2025年05月07日

芭蕉が詠んだのは、タチツボスミレ? シハイスミレ? 


3月中頃から4月末(標高の高いところではもう少し先まで)までのすみれの咲く頃を一年の始まりと思ってしまう。いにしえから歌に詠まれている印象のスミレであるが、意外にも数えるほどしかない。

春の野に菫摘みにと来し我ぞ野をなつかしみ一夜寝にける(山部赤人)

万葉集の歌の世界を繙けば、スミレのそばで一晩寝てしまったなどは季節を考えればありえない。風の当たらない陽だまりで太陽が高い時間帯なら昼寝ぐらいはできるだろうが、雲が出たり風が吹き始めると寒くなって目が覚めてしまう。まして夜であれば。

菫を摘むというのが愛しい女性のもとに通うという比喩であればうなづけるのだけれど。それはさておき、野に摘む菫とはどんなスミレだろうか?

菫を摘む、という連想からある程度の草丈があり、茎や葉が直立している姿が思い浮かぶ。となれば、弥生時代に稲作の伝来とともに種子が渡ってきたスミレ(Viola mandshurica)ではないだろうか。ラテン名を付けてあるのは、すみれという一般名詞ではなく、「スミレ」という和名のスミレだからである。

5月の草原に咲いていたスミレ(Viola mandshurica)
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次は、芭蕉の句。

山路きて何やらゆかしすみれ草

日本でもっともよく見かけるタチツボスミレは、道ばたから山まで点在し、ときに群落をつくることも多い。日本固有のスミレ(朝鮮半島や中国大陸にも存在するともいわれるが、分布の中心は日本列島)のひとつで、なにやら奥ゆかしい姿であること、さらには「山路」というのがキーワード。芭蕉の旅の記録から、発句が京都近辺であったということであれば、ゆかしいスミレとして、タチツボスミレか、シハイスミレが候補に上がる。

まちの近くの低山でいまを盛りと咲き誇っているタチツボスミレを見れば、そんな風情を感じませんか?
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芭蕉のいうゆかしいスミレのもうひとつの候補はシハイスミレ。牧野博士の命名による。
西日本に多い美しいスミレでどちらかというと丘陵、森、山岳で見かけることが多い。
この場所でのシハイスミレは葉に白い筋が入っている。フイリシハイスミレという。
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花弁の濃い色と深緑に白い斑入りであでやかである。ゆかし、というよりはもう少し明るい感じで雅び好みの人なら、タチツボスミレのほうが印象に近いかもしれない。いずれにしても美しいスミレということで。
タグ:スミレ
posted by 平井 吉信 at 23:04| Comment(0) | 山、川、海、山野草
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