2021年11月20日

木枯らし途絶えてさゆる空に部分月食の星夜


冬の星座、覚えていますか?
おうし座、オリオン座、おおいぬ座…、
冬の銀河と冬の大三角、
南極老人星カノープス(りゅうこつ座α星)。

カノープスは全天で2番目に明るい恒星だが
真冬の20時頃に南中するも高度が低くすぐに沈んでしまう。
ゆえにこの星が見えたら長生きできるという。
(カノープスを見つけた子どものぼくは家族全員を外へ連れだして見せた)

四国東南部では老人星を見つけるのはむずかしくない。
(緯度が小さくなるほど、つまり北半球では南へ下るほどカノープスの高度が上がるのだ)
南中する時刻と高度を知っていて、雲が懸からなければ毎晩のように見ることができる。

高知県からは南十字星のもっとも北に位置する星さえ見えるというが、星座のかたちなくして同定するのは困難である。

冬の星座、文部省唱歌。
ものみないこえるしじまのなかに きらめき揺れつつ星座はめぐる。


へイスの楽曲に堀内敬三の名訳詞がついたもの。
日本語としての美しさが冬の星々のように結晶化して
文部省唱歌のなかでももっとも詩的な楽曲のひとつ。

そんな情景を撮れないかと、とくしま植物園に来たらこんな風景。
今宵の天文現象の舞台となる星夜が想像されてしびれてしまったのだ。
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11月19日の部分日食で皆既に近づいた時間帯に撮影した樹間の星夜
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私立中学に通っていた頃のこと。
大松川沿いの真っ暗の道をたどる帰路に「冬の星座」を口ずさみながら木枯らしを温めるように自転車を漕いでいた。
学校には五藤光学の口径20センチ2枚玉アクロマートレンズのドイツ式赤道儀を備えた天文台があった。
遅いときの帰宅は20時を過ぎていたと記憶している。
疾走する風を受けて鼻水が止まらなかったが、身体の奥は温もりを感じていた。
家に戻れば夕ご飯と風呂に入れると思うことがペダルを漕ぐ力。
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ほとんど皆既(ほぼほぼ皆既とはいわないで)となったこの日の月を撮影してみた。
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(地平線付近の光跡はしし座流星群ではなく飛行機)

宵が進むうちにすばるを従えて少しずつ高度を上げてきた。
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オリオン舞い立ちすばるはさざめく


清少納言も「星はすばる ひこぼし ゆふづつ…」と讃えた(すばる、彦星=わし座のアルタイル、宵の明星が趣がある)。
だからぼくはすばりすと(スバリスト)である。
(主義を意味する-istは使いたくない言葉だが、唯一の例外として自分に用いている)

部分食が極大に達すると背後の星々が光輝を強め、
すばることM45、プレアデス星団が月の左に並んだ。
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追記
昨日から五輪真弓が心のなかで奏でる。
アルバム「恋人よ」。
でもぼくはあのヒットシングルではなく、それ以外のアルバム収録曲が好きだ。
日本を代表する歌い手だよね。




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