2025年07月16日

80年代の風はまだ熱かった kona weather -35th Anniversary Edition- - 杉山清貴


「kona weather」は杉山清貴さんのソロ3枚目で1987年12月発売の作品。2022年にリマスタリングされてBlu-spec CD2仕様(通常のCDプレーヤーで再生可能な高品質製盤)で発売されていた。

1曲目の「kona wind」から持って行かれる。音合わせの合図で無伴奏の歌とコーラスの息が合い、途中からドラムスがズシンと入ってくると、杉山さんが思わず「いいねえ」と声が漏れたバージョンが収録されている(後年のベストではこの導入がばっさりカットされている)。ここは80年代の空気が濃厚で、このアルバムの雰囲気を決めるといっても過言でない。こうでなければ。

汗ばむ偏西風(かぜ)がシートに吹きこむ太平洋(うみ)づたいのダスティーロード

カジキマグロの夢追いかけたあの年老いた少年のように


歌詞がいいね。はるばるやってきた太平洋の岸辺は自由と「アイタペアペア(なんとかなるさ)」の空気に溢れていた。振り返れば、80年代は冷めているようで、まだかなり人の氣が濃厚であったことがわかる。レイドバックしているのに楽曲の高揚感が横溢しているのは録音に参加している演奏者の熱気とノリだね。

この時代、徳島市出身の写真家、17歳の三好和義さんがハワイで撮影した写真がAPAで特選を取ってその後は広告業界で活躍しながら「RAKUEN」シリーズを発表。この頃はミノルタX700と超広角のMD20of2.8を多用されていた。20oの接近戦は主題を誇張しながら情景も説明するあざとい写真になりやすいが、それよりも好奇心が優るとでも。その頃のぼくは、同じX700にMD28of2.8を使うことが多かった。ぼくにとってはそれが心を同化させていくときの画角だったから。そして楽園とは、セイシェルやモルディブだけにあるのではなく、それを見ようとする心のなかにあると気付いた80年代でもあった。

この2022年リマスタリングの35周年盤の音質は、いかにもデジタル処理で鮮明になったマスタリングではなく、声を中心に粒立ちながらもブレンドされて溶け込みと熱気が同居する。余分な歪み成分や付帯音がなくて音像と音場が分離しているのに、人肌の温もりを感じる。アナログレコード特有の前後の物理的な接触が厳密に点ではなく線であることに起因する時間軸の重なり(リバーブ感)、逆に左右のクロストーク特性が完全でないがゆえの疑似的な中央定位の再現をデジタル処理で実現したよう。つまりは80年代が濃厚に蘇る。ボーナストラック6曲も自由が横溢している。
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kona weather -35th Anniversary Edition- - 杉山清貴

追記
「アイタペアペア」は南太平洋の合言葉。自由な風に吹かれていたから。

posted by 平井 吉信 at 01:48| Comment(0) | 音楽
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