちが続々とテイクアウトしているのも印象的であった。
(やはり地元で愛されているものが一番)。

振り返ると、鳴門は日本での第九初演の地。
第一次大戦でドイツ兵の俘虜を丁重に扱ったばかりか
彼らの自主性や能力を発揮させる場を設け、
地元の人たちとの交流があった。

→ ドイツ館とは

大正時代の日本でオーケストラをやるといっても
楽器が揃わない。
そこで、彼らは楽器を手作りした。
当初は、箱に弦を張っただけのコントラバスであったかもしれないが、
本職の楽器制作者がつくるようなものさえ登場した。

2006年には、映画「バルトの楽園」が公開された。
ドイツの職人技が日本人にも受けつがれたその交流の花として
→「ドイツ軒」のようなパン屋も
鳴門市内の商店街内にある。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
DSC_1538.jpg

ベートーヴェンについて

二十代の頃、ぼくはベートーヴェンに夢中になった。
5月の陽光を受けた午前中は、
田園交響曲や初期から中期のさわやかなピアノソナタ。
まるでご機嫌伺いに部屋を訪れた初夏の風そのもの。

スコア(交響曲の総譜)を眺めつつ
フルトヴェングラーのレコードに合わせて指揮の振り付けをする。
それは誰でもないぼく自身が生きるために必要な儀式であり、日課だった。

「苦悩を突き抜けて歓喜へ」がベートーヴェンのテーマ。
自らの生命が尽きる寸前のところで、
自らを照らす灯りを見出し、
真の喜びへとたどりついた感性のみが知ることができる。
将来に見える灯り―。それは見えるのではなく、
見ようとする意思の力がまなこに映す光。

ところが、
当代一流といわれる指揮者のレコードを聞いても感動しない。
「これはなにかが違う」。
ベートーヴェンの音楽に感動するのは良しとして
それを表現しようとするとき、
作曲者と同じ魂の高さにたどり着かなければ
伝えられるはずがない。

ベートーヴェンといえば大作というイメージがあるが、
実は小品もすばらしい。
ベートーヴェンの小品には、
モーツァルトとは違う土の香りの愉悦感が閉じこめられている。
五月の薫風に誘われて窓を開けるように、
自然のなかで喜びを感じる感性の人にはごく身近に感じられるもの。
ほら、第九のなかには花園も乙女もいる。
神様も降りてきている。
後期の弦楽四重奏曲はベートーヴェンが辿り継いだ融通無碍の境地。
聴くのが楽しくもあり、切なくもあり、それでいて淡々と流れていく。
(いつか、手持ちのベートーヴェンの音楽から紹介してみようと思う)

現実逃避して束の間の甘い雰囲気に浸ることが癒しではないよ。
現実と理想を区別する人生なんて楽しい? 
昨日と違う今日、今日と違う明日だから生きてみたいと思えるんじゃない?

ひたむきに生きて結果はどうであれ気にしない。
苦しいことつらいことがあっても、
歯を食いしばって笑顔で切り開いていく人生にこそ
ほんとうの癒しがあるはず。
しかもその癒しの力は自分を癒すのみならず、
きっと周囲の人たちに感化を与えているはず。

【資料編】
坂東俘虜収容所を再現した「バルトの楽園」ロケセットを置いた「BANDOロケ村〜歓喜の郷」の経緯(2006年3月〜2009年2月)

阿波大正浪漫 バルトの庭(2010年4月〜)


【かつてのロケ村の写真】(2007年1月当時)
坂東俘虜収容所には共同浴場や酒場まであった。素敵なボランティアガイドの女性に施設内をご案内いただいた。
DSC_0165.jpg

DSC_0185.jpg

DSC_0197_NX2.jpg

DSC_0208a.jpg

DSC_0229.jpg

DSC_0260-1.jpg

それにしても、鳴門はひとつの都市としては
見どころがありすぎるぐらいである。
特産品、名産品としては
鳴門鯛(天然)、鳴門わかめ、なると金時、レンコンなどがある。
そして鳴門のうずしお、観潮船、
渦を歩いて真上から見下ろせる渦の道と大鳴門橋の景観
世界中の名画が揃い数時間かけても回れない大塚国際美術館
大麻比古神社と一番札所霊山寺、大谷焼の里、
そして第九初演の地を記念する鳴門ドイツ館と周辺の施設群。
瀬戸内海から大毛島にかけてはエクシブ鳴門、
ルネッサンスリゾート、モアナコーストなどのリゾートホテル群。
徳島に住んでいても全部行ったことがある人は少ないだろう。
(ぼくもである)





posted by 平井 吉信 at 17:25| Comment(0) | 生きる
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: