豊臣秀吉が木下藤吉郎だった頃…じゃなかった、携帯電話がまだPHSだった頃、好きな女性からの電話では呼び出し音を変えていた(PHSについては2021年まで使っていたからPHS時代は遙かな昔の話ではないけど)。
(わくわくするよね、ポケットの奧からひそやかに鳴り出すと…)
その1 そろそろかかってくるだろう、こちらから電話しようかと思っていた(シンクロ性)
その2 かけようとは思っていなくても、なんとなく想っていたとき(にやにや。これは恋愛初期にあるよね)
その3 大勢の人に囲まれているが電話には出られる場面で仕事の対応のフリをしてその場を離れる(顔の表情を悟られぬよう苦虫をつぶしたような表情で)
その4 気まずい会話で別れたあとのコール(ほっとするというか、どきどきするというか。これもあるよね)
ぼくがこの音源に親しんだのはジョージ・ウィンストンの「PLAINS」(この単語を聞くと、The rain in Spain stays mainly in the plain〜スペインの雨は主に平地で降る―を思い出しませんか?)というアルバムの4曲目「Give Me Your Hand / La Valse Pour Les Petites Jeunes Filles」。
翻訳すると「手を貸してください、少女のためのワルツ」とでも(後半のフレーズはラヴェルの作品のようだね)。小さな女の子が無垢な笑顔で草原で花を摘みステップを踏むような様子をピアノが珠を転がすよう。この曲を生で聴いた(ジョージ・ウィンストンの徳島でのコンサートがあったとき)。ぼくの隣でその女性は座っていた。
それで…なぜ思い出したかといえば、ピーター・バラカンさんの朝のFM番組「ウィークエンドサンシャイン」から。
→ 聞き逃し https://www.nhk.or.jp/radio/ondemand/detail.html?p=0029_01
土曜の朝はいつもこれをラジオから聴いている。1週間を終える(始める)のに気持ちがなごむひととき。きょうはアイリッシュのグループ、チーフタンズの特集。
アイリッシュテイストの音楽ということでは、hatao&namiの2020年のコンサートを聴きに行った。アイリッシュを聴くと人によっては無印良品の店内にいるような錯覚を覚えるかも。
まあそんな感じで今朝のラジオに浸っていたら、聴き覚えのあるあの旋律(少し装飾音が加わっている)。一瞬、電話がかかってきたかの条件反射が起こりそうになった。アイルランド語のタイトルは「Tabhair dom do Lamh」(トール・ドムド・ローム)。Danny Boyにしても懐かしいような気分のまま魂を鼓舞されるアイルランド音楽。
互いになかなか時間が取れないなかで彼女とはキャッチボールをしたことなども思い出した。あの無邪気な笑顔で本気になってスローイングしてくるのだから。その後彼女は大きな挑戦を続けていまに至っている。とてもうれしい。
ぼくがその女性のために最上と思って無意識に待ち受けに選んでいた音楽が朝のラジオから予告もなく流れ出したとき数十年の巻き戻しがあった。ということで心の動きを綴っておいた。
追記
ジョージ・ウィンストンのなかでも「PLAINS」は透明な叙情感よりも、毎日聴きたくなるやさしさに横溢された作品。入手が難しくなる前に予備を買っておきたいぐらいだけど。
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