酒は飲まないし飲みにも行かない(コロナでなくても)のだけれど、家で少量の酒を味わうことがある。
酒は愉しいときこそ味わいたい。やけ酒や酔い潰れるなんてつまらない。酒は人を堕落させる道具ではないから。
気が付くと、自作の梅酒を筆頭に、日本酒、焼酎、泡盛とそれなりの銘柄が揃っている。ただしビールはアルコール度数0%の龍馬1865と知人のつくるクラフトビール以外は飲まない。
21世紀初頭のウイスキーが売れなくなった冬の時代、西暦2000年にニッカから発売されたのが創業者の名前を冠した初のウイスキー「竹鶴12年」。
ウイスキーブームの現在からは信じられないことだが、ぼくの手元にも山崎12年など現在では数万円のウイスキーがあった(当時は5千円台)。竹鶴12年も2千円少々(1980円のときもあった)で買えた。
その後、NHKの「マッサン」でブームになる頃には竹鶴12年は終売となったが、ぼくの乏しいウイスキー体験ではこれがいまも最上である。初めてこのウイスキーに触れたとき、こんなにおいしい酒があるのかと感動した。食品として表現するなら、甘味、酸味、適度な苦みが次々と顔を出しながらも(ほら、人間が縦に重なって顔を出しながら踊る振り付けのように)、親しみやすく、気品高く、庶民の幸せをボトルに詰めました、とでも言いたげに。
山崎12年の花が溶けてしゅわっと広がる味と香りの洪水もよかったが、基本となる方向性は竹鶴のほうが好きだ。終売となってからは竹鶴17年(4〜5千円)を3本買って、先日その2本目を飲み終えたところ(1本飲むのに5年ぐらいかかっていることになる)。山崎12年の良さを教えてくれたのは、小豆島YHで働いていた青年で料理の腕前が良い人であった。何の話だったかは忘れたけれど意気投合したことを思い出した。
竹鶴17年はもちろんおいしいウイスキーで素人のぼくが語るまでもないのだけれど、ぼくは竹鶴12年のほうが好み。想像するに、ウイスキー冬の時代の製品なので、若くても12年の原酒を、なかには20年を超えるようなものも混ぜていたのかも。さらにモルトを引き立てるグレーンの役割が大きく、飲みやすさにつながったのかもしれない。
竹鶴は余市と宮城峡のモルトを使っているとされるが、余市10年を飲んだとき、これまたピートの苦みという先入観ではなく、ミルクのような浮遊する甘味を感じて驚いた。宮城峡12年(まだ半分は残っている)では濃厚に詰め込まれたウイスキー成分を味わう際に、まずはそのままで、そして少しずつ加水しながら開かせていく楽しみがある。
竹鶴12年を既存のウイスキーのブレンドで再現できないかと思って、候補に選んだのがブラックニッカ(スペシャル。近所のスーパーで税込1600円ぐらいで売られていた)。親父は酒飲みではなかったが、応接室にはブラックニッカが置かれていて、ときどきはコーラ割りなどを楽しんでいた。21世紀初頭はウイスキーが潤沢に選べたので、ニッカからはオールモルトという商品もよく買っていた。顔なじみのブラックニッカ(派生ではないオリジナル)はいつでも買えるだろうと思っていたので。つまりブラックニッカ人生初体験(2024年)なのである。
ブラックニッカ(スペシャル)はシリーズのなかで唯一オリジナルを継承している。その風味も飲みやすいが、決して甘味ほやほや路線やハイボールの引き立て役ではなく、単独でも存在感がある。ある意味では、竹鶴12年の突き抜けたバランス感をやや下げて実現しているように思う。密度感があって香りの開く奥ゆかしさとふくよかであって透明感がある竹鶴12年には及ばない。そこでブラックニッカと竹鶴17年をブレンドしてみたのだ。
その結果、マッサン当時の竹鶴17年(2010年代半ば)と、ブラックニッカ・スペシャル(2024年)を1:2でブレンドしてみたら、竹鶴12年の感覚が味わえたのだ。
良いウイスキーはそれを味わっていた当時の人々との交流を思い出させてくれる。
追記
サントリーの知多は、新しい銘柄で近所の店で4千円少々で販売していたもの。トップの発言の不快感からサントリーの不買運動を続けているが、これは例外にしてシングルグレーンのウイスキーという新境地を見たくなったので購入。これはこれで新たな地平線を開いたと感じる。ウイスキーの多様な生態系のひとつとして評価される製品と思う。
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