四国一の清流(ということは全国一といっても誇大ではなさそう)穴吹川は、剣山の北東斜面に源を発し、木屋平村を抜けて穴吹町を経由して吉野川中流域に合流する
その中流域は隘路が多く、運転には気を付ける必要がある。川へ降りられる場所も下流部を除いては限られているが、目の保養になる。
かつて月刊アウトドアの表紙の撮影のため、カヌーエッセイストの野田知佑さん、カメラマンの渡辺正和さん、編集長の藤田順三さんらとロケハンで穴吹川をめぐったことがあった。あのときの穴吹川は状況が特によく、野田さんの言葉を借りれば「川は少し水深があるところでコバルトブルーに沈んだ」。





夜にキャンプしたときも川に入ったが、ヘッドランプの光に照らされた「存在感のない水」が印象的だった。穴吹川の口山潜水橋は絵になるので第1候補と考えていた。車が通れるかどうかの細い橋だが、上流を望めば竹林が水衝部にあり、なかなかいい。
カメラマンの渡辺さんは、スキー写真の第一人者である。心配された曇り空も午後から陽射しがこぼれるようになり、それとともに撮影中の渡辺さんの顔からも笑みがこぼれた。本人にしかわからない感興の時が訪れているようだった。一緒にシャッターを切っていたぼくにもその気持ちは伝わってきた。被写体と無心に向かい合い、突然のシャッター音ではっと我に帰る…そんな時の写真はいい。撮影後、渡辺さんの大切な一枚を見せていただいた。それは、野田さんたちと奄美大島を訪れたときのこと。早朝誰もいない渚をガクとふたりで散歩する野田さんが砂浜に残した足跡の写真である。画面からえも言われぬ魂の遊びが伝わってきた。
渡辺さんは2011年に長良川で取材中に川へ入って撮影中に流されて亡くなられたとその後に聞いた。ぼくの手元には長野五輪の公式写真班を務めた渡辺さんの「シュプール」という山スキーの秀麗な写真集がある。前年の姫野雅義さんといい、なんともやりきれない事故が続いた。
2025年の春、穴吹川の中流域と河畔の桜を目的地への道中で見た。ここは口山潜水橋


渓谷となった穴吹川中流部





タチツボスミレって思う人もいるかもしれないが、コスミレ。最初はどのスミレも同じように見える。そのうち図鑑を片手に比べながら見るけど、微妙な違いがまだ判別できない。ところが数百数千と見てくると、ぱっと見て感覚的に違うとわかるようになる(機会学習/Pattern recognitionを重ねる画像認識AIに似ている)。この出で立ちは大陸系でしょう(そう見えませんか?)



幾年月の思いがめぐる。春の花と水辺を、還らぬ人たちに捧げたい。
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