スミレの女王とも形容されるサクラスミレ(Viola hirtipes)は、北方系のスミレである。西日本では山焼きを行なう草原で見られることがあるため、塩塚高原に数年を掛けて通ったが、見つけられなかった。
2024年には四国カルストへ足を伸ばしてみた。徳島からは日帰りは無理で車中泊での強行軍となったが、自生地が不明なため、ほぼ一日をかけて一帯を探したものの、ようやく数輪見つけることができたのみ。しかし花の旬は過ぎており、見つけられた個体もスミレとの交雑種だった。
西日本に数少ない自生地のひとつである四国カルストにしても個体数は決して多くないし、生息地の環境を調える関係者のご尽力があってこそ。稀少なスミレなので取り上げに注意は必要である。サクラスミレに限らず、自然界に自生する植物とそれらが織りなす生態系を慈しむ気持ちを持って、細心の注意を払って観察と撮影を行なっている。
サクラスミレを忘れがたきぼくは、2025年に再度時間を捻出して四国カルストを再訪することにした。当初は奈良県の曽爾高原に出かけようと計画していたが、万博開催で関西は混み合うのでアクセスや宿泊ができないだろうと断念した。
サクラスミレの和名の由来は、サクラの花弁のかたちに似ていること、花弁が大きく見栄えがすることからサクラの印象をスミレに重ねた心の動きが名前に宿っている。
そして現地に到着。前年度に見つけた場所を注意深く足を踏みいれるが最初の数分は見つけられない。今年もダメかと思っていたら、数メートル先にかすかに紫色の花弁が揺れているのが視野に入ってきた。声が漏れた。数年ごしに見たかったので。ただ見とれた。動きが止まり呼吸が止まり思考が消える。
我に返って写真を撮る。大雨でなければ曇りや小雨はむしろ歓迎でスミレの花弁は美しく撮影できる。写真はともかく、肉眼で実物を見て心にしまっておくつもり。薄曇りの天気が理想なのだけれど快晴(しかも強風)。そのままでは陰影が付きすぎる。そこで日陰を使って撮影してみる。こうして自然光と半日陰の画像を適宜織り交ぜることにした。サクラスミレ特有の濃い紫色は太陽光下が映えるのだけれど、個体の観察には日陰が向いている。
ここ数年見たかったサクラスミレが眼前にある
葉の拡大
センサーの小さなカメラ(フジX20)でも撮影を行なったのは、ピントの合う範囲が広く、接近して撮影できることから小回りが利くのが特徴。
風に吹かれていることも忘れて、生きていてよかったと思える時間が(早送りなのか遅送りなのかわからないが)通り過ぎる。美しいものは美しい。稀少なものは稀少。でもそれが本質ではなく、そこに存在することが尊い。それが植物であれ動物であれ木々であれ水であれ人であれ。
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