2023年10月07日

里海の記憶〜陸の孤島といわれた由岐町阿部(あぶ)地区、防災と自然の営み〜


かつて陸の孤島といわれた阿南市の那賀川中流域、蒲生田岬周辺、海部郡由岐町の阿部伊座利(あぶいざり)地区なども道路が整備されて行きやすくなった。それでも運転に慣れない人は見通しの悪い曲がりくねった海沿いの道を神経を使って運転すると疲れるかもしれない。

そこにある里海の暮らしを訪れてみたくなった。かつては「いただきさん」と呼ばれた頭に篭を載せて魚を売りに行く行商が隣の伊座利地区とともに営まれていた。少女の頃から習練を積んで成人する頃には数十sを頭に載せることもあったという。その頃の展示があるのは由岐駅の2階にあるポッポマリンである。
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阿部地区のような里海は地元の暮らしの場であり、静かに足を踏み入れることとした。すれ違う人へのあいさつは欠かさない。集落へ車を乗り入れるのは見合わせて集落を見下ろす県道の広い路肩に置く。そこから歩いて10分程度で集落の中心までたどり着ける。
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県道は想定される最大高さの津波に浸水しないとされていて、そこに向けて集落から上がる里道を随所に整備、県道沿いにはヘリポート、食糧など災害対策品を各家庭が備蓄するなど災害対策を万全に行っている。これは他の里海の集落の手本となること。
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県道から集落へ下りていく道筋の沢(東谷川)は海とそのままつながっている。
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エビやカニが生息しているのでは。きっと集落の子どもの遊び場、いまの大人もかつて遊んだ場所ではないかな。海部郡の川はどこにもダムがなく海に注ぐので自然度が高い。里海には小川が果たす役割が大きい。伊座利の伊座利川も同じく魅力的。海に出る前に川筋で足が止まってしまう。
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集落を縦横につなぐ道は漁村らしく狭隘。隣家の会話が聞こえてくるのではと思えるほど民家も隣接している。あけすけで濃密だけど山村ほど干渉しないという漁村の意思疎通が構造的に見える気がする。
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郵便局がある集落の中心部
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町立阿部小学校は2009年まで由岐中学の分校も併設されていたが、2011年に休校となった
http://www.abukou.minamicho.ed.jp/
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集落を抜けると地域の産土神である宮内神社がある。
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階段を上がりきると標高約7メートルで津波の際の避難場所にもなっている。
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境内に置かれただんじり。秋祭りでの出番が近いのだろう。
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宮内神社の前には阿部の漁港が広がっている。漁港沿いに歩いていく
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津波からの避難とは高い場所に上がること。それは墓地の裏手や集落の裏手、神社の裏手など至るところに表示されている。集落の防災意識の高さがうかがえる
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漁港をなぞるように山裾から南の浜へ出られる小径がある。崖にはハマナデシコが群生している
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驚いたのはシオギク。四国東南部の蒲生田岬から室戸岬までの海浜崖に自生するのだが、ここのは生育が良い。室戸岬より自生の条件が良いのかもしれない。花期は冬である。
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このハマヒルガオも勢いがある。5月頃が花季である。
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漁港の隙間からハマナデシコがてんこ盛りの皿鉢料理のように溢れ出す。うれしいな
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これはツルナ。葉が食用にされているが、栽培しやすいので畑に移植されることもあるようだ。アイスプラントのような食感らしい。栽培種でなく自生種である
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ハマナデシコは造花や園芸種のように見えるほどあでやかで曇り空の下の集落を照らす燭台のよう
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港の南端から鹿ノ首岬方面と岬の東側の浜が見える。この浜へは阿部集落から渚づたいには行けなさそうなので集落の南の尾根に上がって下りるようだが、その小径は荒れているかもしれない。
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由岐に戻る途中の展望台で見たおだやかな夕暮れの空と海。人々の暮らしの燭台であってほしい。
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追記
阿部地区の隣には志和岐(しわぎ)地区がある。この海浜では地元の保護活動によってナミキソウが初夏に花を咲かせる。
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2023年秋、この志和岐で県外から来られた人が地元の水産振興をねらって新たな会社を立ち上げる。年内には営業が始まると思われる。思いの込められたその企業のご発展を祈りたい。



posted by 平井 吉信 at 12:54| Comment(0) | 里海
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