2024年12月26日

誰かがやらないと何も生まれない 県南の海で未利用魚を食卓に届けたい会社の物語(株式会社澄海/徳島県美波町)


2023年春のこと、熊本県から徳島県に仕事で着任した濱隆博(はまたかひろ)さんが、長年使われずにがれきに埋もれた廃屋のようになっていた県所有の水産加工施設(美波町の志和岐漁港に設置)を数か月かけて使えるようにしました。この施設は、数年前まで地元漁協がアワビの稚貝を育成する施設として活用されていましたが、現在では使われなくなっていました。その施設を活用するためには補助事業のからみなど行政との交渉や調整がやまほどあったはずです。

志和岐漁港
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これが行政の事業だと数年を要する計画となるはずですが、濱さんは持ち前の行動力で会社を設立。荒れ放題となっていた施設の修復をひとりで行い、数か月で使えるようにしました。さらに地元の金融機関から融資を受けて必要な設備投資を行ないつつ、熊本県から知人の谷口毅さんを呼び寄せて社長に就任してもらいました。会社の名前は濱さんのご子息と同名の株式会社澄海(すかい)と名付けられました。澄んだ海と空を連想させる名前から、濱さんがこの事業に寄せる思いが感じられます。こうして二人三脚で事業が動きだしました。

左から取締役の濱さん、代表取締役の谷口毅さん
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施設には地元志和岐集落の高齢者を中心に地元民を雇用して水産加工(惣菜)をつくっています。魚種は徳島県内で採れたボラ、チヌ、タカノハダイなどの未利用魚や海部郡の沿岸で採れるブリやシイラなどを使っています。未利用魚とは、おいしいのになじみがないためあまり売れない魚など流通に乗りにくい魚です。濱さんは地元の漁業関係者や水産物を扱う事業者をくまなくまわり、ときに漁船に乗り込むなどして魚を出荷してもらえるよう信頼関係を築いていきました。

沿岸漁業がふるわないのは、温暖化で海水温が上昇したことで冬場に深みに移動する魚が磯に居着いて藻場を食い荒らすことが要因です。温暖化で冬に個体数が減少するはずのシカが減らず、林床の植生を食べ尽くすのと同じです(このほかには、里山の荒廃で人とケモノの境界が曖昧になっていることや上流の森の荒廃で川がフルボ酸鉄などのミネラルを海に供給しなくなったことも原因です)。未利用魚を流通に載せることは藻場の回復にも役立ちます。藻場は沿岸漁業を支える生態系のゆりかごで大切な存在です。

濱さんらがめざしているのは地域経済の循環を民間でつくるという地域経営の考え方です。濱さんの知人らが海部郡で藻場の再生を行なう一般社団法人藻藍部を立ち上げました。藻場の再生は未利用魚の流通化と密接な関係があるため、連携していくことになるはずです。濱さんは「徳島で水揚げされた魚たちに感謝して食べ(感食)、残さず食べて(完食)、魚を食べて海の環境改善に寄与(環食)しよう」とアピールしています。

また、施設には敷地内で陸上養殖のできる水槽を設置しました。県内では話題となった上勝町産のアメゴを使ったサツキマスの養殖も行なわれました。このことがご縁となって、上勝町の月ケ谷温泉では(株)澄海で生産した魚が使われるようになりました。魚のロスを出すことなくメニューを追加したい、厨房を楽にしてあげたい飲食店や宿泊施設は問い合わせされるとよいでしょう。

(株)澄海では直接お客様に届けられる商品も開発しました。12月23日と24日に徳島県庁で行なわれた県庁クリスマスマルシェに出店、持ち込んだ商品は完売となりました。その商品とは、シイラとブリの西京みそ焼きです。一度買った人たちはほとんどがリピーターになるそうですが、現時点では決まった場所での販売がありません。同社のWebサイトに販売情報が掲載されますので入手をご希望の方はご覧ください。

おなじみのブリ(左)とあまりなじみのないシイラ(右)。シイラは県南部の海で採れるが、地元スーパーではあまり出回らない。(株)澄海では地の利を活かして鮮度が落ちるまえに加工できる強みがある。ハワイでマヒマヒと呼ばれる南方系の高級魚であり、県南部のスーパーや産直市で見かけたときはぼくも購入して照り焼きなどにしている
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県庁での出店の際は微力ながら販売をお手伝いしました。一度に30個も求められたお客様(県職員の方でしょうか)もいらっしゃいました。「いままで子どもが魚を食べなかったけれど、これだけは喜んで食べるので。今度いつ買えるかわからないのでまとめ買いしました」とのことです。

商品は冷凍すれば半年持ちます。冷蔵庫で半日解凍して電子レンジ(ふっくら仕上げる)、オーブントースター(カリッと仕上がる)などで手軽におかず一品が追加できます。この商品のすばらしさは、魚が食べられなかった人でも食べたくなるおいしさと手軽さにあります。それでいて、食通の人にも訴求する食べ飽きないホンモノの旨味を再現できています。

使われているのは県内で特注した麦みそに、塩、醸造用アルコール、砂糖など。アミノ酸は使われていません。後味が良くひとりで一袋(100グラム)食べられます。九州生まれの濱さんがお母さんにつくってもらった味を再現したとのこと(九州男児で照れ屋の濱さんがはにかんで言いました)。麦みそは九州や愛媛県で使われていますが、徳島では求める風味に合う麦みそを特注してもらったとのことです。魚のおいしさを麦みそが引き出していてほんのり甘いやさしい風味です。

濱さんの手描きの黒板。この文字からどれだけ多くの情報(思い)を汲み取ることができますか?
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お隣には、シフォンケーキやマフィンなど素材系の菓子では県内ではもっともおいしい店のひとつ、howattoさんが出店されています。こちらのマフィンを買い求めました。ホールシフォンは早々と売り切れていました。今年最後の営業日は12月27日(金)です。
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アップルクランブルマフィン
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冬の看板商品 シュトレン
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すだちくんも買いに来てくれたそうです
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外は寒い冬の夜、キッチンカーも盛り上げます
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DMVのモードチェンジに乗車できる体験も子どもの人気を集めていました
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(株)澄海は、2024年10月にアスティ徳島で開催された徳島ビジネスチャレンジメッセで優秀賞に選ばれました。
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知事に説明しているところ
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(株)澄海は、高い理念、まっすぐな志を持ち、それに戦略性と行動力、社会貢献性が備わっていて、地域を巻き込んでいることが高く評価されたものです(地域の高齢者が家から歩いていけるような場所に雇用の場ができたことで、地元でこの設備ができたことがどれだけ喜ばれていることか。会社には全国各地から取引を希望する事業者が視察や商談に訪れているのも集落に活気を呼んでいます)。

(株)澄海では、生産性向上を高めるための設備投資にクラウドファンディングに挑戦しています。本日時点で締め切りまであと数日(2024年の年内まで)ですが、状況は道半ば、できたばかりの会社の資金力には限りがあります。会社を立ち上げた方々の思いの深さと献身に頭が下がる思いであり、応援したいと思います(すでにクラウドファンディングには応募しました)。当社への寄付は、ふるさと納税の寄付控除の対象となります。みなさまのご協力をお願いします。
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ふるさと起業家支援プロジェクト
→ 町の遊休施設を活用し地域水産業の未来を支えるDX化プロジェクト


posted by 平井 吉信 at 11:24| Comment(0) | 徳島
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