侘び寂びという言葉は語りにくい。
簡素というと明るさ、さらに強さも見える気がするが
それに加えて厭世観に宿る現世への批判めいた精神を添えた感がある。
彩色は淡く渋くややもすると苔むした質感で趣味性の高さを誇る嫌みも匂う。
その反面、竹に通じる素のままのまっすぐな語り掛けで筋を通す―。
だから侘び寂びを褒めるのは見下しているような気がする。
うまくいえないけれど。
ここは羽ノ浦町の妙見山の散策路。
春は桜の名所でぼんぼりが全山に明滅する宵の風情と
遠くから気だるく響く鬼の宴のようなうら哀しさも覚えた子どもの頃の思い出。
夜桜見物の酔っ払いが崩れた手拍子で節抜けた調子の謡いだったかもしれず。
長く影を伸ばした午後の遅いひととき、しばし歩いてみた。
来たときはまだ田園に色が残っていた。

尾根のみちを歩く。歩き始めは広い

すでに太陽は傾いて樹間に光をこぼす。

樹間の心象風景 幽玄を感じる


尾根道は南北に横切る峠(阿千田越)を交わる。交点に置かれた描画がコンニチワという

阿千田越は国道55号線ができる前、立江地区と羽ノ浦地区を結ぶ最短路で遍路道だったのだろう
尾根から立江側に下ってみることにした

イノシシのぬた場。夕刻ゆえ活動を始める頃だろう

昼なお暗い谷間の遍路道 地平の彼方に沈もうとするつるべ落としの光が届くはずもなく

帰りがけ、田園には侘び寂びとはまた違う夕刻の淡くかすかな色を漂わせていた。

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