はくちょう座のデネブ、こと座のベガ、わし座のアルタイルを結ぶ天空の三角形を夏の大三角という。中国と日本では天の川を挟んで、織女(織り姫)と牽牛(彦星)が逢瀬を待ちわびる七夕伝説になっている。
星座では見かけの明るさの順番にアルファ、ベータ、ガンマ…と呼ぶ。夏の大三角の星々はそれぞれの星座のアルファ星である。1等星のデネブ(α Cyg)は変光星で1.21から1.29等の明るさを繰り返す。ベガ(α Lyr)は0等星(0.03等)ともっとも明るい。アルタイル(α Aql)は1等星(0.76等)。

この写真では、上から時計回りに、デネブ、ベガ、アルタイルである。大三角の間を流れるのが天の川。これは銀河系の円盤を横から眺めている感覚に近い。左下で銀河が濃く(明るく)なっている。星座本体は沈んでしまったが、射手座方向である。
デネブの近傍(左斜め上)にアメリカ大陸のような赤い星雲が見える。通称北アメリカ星雲(NGC7000)という。夏の大三角を余裕で収めるこのレンズの画角は90度で肉眼では眼球を動かして見ることになる。
ベガは地球の歳差運動(24,000年周期の自転のブレ)により12,000年後には北極星の役割を果たすという。人類がそのときまで生存していたら北極星は随分見つけやすくなる。それには温暖化対策をやり遂げなければならない。隕石が衝突しない幸運も祈るばかりである。
巷は猛暑だが、夏の大三角が天頂を過ぎていくともう秋だなと感じてしまう。
散在流星を見かけたが、写真には写っていなかった。あと半月でペルセウス座流星群である。
(フジX-T2+XF14mmF2.8 R、絞りf3.5、露出25秒、三脚固定、ISO4000、撮影地:徳島市南部)
追記
星夜を眺めたり天体観望を行うのに欠かせないのが星図。
ぼくも誠文堂新光社の全天恒星図、ノートン星図などを使っていたが、
どうしてもチェコの天文台が発刊したスカルナテ・プレソ星図(ベクバル星図ともいう)が見たくて
梅田の丸善まで買いに行ったことがある。当時の価格でも1万円程度したのではと思う。
この星図は銀河が色分けされ、主要な星雲星団と7.75等(だったかな?)までの約4万個の恒星が掲載されていて眺めるだけでも至福のときを過ごせそう・
そのタイトルも、ATLAS OF THE HEAVENS(天空の星々の地図)

プリントされた文字の静かなたたずまい。
1950.0年分点。地球の歳差運動で天の赤道と黄道の交点は動いていく。星図では1950年分点と2000年分点がある。

はくちょう座付近

オリオン座と冬の銀河。オリオンを囲むバーナードループが記されている。Hα線(656.3nmの波長)に感光する103αEやフジクロームR100などでのリバーサルでも映すことができた。理想の画角は85ミリレンズ。このため、ペンタックスSPFではSMCタクマ85mmF1.8,ミノルタX700ではMD85mmF2を風景でもよく使っていた。恒星のスペクトル型や光の波長、ケフェイド型変光星、レーリーリミット、ダークマターとハッブル定数、球面収差、コマ収差などザイデルの5収差、アポクロマートなどの色消し理論などは中学時代の日常の言葉。高校の地学の教科書すらあまりに易しすぎて(勉強せずに100点を取っていた記憶)。

いて座付近の南の銀河面。濃い銀河に無数の星雲星団が浮かぶ星の海。タカハシ10センチ反射赤道儀にオルソ40mmのアイピースで×25の視野で流すと時間の経つのを忘れた。7×50のニコン双眼鏡もよかった。

カシオペア座周辺。右斜め上にペルセウス座の二重星団(NGC 869、NGC 884)がある。このような番号も主要な天体では覚えていた

スカルナテプレソ星図が廃刊になったのはなぜだろう。1990年以降に東欧諸国がたどった苦難の道筋と関係あるのかもしれない。いまは星図もアプリベースで自動導入が内蔵された赤道儀などアマチュアの天体観望にまで自動化が進んでいるが、ファインダーと星図を頼りに淡い小宇宙を導入し、視野を動かしてかすかな光班を瞳孔が捉えた感激は忘れない。
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