2025年02月22日

天性のギタリスト 朴葵姫さん、ヴィラ=ロボス(5つの前奏曲)を全曲弾いていただけませんか?


まずは、アルハンブラの想い出から。
朴葵姫(パク・キュヒ)さんは粒ぞろいのトレモロの美しさを持っているが、それがよく発揮されるのがアルハンブラの想い出。クラシックギター入門のような楽曲で、どちらかというと聴いて感銘を受けることは少ない曲だった。

うちには、親父が購入した中出阪蔵や河野賢といった日本の手工ギターの作品があり、ぼく自身も自分でつま弾いてそれらの音色の変化を体感していた。当時のギターには銘木がふんだんに使われていて、表板はドイツ松、裏板はハカランダやローズウッド、指板には黒檀が埋め込まれていたと記憶している。弦を張替えると安定するまで時間がかかり、たびたび合わせる必要があった(1〜3弦はオースチン、4〜6弦はサバレスを張ることが多かった。音叉=440Hzを何度も聴いてこの周波数が頭に入った)。ときどきは近隣の愛好家が集まって合奏などをしていたので、アルハンブラの想い出も生で何度も聴いていた曲だった。

朴葵姫さんの演奏にはギターをそれらしく鳴らそうとしていない(パチンと弾く快感を求めていない)。そんな演奏は弾き手の独りよがりになりがちで、そのように弾くギタリストは少なくない。朴葵姫さんはそうではなく、音が空間に放たれて余韻を残すまで心で見送るとでも。ゆえに、こんなリズム感で組みたてるのか、こんなにうたうのかと感嘆。川の流れのように長いレガートで大きな抑揚が感じられる。正確無比な音程や精緻な技術は後において、ただ楽器に心をのせるためという感じ。

まずは、この演奏を聴いてみて。粒ぞろいで精密機械のようなトレモロなのに人の手の温もりを吹きかけるよう。一本の川のようなレガートと転調してから高みに昇っていく高揚は何にたとえる?
Recuerdos de la Alhambra(アルハンブラの想い出)
https://www.youtube.com/watch?v=ycYC2pCDkhU


次は、アルバム「Harmonia」の1曲目に置かれている「インヴィテイション ~組曲“夏の庭"より」。ぼくは実演でこの楽曲を聴いたことがある(徳永真一郎&松田弦ギターリサイタル「在りし日の歌」(2023年8月19日)。
弾き方が対照的に異なる二人の愉しいギターデュオだった。徳永さんが小学生の頃(だったかな?)、今切川に小舟を浮かべて一緒に水質検査をしたことがある(覚えていますか?)。さて、2023年のコンサートでは組曲「夏の庭」を全曲弾いてくれた。夏の庭でもっとも好きなのがこの曲。デュオで弾く楽曲だが、朴葵姫さんはひとりの多重録音のよう。少年の頃、庭で遊んだ少年を太陽が照らし風が吹いていたという風情は心で聴く音風景。
https://www.youtube.com/watch?v=eqn3yC4Tg1s&list=OLAK5uy_mBeFLDDw755jekVrJzjZWSdqa6uw-2qHE&index=2

朴葵姫さんのアルバムではこれがもっとも好き
Harmonia -朴葵姫


ヴィラ=ロボスの5つの前奏曲から第2番ホ長調。
朴葵姫さんには以前のスタジオ録音もあるが、それと比べて情感あふれる演奏となっている。中学の頃、もっとも好きな曲は?と聴かれたら、アバとかビートルズとかBCRなどと答えずに、ぽつんとこの楽曲名を告げる。誰も知らない(知るよしもない。当時からマイナー指向だったのです)。

「THE LIVE」というコンサート音源のCDがすばらしい。朴葵姫さん、ぼくの大好きな第1番ホ短調も含めて全5曲、再録していただけませんか? 南米ならではの楽観と野性味が同居している楽曲を。
https://www.youtube.com/watch?v=hSK9xVdB_28&list=OLAK5uy_lKyacGXKwsm1JITWyTyxYlbZwSN1c0bus&index=8

The Live-朴葵姫


最後は、東日本大震災を経験した日本人なら誰もが聴いたことがある「花は咲く」。音楽のカタルシスを感じる瞬間が訪れる
Kyuhee Park / Hana wa Saku (Flowers will bloom) - Y.Kanno
https://www.youtube.com/watch?v=KELE-ogceUg


posted by 平井 吉信 at 19:24| Comment(0) | 音楽
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