キレンゲショウマは、アジサイ科、キレンゲショウマ属のキレンゲショウマという種である。1つの属に1つの種というのも珍しいが、日本固有でしかも限られた場所にしかない。最初に発見されたのは石鎚山系。後に朝鮮半島や中国東部でも見つかるのだが、東アジアの限られた地域に自生する特異な種であることには変わりはない。
小説「天涯の花」(宮尾登美子)に魅せられて剣山の自生地を訪れたのがきっかけだったが、作者自身は自生地へは行ったことがないという(修験道にもなっている険しい場所なので)。それなのにあれだけの描写ができるのは人間の想像力と創造力を表している。
剣山では2015年にキレンゲショウマの自生地が崩落して壊滅状態になったのではと心配されたが、2016年には復活していることが確認された。四国では石鎚山(登山道からも遠目に見える)、筒上山などに自生地があるが、規模からいうと剣山がもっとも広いのではないか。
(石鎚山登山道から見えるキレンゲショウマの群生地、まだ開花していない状態)

剣山では山頂へ向かう途中で山頂とは逆に谷筋を下りていく。その雰囲気がたまらない。タカネオトギリ、トゲアザミ、ナンゴククガイソウ、それからカニコウモリ、お花畑でのシコクフウロ、ソバナ、ホソバシュロソウ、点在するツルギハナウド、ギンバイソウ、レイジンソウ、石灰岩地でのヒメフウロ、ときどきはランの仲間も見かけながら、修験道を下りていくときこそ高揚する。
そして黄色の絵の具を散らしたような遠景が近づくにつれて、花弁を斜め下に向け、ある花弁は上を向き、蕾と散った花を載せて学名(Kirengeshoma palmata )の由来となった掌のような葉が印象的。霧にむせぶ谷間にぼうっと咲くこの花を見ると、良かったと思える。
(掌のかたちの葉)

















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