徳島市内から約40分の大川原高原に到着する道中に佐那河内いきものふれあいの里ネイチャーセンターがある。周辺は標高7百メートル前後の音羽川(園瀬川支流)源流域の森の散策路がある。
散策路といってもネイチャーセンター(人が常駐する)まで5分程度で戻れる場所を周遊するので森を逍遙するのが不安という人や、子どもの自然観察にはうってつけである。連日事故が発生しているクマについては、四国のツキノワグマの生息数は少なく(以下のURLに調査報告)遭遇する機会は皆無に近く、この山域での目撃例もないので心配無用。
→ 日本自然保護協会の調査結果 https://www.nacsj.or.jp/2019/12/18290/
クマに関してはヒグマとツキノワグマの違いよりも個体差や状況(餌を探している、強い個体に追い出されて里山へ降りてきた、人と遭遇したことがあって攻撃してこないのを知っている、シカの死体あさりで肉の味を知っている、出会い頭であった、人を襲ったことがある、興奮状態、親離れしたばかりで世慣れない若い個体、子どもを連れている母熊などの状況ごと、また斜面の上下の位置関係(上が有利)、距離、地形、個体差があって、このように対応すれば良いという法則は見い出しにくい。
例えば、山菜採りなどで不意に襲われたときは顔と頭を守りながら地面に伏せることでケガはあっても命は守る姿勢を取るといったことを優先する。背中を向けて逃げてはいけないのは原則だが(逃げても追いつかれるうえ、攻撃を誘発する)、子グマを置いている母グマの心理からは子グマから離れて深追いを避けようとするなど例外的にそれが有効な場合もあるかもしれない(ほとんどの場面では背を向けて逃げないは不可欠と思われる)。
クマとの距離があれば、ゆっくりと後ずさりをしながら木の陰に隠れる(横の動きはクマにわかりやすいので場合によっては木の前に立って静止するのもあり)。クマの姿が見えなくなってもしばらくは静止してクマが消えていった方向を注視する。相手も隠れてこちらを見ている可能性があり、後ろを向いて歩き出すと追ってくることもある。後ずさりは半身で後方を確認しながらも前を向いたままで行うなど、さまざまな留意点があるようだ。とにかく、これだけクマが出没している現状では山菜採りや生息する山域に入山(登山)しないのが原則だろう。
この場所は初心者向きで静かな散策が楽しめる場所。帰りはネイチャーセンターで見聞を深めたら良い。
下界から見る大川原高原は霧に包まれていた。層雲と呼ばれる雲である。この雲のなかに入ったら霧雨がしとしと湿らす程度だろうと考えて出かけることとした。折りたたみ傘と雨具の上着は持って行くとして、自宅から40分後には到着するのでおっくうにならない。
まずはセンターの上にある森を歩いてみる。森の入口にはタカクマヒキオコシ、シロヨメナ、オカタラコウが群生している。それぞれ紫、白、黄の花弁である。



みずみずしい広葉樹の森を上がっていく

オタカラコウにとまって蜜を吸うのはシロツバメエダシャクか?


白い貴公子のよう

ホウジャクが飛び込んできたが動きが速くて暗い場所でのシャッター速度では止められない

こちらは透き通るような羽根をしたホシベッコウカギバ


キノコではなく落ちてきた広葉樹の種

テイショウソウ

葉



星が瞬くようなアケボノソウ

露に打たれた植物




蜘蛛の巣さえ水滴の花火

オタカラコウは湿った森の番人のよう

今度はセンターの下の散策路を行く
(途中キイロスズメバチが集まっている樹木があった。巣があるのか樹液を吸っていたのかはわからない。たまたま黒い雨具を着ているぼくは足早に通り過ぎるしかない)



沢が見えてきた。これが音羽川の源流域

浅い水際をたどっていく

トリカブトの仲間



植物界でも毒性の強い植物で1グラムの葉で人が危うくなるという。触れるぐらいで致死量には至らないが皮膚や粘膜からも吸収されるので素手でさわらないほうが無難。しかしこれを薬にも使うのだから毒をもって毒を制すことがあるのだ。
オタカラコウがこの日の主役

夕暮れが近づいて森が霧に深く包まれるようになった。




この時間が良い。センターの周りを歩いているのでどこからでも5分で車道に戻れる。日常のなかの非日常は身近なところにある。
タグ:大川原高原
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