季節がどんどん進み行く晩秋だから「冬景色」を置かなくては。
さ霧消ゆる湊江(みなとえ)の
舟に白し、朝の霜。
ただ水鳥の声はして
いまだ覚めず、岸の家。
烏(からす)啼(な)きて木に高く、
人は畑(はた)に麦を踏む。
げに小春日ののどけしや。
かへり咲(ざき)の花も見ゆ。
嵐吹きて雲は落ち、
時雨(しぐれ)降りて日は暮れぬ。
若(も)し灯火(ともしび)の漏れ来(こ)ずば、
それと分かじ、野辺(のべ)の里。
(注/「冬景色」は作詞作曲不祥の文部省唱歌で著作権は消滅)
CDはNHK東京放送児童合唱団で聴いている。
ただ音楽を信じて声を合わす少年少女の澄んだ音世界。
小学校の音楽で習った唱歌だけど冬景色の歌詞は文語調で小学生には意味がわからない。
それでもなんとなく情景が思い浮かんだ。教科書に挿絵があったからかもしれない。
葦の生えた入江、川の河口なのだろう。
(歌詞には表現がないが、入江、朝霧から葦原を感じる。こんなところはエビが採れる。もしかしたらニホンカワウソもいたかもしれない)
張り詰めた朝はじーんと寒気が縛るようで空気が動かない。
そんな印象を子どもながらに持った歌。
日本の漁村周辺ならどこでも当てはまりそうな風景。
葦原が残る入江に霧が立ちこめるという情景は詩的なまでに美しい。
詩と楽曲が一体となって初冬の人々の暮らしを描いているけれど
眠りから覚めない朝、仕事に励む昼、嵐の一日のあと、夜の帳を照らす灯火。
短いようで長い人生をまっとうしようとしている人たちの賛歌とも取れる。
四国の風景は必ずしも歌の世界観と合致しないかもしれないけれど晩秋の風を感じたので置いてみた。




追記
もし中古でも手に入るようならぜひご入手を。
「早春賦−珠玉の唱歌名曲集」/NHK東京放送児童合唱団
(メーカー:キングレコード、発売:1988年5月5日、品番:K30X-244)
収録曲はこちらから
→ 童謡、唱歌で 夢は山野を駆けめぐる
春夏秋冬の唱歌を季節ごとに並べているので春から聞き始めて冬になって
また春に戻ってくる歓びを歌で感じる。
合唱団の実力あってのことではあるが、ソロと合唱を適宜織り交ぜている。合唱にありがちな手練手管はなく、楽曲の魅力に静かに浸ることができる。合唱だからビブラートのない透明感のある再現(=作為感がない)。一部のソロでは歌の上手な女の子などが少しビブラートをかけて歌い上げるがそれも楽曲の魅力を高めている。著名な歌手が朗々と歌い上げたり(歌い手の体臭が立ちこめて詩の世界が崩れる)、語り掛ける(歌の世界が個人体験になって固定化矮小化してしまう)のではなく演奏者の個性を離れて楽曲を聞きこみたいなら何度聴いても飽きることのない宝もののような名盤CD。
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