2025年04月13日

川の水流に耐えて生きる ケイリュウタチツボスミレ


西日本の数カ所でケイリュウタチツボスミレの自生地が知られているが、徳島県内にもある。どこも川床に近いところに自生するのは共通だが、那賀川の基本高水のピーク流量11,200トンは、吉野川の24,000トン(全国1位)には及ばないものの大きい。なにせ降水量の多い地域として、屋久島、四国東南部の山中、紀伊半島の大台ヶ原などが知られるが、那賀川の源流域にも近い四国東南部の魚梁瀬地区は年間4,000oを超える雨量が観測される。かつて1日の降水量としては那賀郡木頭村(現那賀町)の1日1,114oがあった。那賀川は剣山南斜面と、高知県境の多雨地域の雨を集めて豊富な水量で急流となって下る。地図を見ると那賀川の河口部は口を尖らしたように突き出ているが、ダムができる前のすさまじい土砂の供給を物語る。

ひとたび大雨が来れば増水して水に浸かる場所に生えるスミレがあると知ったのが数年前。足で歩いて自生地を見つけて以来、見に行っている。そのスミレは、ケイリュウタチツボスミレという。

最初に見たとき、あっと声が出た。当時はスミレに詳しくなかったが新種のスミレと思ったほどたたずまいが違っていた。人混みに紛れてぬるっと存在する宇宙人のようであった。

2025年春はスミレの仲間たちにとって当たり年のように感じる。これまでに見られない群生が見られる場面に遭遇している。そこで今回も愉しみにしていたところ、やはり普段より多く見られた。

水面から離れた岩場に咲いていた個体。ただしここも大水のときは浸かる場所だが、生息環境はやや乾燥ぎみ
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葉の様子
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同じ環境でスミレ(Viola mandshurica)も顔を出す
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苔マットがあることからある程度湿気を帯びていることがわかる
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ツツジが川面に突き出て咲く
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水面まで3メートル、生息場所まで2メートルの崖の斜面に咲いている。近づくことはできないし、落ちたら急流に流される場所。生息場所が思い描けると思う
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足下を確保しながら水面に近い場所へと降りていくと斜面の苔マットに小群落があった。花弁はいずれも白に近い淡い薄紫色。
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水辺に近い岩場でシロバナの個体。シロバナは全体の5%ぐらい
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横から見ると花弁が流線型になっていて流される対策をしているのがわかる
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環境がわかる写真の例。背景にピントを合わせている
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垂直の崖に咲いている

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苔マットは居心地が良さそうで多数の個体が自生する。ただし株は密集せず点在する。生息環境から得られる養分が限られているためだろう
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主な場所は水面から上がった岩や土砂の斜面に苔が覆っている場所など。日向を好んでいるようには見えず、どちらかといえば半日陰かも。場所によってはちょっとした一雨で水没する水面近くの岩棚に咲いているのもあった。

葉にピントを合わせている
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じっくり観察すると、水面から高い場所では葉が厚め(海岸型のように)にも見えるが、苔マットや水際のものは葉がしなやかに見える。また、水辺に近いほど流線型に近づいているものもある。

研究される方のために、花弁だけでなく葉や環境までも撮影してある。小さな被写体と背景を説明するときは、小さなセンサーのカメラのほうが有利だ(フジX20)。植物の写真を撮っていて感じるのは、被写界深度を稼ぎたい場面が多く(よってフルサイズは選択肢から離れる。昆虫を撮影する人がマイクロフォーサーズを選択するのもわかる)なるべく絞りたい(f5.6以上、できればf8〜f11)。一方でISO感度を上げたくないし、風やカメラを構える人間のブレ(大概は悪条件が多く三脚を持ち込めないか立てられないか、機動性が落ちる)を防ぐためにシャッター速度を上げたいし回折現象も回避したい。これらの相反する要素を満足させるのは、スミレぐらいの草丈ではAPS-Cの標準から中望遠マクロ(換算40〜90o)と、接近できる広角系レンズ(換算24〜35o)、センサーは24〜26MPあれば十分。ただし最新の40MPは画像解像性とトリミング耐性が高く、画像エンジンの進化で暗部のSNも気にならない。撮影の現場は岩肌で足場が悪く、泳ぎの達人でも長靴を履いて服を着たまま急流(かつ深い)に流されると危ないので要注意。
posted by 平井 吉信 at 12:46| Comment(0) | 山、川、海、山野草
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