初夏の四国カルストを南下して四万十川源流から県道19号線で中土佐町大野見(旧大野見村)を経由してから四万十川上流部を辿る。川沿いの道は最初は広いが、そのうちお決まりの隘路となる。2トントラックが来たらどうしよう(田舎道ではよくすれ違うことが多い)と思いつつ、離合できるところを見極めながら進んでいくと難なく交わせる。
四万十川で長い距離を広い道が続くのは窪川から江川崎までの国道381号が走る中流部で、川に沿って予讃線が走り、トロッコ列車などのイベント企画もある。旧東津野村と旧大野見村がある奧四万十は大河というよりは里の川という鄙びた趣がある。
ポスターで見かける桃源郷の四万十川の印象なら、穿入蛇行とゆったりと山間部を流れる中下流となる。四万十川は下流の四万十市中村から山間部に突入する。日本の大河でこれは珍しい。四万十川は全長196km、吉野川は194kmとほぼ同じであるが、吉野川が池田町から下流に向けて三角形の沖積平野が展開するのと対照的である。
「日本最後の清流」という触れ込みは、1983年9月のNHK特集「土佐・四万十川〜清流と魚と人と〜」で打ち出されたもの。
→ NHK特集「土佐・四万十川〜清流と魚と人と〜」はNHKオンデマンドで有料ながら見ることができる
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2011034570SA000/index.html?capid=TV60
高速道路ができる前のことで、当時は徳島からは10時間の道のりであった。仲間と分乗して中流の広瀬の河原でテント泊、夜は焚き火に照らされて語らい、ほてったら夜の川で泳いだりテナガエビを採ったり(漁業権は設定されていない)。足下の浅瀬を透明な水が流れ、エビ玉を手にヘッドランプで照らすとオレンジの目が光る。翌朝食べるだけの節度を持って生き物と向かい合う。日中火照った身体が足先から冷えていく感覚と焚き火の温もり、カジカの声と流れ星、しずしずと夜は更けていく。帰りは須崎市の手前からの渋滞(こんなところから?)で疲れが一気に出たものだった。
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四万十川中流部は穿入蛇行による雄大な曲線を描きつつ流れる。江川崎を過ぎれば西流していた四万十川が広見川と合流してくるりと向きを変えて南下する。四万十市中村までの区間が日本の桃源郷とも呼ばれるところで、下流といえども山が川に迫り、鶯の声が遠く近く。道路は隘路となって連休は渋滞で離合が難しいといった事態になる。そのことが四万十川の価値を高めているようにも思える(桃源郷へハイウェイで乗り付けて…とならない)。
四万十川の風景については「四万十川」のタグからどうぞ
さて、五月の四万十川。心のなかでは井上陽水の「5月の別れ」がこだまする。
♪風の言葉に諭されながら…5月を歩く♪
木々の若葉は強がりだから…と歌う五月の四万十川のなかで、一斗俵沈下橋と清水ヶ瀬沈下橋を見るなら、米の川城ハナ公園に車を停めて歩いたらいい。公園はとても良い場所。旅人のために整備していただいたことに感謝。



車道の橋から上流を見ると、堰を落ちる段差と屈曲点の向こうに一斗俵(いっとひょう)沈下橋が見える

下流を見れば、清水の沈下橋と鯉のぼり。両親や親族が心をひとつにして男の子の誕生を祝うこの行事は末永く続いてほしい。

一斗俵沈下橋までは川沿いの小径を歩いて指呼の間にある。夏になれば、地元の子どもが橋の上から飛び込んでいることだろう(遊泳禁止としないのはさすが高知県。人を川から遠ざけることがかえって危なくしていると考えるので)



沈下橋近くの地蔵尊に献花されたようなミヤコワスレの花。川の流れる音はあくまでおだやか。都会を忘れてしまうので来ない方が良いかも

一斗俵沈下橋から公園に戻って少し下流の小学校の南にある路地を抜けると清水沈下橋。上流左岸から眺めると、足の長い(橋桁が高い)沈下橋。清水ヶ瀬沈下橋、清水沈下橋、清水大橋などと複数の呼び名がある。現在では車の通行はできないが、人は渡ることができる。ここも現在は高架橋があるので車両の通行はできないが、人は歩くことができる



この辺りから四万十町窪川までは道が広がって快適となる。窪川ではジェラートや豚まんのおいしい道の駅あぐり窪川、おにぎりのおいしいゆういんぐ四万十、芋けんぴの水車亭などがあるが、以前に仕事でお世話になった四国八十八カ所霊場第三十七番の岩本寺に立ち寄った。ご住職の精力的な活動で窪川地域活性化の拠点となっている




帰りは通い慣れたルート、国道56号で須崎市内へ、北上して佐川町へ、越知町を遡って仁淀川町(池川)から土居川を遡る。国道439号を抜けて道の駅633美の里で休憩後に、仁淀川支流のにこ淵を見て帰るというもの。勝手知ったルートで心地よい風に吹かれて帰る。
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