1983年の中森明菜の3枚目のアルバム「ファンタジー〈幻想曲〉」から
「目を閉じて小旅行」がふと聴きたくなった。
いまの時代を感じている心は押しつぶされそうになる。
自分を顧みてもやるべきことがあまりに多いけれど、
それ以上に政治や社会の動きが目を覆いたくなる。
生物の宿命ともいえる他者への攻撃はやむことを知らず、
それでもピントのずれた政治家の発言やら間違った経済の舵取りやら、誰も望まぬ金融政策を続ける中央銀行やら。
地球上では生態系の破壊と温暖化、感染症の蔓延など人間社会の崩壊が加速度的に破滅に近づいていることを感じている。
それでも何も変わらない。
そんなとき80年代の音楽はなんだかほっとする(一部は70年代、90年代を含む)。
音楽が濃密な個人の体験と同化して夢やら焦りやら哀しみを歌ってもそこに明日があるような。
山口百恵の楽曲で好きな曲を3つ挙げるなら「想い出のストロベリーフィールズ」「乙女座宮」「夢先案内人」。
中森明菜では「あなたのポートレート」「Bon Voyage」「目を閉じて小旅行」。
ヒット曲から立ちこめるハレめいた匂いが好きではないのだろうな、
そして短調の楽曲につきまとう不自然な感覚が好きではないのだろうな、と思う。
(コード進行に縛られた音符の動きが作為的に聞こえてしまう)
素のままの魅力を活かせる自然体の楽曲が提供されていたらと思わずにはいられない。
前述の3曲やデビュー曲「スローモーション」もいい。短調なのに不自然さが感じられない。
レコード、CDをずいぶん集めた。ベートーヴェンだけでも数百枚ある。
けれど1枚もないのはビートルズ。
(せめて、青盤、赤盤、サージェントぐらいは持っていてもいいのだろうけど)
学生の頃、ぼくの周囲も夢中になっていた。
「プリーズ・プリ−ズ・ミー」には新しい時代、まぶしさを感じて悪くないと思ったけれど
ABBAのダンシングクイーンのほうがより好きだった。
明菜で挙げた楽曲は抜けが良くて身体が勝手に動き出す感じ。
16歳の中森明菜が夢見ただろう風景はこんな抜けるような空と海かもしれないと思ったので。



撮影したのは80年代ではないけれど、季節はちょうど今頃。
場所は、土佐佐賀から大方浮鞭あたりの渚。
(ニコンらしい空の色だね)
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