杏里の1987年の作品。
この曲が好きでシングル盤を買っていた。
SURF&TEARSは杏里のアルバムには長い間収録されず、
そのうち新バージョンに変わったが、そちらはなじめない。
(ベストアルバムに収録されているのは1987年版ではないよ)
やはり1987年音源で聞きたいと思っていたら
アルバム「SUMMER FAREWELLS」(これもオリジナルは1987年)が2011年にBlu-spec CD(リマスタリング)されたときにボーナストラックとして初めて収録された。
このアルバムもなつかしい。
若者がサーフィンやディスコを愉しみながら気が向いたら海外へ出かけていた時代の音楽。
(そんな時代もあったな、という懐古調はつまらないのだけれど)

音楽を聴いて元気になりたい人は一度視聴してみたら。
アルバム全編を通して佳曲揃いで、しかもコンセプトが通っているので浸れるよ。
杏里は1987年には2枚のアルバムを発表している、
「創作の泉をかろうじて書き留めてみたのよ」といわんばかりの前のめり&充実感。
つくりモノ感がなくライブ感が横溢している。
時代と作り手と歌い手が一体化しているからだろうね。
それぞれの思いで生きていこうとする若者の背中を押してくれた時代。
歌のなかに個人の心の動きをごくパーソナルに閉じ込められた時代とでも。

このアルバムを聴き通して世界観が身体をあの頃に染めてしまってから
いよいよ待望の曲が始まる。
もともとのオリジナルアルバムには収録されなかった「SURF&TEARS」について書くね。
(何度も書くけど、SURF & TEARSを聴くのなら、アルバム「SUMMER FAREWELLS」(Blu-spec CD)に収録されているバージョンで)

歌の物語はこんな感じ。
10代の頃、サーフィンをしている彼に出会った。
波に乗ることが夢で、その夢を追いかける姿に夢中になった。
彼の夢は彼女の夢、区別する必要ある?
週末の夜明け、天気図を眺めては低気圧がやってくる西をめざしたこともあった。

ふたりの夢がサーフィンを通して一体となった夏の物語。
でも、彼が波乗りをやめた夏、ふたりの恋は終わった。
(恋と憧れと夢と情熱の輪郭が溶け合ったようなふたりだったんだろうね)
夏よ いつまでもふたりを守って♪

彼との夏は色あせることのない永遠の思い出。
それどころか生きる勇気に変えてくれるときのひとしずく。
夏の日の情熱、焦燥、憧れ、切なさを1曲に凝縮しながら音楽は流れる。
そしてその力はどれだけ年月が経とうとも消えず、輝きとなって戻ってくる。

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