2023年04月22日

なにやらゆかし タチツボスミレ


日本でもっとも多く見かけるタチツボスミレ(Viola grypoceras)。そのなかでたたずまいに感銘を受けたものを。

楚々とした姿 朝立彦神社(徳島市)
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標準的なタチツボスミレの葉 その美しさを愛でる(徳島市南部)
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星形のような神秘。大宮八幡神社(勝浦町)
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この個体などは図鑑に載っている標準的なイメージに近い
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アヤメやカキツバタを連想させる妖艶さ 脇町の山中にて
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山中のタチツボスミレ(神山町)
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ニオイタチツボスミレ もしくはそれとの交雑(佐那河内村)
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参考までに同じ場所でのニオイタチツボスミレ(たぬき顔の美女といえば失礼か?)
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同じ場所でナガバノタチツボスミレ。実際はこの三者で交雑しているかもしれない
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横顔の美しさ 稼勢山(勝浦町)
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渓流沿いの凜としたたたずまい。葉は肉厚で光沢があり、先端が細長い。ケイリュウタチツボスミレではないが、渓流に適応しようとしている中間形か?(海陽町)
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濡れたような艶っぽさを感じた(ツキノワグマの自生地、砥石権現)
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これも気品ある姿(佐那河内村)
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標高千メートルを超えて寒冷な場所に咲く(高丸山)
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高千穂峡の崖に咲く個体も四国のタチツボスミレと変わりはないよう
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最後はちょっとおめかししてディズニー調で(佐那河内村)
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ところで、万葉集にうたわれた「すみれ」(一般的な名称)がいくつかある。
春の野に すみれ摘みにと来しわれそ 野を懐かしみ一夜寝にける(山部赤人)

山吹の咲きたる野辺のつぼすみれこの春の雨に盛りなりけり(高田女王)

芭蕉にもある。
山路来て何やらゆかしすみれ草


これがどのスミレを指すのか手がかりはないけれど、想像を膨らませればある程度見えてくる。
山部赤人は早春の野に出て一晩寝てしまったという野宿をうたったものではなく、すみれを愛する女性になぞらえたものだろう。だから特定のスミレを指していないと解釈する。

高田女王は「つぼすみれ」とあるけれど、これがいまの「ツホスミレ」を指すとは限らない。ツボスミレは白く小さな花のスミレなので春の雨に生えるすみれとして紫色のタチツボスミレを想定したい。

芭蕉はどうだろう。芭蕉は推敲して作品に仕上げるが初稿はいまの名古屋の熱田地区のようである。候補としては、(1)タチツボスミレの小さな群落、もうひとつはシハイスミレ。ただし愛知県は場所によっては変種のマキノスミレも混ざるはず。句の風情からこの三者のいずれかだろう。個人的には、山路きて何やらゆかしすみれ草 とうたわれた風情からタチツボスミレかな。

山路には「スミレ」(マンジュリカ)は見かけない(人里の田んぼや路傍のスミレなので)。タチツボスミレはほぼ全国で見られる日本でもっとも普遍的なスミレで日本を代表するスミレといえばタチツボスミレだから。

追記
スミレを撮るのにどんなカメラが良いですか?って訊く人はいないと思うけど、答えは富士フイルムで。
ことスミレに関しては、他社のカメラで撮った花弁と比べてもトーンの深みが違う、SONYやキヤノンではたたずまいのつや感、楚々とした透き通る感じが出ない。解像度とかダイナミックレンジとかの要素ではなく、フジの画像処理でしょう、と答えたくなる。

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定評ある緑の再現性の深みは独自のカラーフィルターの配列から。その補色である紫系統の表現(ハイライトをやや抑えた設定が良い)、そして他社ではのっぺりとする花弁の濃淡が浮かび上がるのは、写真ならではの階調性を知っているメーカーだから。ハイライトとシャドーが粘るけれど、その代償としてそこに続くトーンカーブが立っていてそれが描写のメリハリを与えているのでは?
(新品もしくは中古で手に入るならX-T30かそのマーク2が良いですよと耳打ちする)

タグ:スミレ
posted by 平井 吉信 at 16:30| Comment(0) | 山、川、海、山野草
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