2024年06月12日

松田聖子「レモネードの夏」を5種類の音源で聞き比べる


前回に引き続いて名作「Pineapple」のなかから「レモネードの夏」を3種類のCDと2種類のリッピング機器で比較する。それらの音源は以下のとおり。

@「Touch Me,Seiko」(32DH792)1984年CD(BDR-XD05Rリッピング)
(同アルバムのアナログマスターサウンド盤もあるが、今回はCD比較のため除外)

A「Touch Me,Seiko」(32DH792)1984年発売CD(BXR-X13J-Xリッピング)

B「Pineapple」(CD選書)(BXR-X13J-Xリッピング)

C「Pineapple」(Blu-spec CD2)(BDR-XD05Rリッピング)

D「Pineapple(Blu-spec CD2)(BXR-X13J-Xリッピング)

BDR-XD05R…2014年3月発売のパイオニア製外付ポータブル型BD/CD/DVDライター
BXR-X13J-X…2023年11月発売のパイオニア製外付BDドライブ(最新型)

Touch Me,Seiko」は「マドラスチェックの恋人」(ほかのアルバムには収録されていない)が聴きたくて買ったのだが、シングルのB面集とは思えない佳曲揃い。商品番号32DH〜はソニーの最初期のCDの品番なのにいまも新品が手に入る(Blu-spec CD2化される前に買っておいたほうが良いと思うよ)。そのなかに「レモネードの夏」も入っていたので比較してみることにしたもの。それぞれにリッピングの音質の違いは以下のとおり。

@…古いCDだが、CD発売当初のもの。自然な再生だが、Aと比べると鮮度感が落ちる。ただし声の自然な感じがあって音楽には浸れる。リッピングに使用したポータブル型ゆえの制約と長所(電源ノイズが少ない?)が再生音に反映されている。

A…@と同じ音源をリッピング装置を変えたもの。抜け感、音の立ち上がりが良く鮮度が高いが、自然な再生。声は@よりやや若い感じでが背景から浮かび上がるが、背景の楽器もよく聞こえる。バックが声を盛り立てている感じが伝わる。

B…音量はもっとも小さい。低域の力感は少ない。ただし声の表情、微妙なニュアンスは小音量でもよく伝わる。音量を揃えるとさらに良い印象になると思われる。

C…音量がいきなり上がる。体感的には3dbは上がったかと思われ、うるさささえ覚える。声が間近に聞こえるが、バックは抜け感が後退する。声はもっとも太く再生されて聖子の魅力が伝わりにくい。

D…Cに比べて抜け感が俄然向上する。リッピングによってここまで違うのかと思わせてヴェールがとれた感じ。それでいて音の角が丸まらず、かつうるさくならず弾むので愉しく聴ける。相変わらず声は前面に出てくるが、奥行き感は出にくい。高い音圧ゆえのデメリットか。

結果は、それぞれ特徴があって好みにも左右されるだろうが、Instagram映えで代表されるようなぱっと見(ぱっと聴き)はBlu-spec CD2盤からのリッピングだが、音楽を聞きこんだ人、楽器を演奏する人、良質のオーディオ装置を持っている人なら拒否反応を示すかもしれない。Blu-spec CD2という優れたCDプレスの技術を採用しながら、音圧至上主義のマスタリングが足を引っ張って音楽に浸れない。言葉を選ばなければうるさいだけに聞こえてしまう。ソニーさん、マスターテープが劣化しないうちに、良いマスタリングを施して再発できないものだろうか? プレス技術としてのBlu-spec CD2は優れた仕様だと思うので。

意外にももっとも良かったのが初期CD盤で最新BDドライブからのリッピング。盤は二十年以上を経過しているが、光とホコリを遮って保管しているので信号面の拾い出し、実際の再生音に劣化は感じられない。初期CDにはデジタルに不慣れでマスタリングに難があるCDもあるといわれるが、本CD(32DH792)の帯を見ると、税抜2,920円、税込3,008円(消費税3%)と書かれている。消費税は10%まで上がったが、経団連は20%まで上げるよう提言しているという。余談だが、経団連の製品を個人的に不買運動を続けている。盤面に小さく記されたIFPI-L277という記載からCDのプレスは、ソニー・ミュージックエンタテインメント静岡工場でなされたものと推察。

CD選書からのリッピングは、やはり良好な結果。余裕のある鳴り方で声とバックの楽器の関係性はもっともよくわかる。声がもっとも楚々としているので小悪魔的な声の表情はもっとも伝わるかもしれない。IFPI-L274でこちらもソニー静岡工場でのプレス。CD選書のCDをお持ちの方は、通常とは逆向きの収納(信号面が上を向くように)にしないと、裏が透明のケースゆえ、光が当たって信号面が劣化するのでご注意を。

タグ:松田聖子
posted by 平井 吉信 at 00:18| Comment(0) | 音楽
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