オオタチツボスミレ(Viola kusanoana)の分布は北国や豪雪地帯が中心で北はサハリンや千島列島まで産するという。最終氷河期が終わる1万年前より古い時代には日本列島各地で見られたのかもしれないが、日本周辺で気温が上昇した縄文海進の時代にはオオタチツボスミレは高地や北国に逃れたのだろう。この時代には地殻変動も多くスミレも多様化したのではないか。
氷河期の生き残りのようなこのスミレの背丈は大型で20センチ以上は普通に見かける。それ以外にも葉のやわらかく丸みを帯びたたたずまい、紫色の花なのに炬(花弁の後方にとんがった場所)は白いなどが特徴。四国は生息地でなさそうだが、阿讃県境の一部の山域で比較的個体数が多く自生している場所がある。







この場所では近傍にタチツボスミレの群落もあって、ともに群落を形成しているが、両者の交雑は見られなかった。遺伝子的にはそれほど近しい関係ではないのかもしれない。
(近くにあったタチツボスミレの群落)



南国徳島では平地では見かけないだろうと思っていたら、意外にも県南部の温暖な平地で見かけたことがある。特に四国遍路のコース(巡礼者がよそのスミレの種を運ぶ)ではなく、多様な環境が残されている一角ではあるが、こんな場所にも自生しているのだなと感心したことがある。
このように生息地を外れていても偶然見つかることがある。先入観を持たずに観察していくと気付きがあるかもしれない。
タグ:スミレ
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