2022年07月23日

梅のめぐみ 


親譲りの無鉄砲で子どもの時から損ばかりしている。小学校にいる時分、台所にあった梅の壺を一粒また一粒と食べ続けた。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかもしれぬ。別段深い理由でもない。梅の壺を覗いていたら祖母が冗談に、いくらおまはんでも,そこの梅干しを全部食べることはできまい、と囃し立てたからである。薬をもらって診療所から戻った時、おやじが大きな眼をして梅干し数個食べたぐらいで医者に行く奴があるかと云ったから、この次は全部食べて見せますと答えた。

日本へ外交目的で訪れていた中央アジア王国の王女がお忍びで抜け出して変装のため長い髪を切って日本髪に結い、かわら版記者のぼくが京都を案内しつつ、柴漬けを大原で食べさせたところいたくお気に召されたが、やんごとなきご身分を明かすときが来て記者会見で京都のどこがお気に召されましたか?と聞かれたとき「柴漬け食べたい」と言いかけて「歴史ある古都の営み」と答えられた「柴漬けの休日」とか。

若い家臣2人をお伴に越後の商人の隠居に身をやつし諸国を漫遊しつつ悪をただす「水戸黄梅漫遊記」。道理で光圀さまは「梅里」の号を使っていたわけだ。

かつて梅干しをつくるか梅酒をつくるかは専門に分かれていた。梅干しと梅酒の両方をつくるなどはプロの世界では有り得ないとされた。つまり梅干しは良いが梅酒はダメ、梅酒はおいしいが、梅干しはいまひとつというのが定説であった時代に、梅酒も梅干しもおいしい二刀流ができるようになった。さらに梅をクエン酸あふれる涼菓にしたてたコンポートまでの三刀流が可能となった。それがこの記事である。

まずは鶯宿で梅酒。実は小梅(竜峡)でも使いたかったが時期を逃してしまった。
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次に南高梅で梅干し。本日はお日柄も良く気圧も梅を干すのは1000hPa以上が必要で、それも一定の気圧が続くのが好ましい、現在は1007hPaで明日は1005〜1006の予報なので適切である。塩分濃度は15%と少なめだが、梅をパストリーゼで拭き上げてつけ込むこと、樽や重しも高濃度アルコールで減菌しているのでカビの怖れはない。

紫蘇は良質の部分のみを塩もみして冷凍保管しておいたもので紫蘇付けして2週間少々。
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あまり紫蘇の風味が濃いと梅肉の酸味が弱まるので濃すぎない紫蘇風味に仕上げたい。写真では紫蘇の浸透度に濃淡があって狙い通り。
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最後にコンポート。作り方はプロに教わった。温度計と電気での調理器具がなければつくることは難しい。夜中にじっくりと温度(加熱)と向き合ってうまく仕上がった。プロの出来映えと比べてみたが遜色なかった(作り方教えてもらったので当たり前だけど、作り方と一口に言ってもやはりそこに洞察に基づく試行と創意工夫は必要)。強いて言えば木なりの完熟梅が手に入ったのでもしかしてこちらがよかったかなと思う(腕の差でなく素材の差に過ぎない)。

このコンポートは、砂糖は控えめなので一口入れると、梅のおいしさが直截に来る。生きていてよかったと感じる瞬間。数秒後にクエン酸の酸味が浸透してきて今度は爽快に至る。夏バテ防止の飲み物や食品はあるけれど、これに勝る食べ物はない。嗚呼梅の恵み也。
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posted by 平井 吉信 at 11:00| Comment(0) | 山、川、海、山野草
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