梅雨の晴れ間は田んぼとカエルを思う。
できれば流れる雲が水に映り
あぜ道を子どもが駈けていく。
バス亭には置き自転車、そこに誰が掛けたか傘の忘れ物。
そんな斜めの光を背に前を見れば虹。
スキップの足跡がかき鳴らすアルペジオのよう。
誰でも里山には幻想というか印象を持っている。
梅雨の晴れ間には胸の奥の里山が疼くとでも。
小松島市南部は立江川の源流域で菌床シイタケの一大産地となっている。
県内でヤマモモの発祥の地もここ(実はうちの親戚である)。
親戚宅の前には沢があって木陰をつくっている。
半ズボンをめくって入っていくと思いのほか水が冷たい。
小川がこれほど澄んでいるとは子ども心にも思わなかった。
おそらくウナギ(腹の黄色い)やモクズガニがたくさんいるだろう。
ぼくがときどき立ち寄る友人宅もこの地区にある。
かつては山懐の一軒家で五右衛門風呂があり
丘から立江盆地を見下ろしながら
音楽を聴いたものだ。
→ 朋あり近所より来る 令和の宴2019年夏
→ 友あり 近所より来たる。山、食事、音楽の休日
→ 元日のパーティーは田園交響詩、女もすなる…男もしてみんとて
でもきょうはあじさいのあぜ道を見に行くのだ。
櫛渕あじさいロードと名付けられた里山めぐり。
起点は櫛渕町の櫛渕八幡神社。
巨大な2本の木が鎮座している(フウとクス)。


銅像を見て思いだした。ここは喜田貞吉博士の故郷でもあったのだ。
ぼくは明日香村が好きで中学の頃から通っている。
古代と現代が入り交じる里山を自転車で走り抜ける時間は人生の収穫期のようだ。
その明日香の地で石舞台古墳を蘇我馬子の陵墓と比定したのが博士でなかったか。
そういえば明日香村と少し雰囲気が似ている気がする。
立江川源流部の開けた入江状の地形に展開するのが小松島市櫛淵町である。
ここはマムシが多い。夕方散歩するときなどはご注意を。
私の知人は室内にマムシが入ってきて3日目にようやく見つかったことがあった。
小さな子どもがいるなかで落ち着いて寝られなかったことだろう。
参拝を兼ねてクルマを櫛渕八幡神社に置かせてもらって歩き出そうとすると
案内看板がある。

ひとまたぎできそうな立江川の源流を渡って新たに整備されたバイパス沿いにあじさいが並ぶのだがいったん道を渡って山裾をめざす。
田んぼにはオタマジャクシが元気に泳ぐ。

田の畦で風に揺れるのはランの仲間のネジバナ。


南を見やると羽ノ浦町との境界をなす低山があり、
その北面に広がる水田
そして山から流れる沢、
そんな農道に沿ってあじさいが咲く里山。













日の光と田を吹き抜ける風に吹かれていると
ぼくは21世紀(2021年コロナ下)を忘れてしまいそうだ。
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宮ノ内出身です。
子どものころはなんとも思っていなかったですが、櫛渕には不思議な魅力があると、大人になってから思います(地元贔屓目も有り)。
記事を読んで(櫛渕って田舎だし人少ないし何も無いはずなのになんか良いのよね)とあらためて感じました。
素敵な記録です。
立江・櫛渕地区は、都市近郊でありながら里山の風情を残し、隠れ里のような雰囲気があります。しかも集落のまとまりがよく、新しいことに挑戦する気風があるように感じています。
すぐに幹線道路や市街地にも出られるのに適度の囲まれ感があるのが良いですね。
ぼくのイメージは、せみしぐれの初夏、沢沿いの小径を歩く子ども時代です。
ほんとうに大切なものは目に見えないと、サンテグジュペリの「星の王子さま」はいうように、隠されていないのに気付かないことのなかに真実があるように思います。
櫛渕はそんな土地ではないでしょうか。