スミレ(Viola mandshurica)の海岸型には、アナマスミレとアツバスミレがある。アナマスミレは礼文島で発見され、その地区の地名が和名になっている。日本海側にしか自生せず、それも砂浜がほとんど。その点ではイソスミレの生息と似ているが、まだどちらも見たことがない。
太平洋岸(主として西日本)に生えるアツバスミレは、砂浜に生えることは少ないように思う。四国東南部でもぼくが知る限り、波打ち際の生息地は一箇所のみで、海岸近くの道路の隙間などで見つかることがほとんど。
そんなアツバスミレが香川県観音寺市の有明浜では砂浜に咲く個体があることを知った。
有明浜といえば、背後の琴弾山から見下ろす銭形砂絵の景観を見たことがあるが、銭形や有明浜を間近に見たことはない。観音寺市のWebサイトには海浜植物の宝庫とある。
https://www.city.kanonji.kagawa.jp/soshiki/30/614.html
紫雲出山、父母ヶ浜、有明浜/銭形は一日で回ることができるかもしれないが、それでは慌ただしい。かといってアツバスミレを見るためだけに有明浜を訪れる人は少ないと思うけれど。
行ってみよう。
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はやる気持ちを抑えてまずは琴弾山へ上がる。車で上がる場合は一方通行なので気を付けて。
ご存知、砂に書いた「寛永通宝」。上から見ることはあっても、どの程度の規模なのか、どんな造形なのかなど気にはなっていた。
琴弾公園周辺は桜の名所でもある。西讃は徳島東部より桜がやや遅いようだ。満開をやや過ぎたところ
「銭形砂絵」に近づいてみると俯瞰のごとくは見えない。形態を保つため銭形は立ち入り禁止区域となっているが、春と秋の2回、かたちを調えるためボランティアが砂ざらえを行うとある。
https://www.city.kanonji.kagawa.jp/soshiki/21/333.html
間近で見ると大きさが実感できる(寛永通宝の文字は土手に遮られて見えない)
まずは適当に海側へ進んで有明浜へ出る。南端は人が多い。
北端へ近づくと静かな渚。憩う人もいる。良い休日の過ごし方。
波打ち際から離れて堤防に近づくと、海浜植物帯が繁茂している。
ハマダイコンの群落
コウボウムギ
渚と並行してキャンプ場がある
有明浜の海浜生態系の豊かさを示す看板。植物を持ち帰らないのは当たり前
有明浜の北端で渚は狭くなる。眼前にそびえる岩稜は、有明富士とも呼ばれる江甫草(つくも)山(153.1メートル)。
数時間をかけて長さ2kmの有明浜とその周辺の海浜生態系を隈なく歩いたところ、アツバスミレを見つけることができた。
雨の少ない瀬戸内海の夏は灼熱の砂浜に根を置いたまま、植物は逃げることはできず耐えるしかない。表層土や腐葉土がない砂だけの地面という過酷な貧栄養の条件(実際に調べてみないとミネラルやら松の葉などが影響しているかもしれない)。冬は北西に面したこの場所は山陰を抜けて瀬戸内を吹く季節風が痛い。そして水温み桜咲く頃、砂の上に顔を出して開花の春を迎える。そんなアツバスミレを地面に這いつくばって眺めているだけで幸福感を覚える(小さな若い芽にご注意)。
こんな場所は西日本でもそうはない。末永く有明浜周辺の生態系が保全されることを願う。
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