さて、丸山の紅葉はどんな具合だろうと思って、徳島県立高丸山千年の森ふれあい館の原田寿賀子さんへ電話をかけてみた。
「丸山の紅葉は近年希に見る美しさですよ。今頃(11月上旬のこと)は中腹のブナの森あたりが見頃でしょう」。
さらに気になって、ぼくが事務局を務めるNGOが植樹した森はどんな具合なのか尋ねてみると、あのぼうぼうと生い茂る萱原が森の様相を呈してきたという。久しぶりにそこ(関係者以外立ち入り禁止区域)も見ておきたいと思って丸山に出かけることとした。
(午前中はのんびりと家事をしていたので)電話をしたのが昼前。おにぎりをつくって出かける支度をする。前回は15時過ぎから登り始めたが、周回コースでの復路ではヘッドランプを一部で点けた(森の浅い闇を体感すべくなるべく点灯しないようにした)。今回は登山開始が13時半と早いので(とはいえ、この日もっとも遅い登山者&下山者)余裕がある。遅い時刻だと登山者との遭遇が減少するのも好都合。例によってヘッドランプを持っているし、満月に近い上弦の月であることも知っている。
勝浦川最大の支流旭川を遡っていく。このあたりは色づき始めたところ。早めに登りたいのでふれあい館には立ち寄らなかった。

駐車場はすでに下山組がちらほらと帰り支度をしている。紅葉の頂点にあるというのに空いているのはさすが徳島。奧に見える山が丸山の山頂。山頂の南北の傾斜は急である。

登山道の登りはじめから谷をはさんでみる山頂。紅葉は中腹に移っていることがわかる

丸山は中腹にブナ林がある。かつては笹が生い茂りブナが点在する森だったが、近年の鹿害でスズタケは消えてしまった。人間にとっては快適な森風景だが、生態系からは理想とはほど遠い。一部の区画を区切って保全のためのデータを集めているところ。とはいえ、もみじのにしきかみのまにまに、と口ずさんでしまったブナ林の紅葉を余計な説明なしに逍遙していただこう。



















山頂へ行かなくてもと思ったが、まあ行ってみよう。
なお、しばらくは伐採作業にかかっている旗立山分岐からブナ林までが危険防止のため立ち入り禁止で時計回りの周遊ルートは使えない。旗立山まで行って林道を戻るか、山頂から来た道を引き返すかのいずれか。遅い時間なので引き返すこととした。
山頂そのものは特筆すべきものはないが、北側の眺望を。

左上に尖る雲早山への縦走路は丸山西の小ピークから急降下して稜線をたどる。快適な尾根沿いのルートだが、途中で踏み跡が不明瞭となる。かつて8時間コースといわれ、それぞれの駐車場に車を停めて二手に分かれて登り始め、縦走路の途中ですれ違うときに車のカギを交換するというのが一般的だった。携帯電話もない時代、遭遇できずに連絡が付かなくなったらどうするのか、などと考えてしまうが、かつてと比べて踏み跡が明瞭になったせいか、ピストンする猛者もいるという。これは体力的に厳しい。ピストンの場合、雲早山側からの接近が容易かもしれない。

雲が湧き起こる南の稜線

雲早山縦走路の降り口(山頂の西側の尾根)へと行くと文字通り絶景が待っている。



返り咲きのシハイスミレ。先日の鷲敷ラインでのスミレ(マンジュリカ)を更新して今年最遅のスミレ。風が吹く冷たい稜線の南側のわずかな日だまりのような場所。

山頂からは元の道を引き返す。斜めの残照を浴びた登山道と周囲の木々が織りなす風景こそ心の栄養となるもの





長閑な時間 太陽の光が滋味あふれる時間帯に言葉や文字は出ない


山麓へ降りてくると車は1台のみ。もうすぐ皆既月食を迎える月が東の空で輝きを増していた。

またね

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