スミレ(Viola mandshurica)は、旧満州にちなんで命名されたので学名の後半がマンジュリカとなっている。もちろん日本にも多く自生する。よく見かけるのはまちなみのコンクリートの隙間に連なるように咲く姿。広々と日当たりの良い土手などがあるのに、わざわざこんな場所に…と思うけれど、スミレは他の植物との競合に弱い。だから他の植物が進出しない場所で独占する生存戦略を選んだともいえる。
そんなスミレ(Viola mandshurica)を、次に多く見かけるのが草原だろう。特に山焼きをするような場所では見事な群落を見ることがある。
アスファルトでの生存も苦にしないスミレ(Viola mandshurica)にしてみれば、他の植物の進出しない環境を選ぶのだろう。海岸の砂の上に自生することもある。観音寺市の有明浜などがそうである。
→ 寝そべって眺める アツバスミレの芽吹く砂浜(有明浜/観音寺市)
有明浜にアツバスミレの咲く頃は、近くの紫雲出山の桜も見事で、さらに父母ヶ浜や周辺の渚の夕凪を見るのも愉しみな季節。
県内では、海部郡の一部の渚、海沿いの集落や道ばたで多くのアツバスミレを見かける。スミレの海岸型変種で太平洋側に生息して葉が厚いのが特徴。阿南市、海部郡に多いが、一部の地域では、白と紫のまだらを見かけることがある。
さらに、那賀川中流域も生息地のようだ。海岸ではないが、河原の砂の上など、渚の砂浜と大差ない。よく観察してみると、スミレ(Viola mandshurica)に近い個体と、アツバスミレ(Viola mandshurica var. triangularis)と紹介しても支えない個体が混在しているようだ。
この場所では、渓流帯ほど水辺に近くはないが、洪水で浸水しそうな場所にも自生する。ケイリュウタチツボスミレとの生息場所の違いはある。乾いた砂地に多いのがアツバスミレ、半日陰の湿った場所に多く、さらに水辺に近いのがケイリュウタチツボスミレである。
この場所のスミレ(Viola mandshurica)は、典型的な紫色の花弁と葉の大きな草原型のスミレ(Viola mandshurica)と、葉が厚く小さくやや波打つことが多いアツバスミレと呼んで差し支えない個体が混在する。紫色と白色が混じる花弁もあるが、海部郡で見られるような純白と紫というあざやかな対比ほどではない。
大きな毛虫(ツマグロヒョウモンの幼虫)が河原を這う。これからスミレを食べるのか?
これは巨大なスミレ(Viola mandshurica)。砂地ではなく腐葉土などがあるためか、草原型のようだ。花弁の大きさは3pに達し、葉柄の翼は発達している。葉身と葉柄はそれぞれ7〜8pあるので葉の根元からは15pに達する。花弁に栄養を取られたのか、距は丸く小さくしかも濃い紫。およそスミレ(Viola mandshurica)らしからぬ。サクラスミレの要素も少し感じるけれど、この場所で交雑要素(スミレ×サクラスミレ)も考えにくい。
→ ほんとうに見たかったスミレにめぐりあう サクラスミレ(四国カルスト)
スミレたちを見ていると、ときが経つのを忘れる。さまざまな表情の個体が、それぞれ種子がたどりついた場所で咲く。風に揺れる風情は、少なくとも現下の世界情勢や劣悪な現政権のことは忘れさせる。スミレを見ることは、小さないのちの存在を通じて、大きな社会との成り立ちを考えること。社会と自分を切り放すことなく自分ごとで捉える必要がある。
→ アツバスミレのタグ http://soratoumi2.sblo.jp/tag/%83A%83c%83o%83X%83~%83%8C
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