2020年09月20日

穴吹川の土木資産 土場の立堰という湾曲斜め堰


近頃はダムが好きでダムめぐりをする人たちがいるという。
(ぼくはダムはあまり見る気がしない。水と物質の循環を遮断する川の墓場のように見えるから。ただしそれをつくる人々の苦労に思いを馳せている)

そこで穴吹川にあるのが穴吹の中心市街地の上手にある「土場の立堰」(どばのたつぜき)。
まずはGoogleマップの衛星写真から。
https://www.google.com/maps/@34.041418,134.1660142,836m/data=!3m1!1e3

堰というと、川をせき止めて水位を上げて分流(用水など)するのが目的だが
この堰は用水への分流は細い流れがあるだけで
これだけの堰が利水のためだけにあるとは考えにくい。

何より目を引くのが川に対して直角に置かれておらず
むしろ川の流れを邪魔しないように縦に長く置かれている。
それも川の流れに逆らわず併走するかのようだ。
吉野川の第十堰は斜め堰の親分のような存在だが
洪水時に上流のせき上げを少なくすること、
水の抵抗を分散するため堰が破損しにくくなることなどが利点。
(斜めに置くと同じ水量=水圧をより分散して受けられるので破損しにくくなる)
ところがこれだけ縦に長く、しかも中央がやや曲がっている堰は見たことがない。
(湾曲斜め堰という)
これが観光資源にならないのが不思議なぐらい。

クルマは近くには停められないが、下流には広い場所があってそこに停められる。
穴吹川下流のこの辺りは夏には海水浴みたいに混み合う場所なので。
そこから歩いてもほんの数分。川を眺めながら近づいていく。
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夕方に再び堰に近づいた
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魚道は遡上しやすそうだ。魚道はここ(最下流)と最上流の2箇所にある。
強い流れを感じた遡上者は下流側から登り、
川の流れをたどっていく遡上者は上流の魚道から上る。
水量によってはすべてが遡上可能である。
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堰直下流から見上げる
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斜め堰は水利&水理で有利な点があるが
弱点は直下流の水が当たる岸辺の洗掘という現象。
堤防の根が掘れていくので大水時に堤防決壊の怖れがあるという。
しかし大水のときは堰体で直角に曲げられずにまっすぐ進むはず。
それにこの堰を見ると堰で曲げられた水が当たる岸辺がほとんど掘れていない。
堰のもっとも上流部には階段状の水路があって
この水が岸に当たる流れを妨げることで洗掘を防いでいるのではと推察。
やはり先人の知恵である。

ところで那賀川中流の吉井大西堰(十八女堰)はどうだろう? 湾曲斜め堰といえるのか?
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近代治水は山に降った雨を一刻も早く海に流すために直線化されてきた。
しかしこのことはピーク時の水量が高くなることで
一気に水が出て堤防決壊の怖れが高まるという副作用がある。

むしろあふれることを前提にしながら
棚田や遊水地などで水を遊ばせて時間軸で洪水を吸収しつつ
都市政策として人が住まないようにエリア設定を行う、
災害が起こったときの訓練を行う、
被害が生じたときは保険で補償するなど
ソフトな治水で総合的に対応していく時代になっている。
そんな時代だからこそ持続可能な治水を近代治水以前に学ぶことが必要。
高知県の方は野中兼山の残した資産があちこちにあるので楽しみ。
松田川の河戸堰のように可動堰に置き換えられる前に。

SDGsなどというまえに
縄文時代の持続可能な社会のあり方や
伝統工法による治水利水のしくみがあることに思いを馳せて未来につなげていきたい。
人と川の関係性の再構築のヒントをこの堰は教えてくれている。
タグ:穴吹川
posted by 平井 吉信 at 18:15| Comment(0) | 山、川、海、山野草
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