物語は終盤にさしかかっている。脚本は史実を踏まえながらも、誰もが悪者にならないよう、登場人物の一人ひとりに細やかな気配りがなされている。単純に白黒を付けないのに、モノサシ(伝えたいメッセージ)はぶれていない。植物を通じて訴えているのは人の生き方。好きなことに夢中になれることの幸福感。人生に敗者はいないという伝言を受け取った方も多いだろう。近年の朝ドラで出色の脚本ではないか。
劇中では神社の木を切るという明治政府の方針に主人公はなんとかならないかと神社の森の記録を通じて抗議の意志を示そうとする。そこに明治神宮外苑再開発への隠された脚本家の意図を見る。
神社には必ずこんもりとした森がある。その森は長い年月にわたって地域固有の生態系が固定された閉鎖系となっている。神社の森には開発の手が入らないからである。
徳島でも神社の森に稀少な植物が自生している(しかもその一角だけ)という事例が多く存在する。神社の森の生態系は時間を止めたかのように脈々と遺伝子資源をつなでいる場でもある。
冬になると訪れるこの神社の裏山にツチトリモチの自生地がある。足下に気を付けて丹念に斜面を探っていくと次々と見つかる。この植物は光合成を行わず樹木に寄生してそこから養分を摂取する。ツチトリモチ科 ツチトリモチ属 ツチトリモチである。





壽衛さんの献身的な支えがあってこその牧野である。最終週は星になる彼女とスエコザサではないかと予想しているのだが。
世の中のあらん限りやスエコ笹
(牧野富太郎)
追記(9/17)
らんまんの終わる場面が浮かんできたので記しておく。
本編では意外にも牧野さんが各地の植物愛好家たちと採集に出かける場面が出てこないので、とっておきの場面となっているのではないかと気付いた。
それは、すえさんの死後…。80代を超えた牧野は、愛好家たちと採集に出かけた山野でついうとうとしてしまう。
そこでは幸福感あふれる回想場面が走馬灯のようにめぐり、それを見守るすえさんの笑顔が浮かび上がる。ここでエンディングテーマが流れて夫婦の生涯を祝福するように幕を下ろす。
(実際どうなるのか楽しみ)
タグ:らんまん
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