人も寝静まった1時過ぎ。 静かに音楽に浸れる時間がやってきた。もちろんごく小音量である。
まず、谷島明世さんの民謡のCD「いいあんばい〜明世の唄つむぎ」から。主に茨城県の民謡を歌っている。大衆芸能としての民謡というよりは宇宙空間にぽつんと置かれて流れてきた音楽のようで心が洗われる。録音当時は20代前半ぐらいかな。
彼女を知ったのは、伍代夏子さんがパーソナリティの番組に生出演して生で歌声(ワンフレーズだったけど)を聴いたとき。暑い夏こそこんな音楽を聴きたい。録音も極上で、鮮度の高い音が自然体でそのまま閉じ込められており、真夜中のCDプレーヤーはそれをほぐしながら空間にひたひたと
波紋を拡げていく。特に好きなのは「篠山木挽き唄」、「磯節」「君田の炭焼き唄」など。尺八だけの伴奏でうたわれると民謡(芸能)というよりは心の声といった趣がある。
次にソプラノの有山麻衣子さんのCD「有山麻衣子 幻のコンサート」をかける。日本の唱歌、オペラのアリア、フォーレのレクイエムからの抜粋などを収録する。声とピアノ伴奏だけの組み合わせ。唱歌では「十五夜お月さん」「七つの子」は叙情的。一見ソプラノに向かないと思える「鯉のぼり」がよくて、作為的でない自然な強弱で自然に流れていくと、楽曲の良さに心を打ち抜かれる思い。「さくら」は声の声域との適合もあって楚々として散っていく。
洋物では、フォーレのレクイエムからPie Jesuを採り上げている(普段はコルボのCDでレクイエムを通して聴いている)。もし近しい人を亡くされた方がいれば、繊細で壊れそうな2分56秒の楽曲の静寂に浸ってみてはと声をおかけする。
最後は、オーヴェルニュの歌から「羊飼いの歌」(バイレロ)。フランスの高原地方の民謡を素材とした純朴な歌曲集(歌手はダウラツ。レコードで持っている)で、これを聴いた20代の頃、信州に行きたくなって野辺山高原や飯盛山を散策したことを思い出した。オーディオファンにはおなじみの高音質録音で部屋のエアコンを付けた環境ではこの良さはわからない。深夜に小音量で聴くべき音楽。
3枚目は小松玲子さん(音楽には関係ないがぼくの幼稚園の先生と同姓同名)のサヌカイト演奏のCD。この日は手持ちの3枚から「ボイス オブ サヌカイト」を選んだ。
世界でも珍しい香川県に産するサヌカイト石を旋律を持つ打楽器に仕立てたもので、音の純度は極めて高く、スピーカーの存在が消えて部屋の中にサヌカイトで音楽が満たされていく。調律は不可能な楽器なので平均律で調整されていると思われるが、ひたひたと音が階段を駆け上がる刹那に、わずかなうなり(不協和音成分)が重なって、それが主旋律を美しくぼかしながらも浮かび上がる趣はなにものにも代えがたい(1曲目の「Misty Blue」だけでも聴いてみて)。
音楽を聴き始めたときは必ずしも平穏が心境ではなかったが、終わる頃には過去を照らす光が未来の自分を見つめるような心境となった。静寂のなかから立ちこめる無限のエネルギーといおうか。
追記
マランツSACD 30nをお使いの方への参考情報(設定による音質の違い)
ネットワークプレーヤーとSACD/CDプレーヤーが一体となった本機は音質が良いのはどなたも知るとおり。設定でさらに音質が変わる(ACコンセントの極性は合っていることが前提。RCAラインケーブルはソニーの数百円のものでも音が素直で十分)。
言語モードの設定…言語を日本語と英語に切り替えられるが、日本語モードより英語モードの方が音の立ち上がり感が速く、音の輪郭が明瞭。日本語モードでは音の角が丸まる。
デジタルフィルター…フィルター1が圧倒的に高音質。フィルター2では、平板な印象になって、本機の強みが活かされない。声が楽器が浮かびかがるモード1に対して、モード2では一体化してしまう。
ライティング(ディスプレイ照明)…意外に差が大きい。明らかに Offが良い。明るさの違いによる音質差は感じないが、オンオフ差は大きい。オフは伸びやかで、目の前が開けて彫りが深くなる。
ネットワーク/USB再生…もっとも大きな差となるのは、SACD/CDを聴くときにネットワークをオフにしておくこと。
可変オーディオ出力…オフにするのが基本。
多機能でありながら各回路をアイソレートしている本機でも設定で回路を閉じられるならオフにしたほうが良い設定が多い。これは深夜にスピーカーの前50センチで聴いているからかもしれないが、音の差はかなり大きい。けれど昼間にエアコンをかけて大きな音量で再生していると違いは気付かないかもしれなず、再生環境によるところが大きい。
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