2020年06月27日

四国の茶の世界


急傾斜地で籠を手に女たちが斜面を移動する中国の里山、
その背後では薄墨で描かれた峨々たる山峡に霧立ちこめる。
そんな印象のある中国茶の世界。

自宅では日本茶は十種類ぐらいを常備している。
食事の茶といっても、煮物を食べる茶とさしみを食べる茶、茶漬けの茶は違う、
もしくはそのときに身体(心)が欲するもの、ということになろう。
菓子といっても干菓子と合わせる茶、羊羹と合わせる、団子と合わせる、フレーバーチョコと合わせる茶とショコラと合わせるのでは茶も違うだろう。
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日本の茶のなかで気に入っているのは四国の茶である。
まずは相生の晩茶。
これは生まれたときから飲んでいるので食事のときの儀式のようなもの。
生産者で風味が違うし年によって、また季節の最初と終わりでも違う。
上勝の晩茶も同様だ。

菓子と合わせるとき、茶がゆをつくるとき、茶飯を炊くときには
りぐり山茶(高知県いの町の仁淀川支流の山域でつくる)を使う。
これは山茶(自生している茶)を使うもので
この地域では釜煎り茶が常用茶である。
そのなかでもりぐり山茶(国友農園)の世界観は日常のなかのハレを感じさせるもの。

吉野川上流の大歩危小歩危の支流で採れるのは大歩危茶(曲風園)。
まろやかな風味が特徴。標高が高いのと茶畑が小規模分散しているので
おそらく農薬は使わない。
ここの茶は茶に無理をさせず自然ににじみ出る旨味のやさしさ、水の如しの茶。
茶の存在を消しながら茶の魅力を訴求する。
生産量が限られているので道の駅ラピス大歩危でないと入手できない。

同じ山域でも愛媛県(旧新宮村)に入ると別の吉野川支流の山域で茶葉(藪北)を生産する。
なかでも脇製茶場は茶の風味を凝縮し香り立つもので大歩危茶とは性格が異なる。
静岡の茶が南国の山間部でつくられたらこんな茶になるのでは。

徳島の最南端には寒茶がある。
わざわざ一年でもっとも寒い時季に摘む茶でつくる。
普段のみの茶であるが、これをやさしい味わいの茶に変えた人がいる。
→ 冬に摘む南国のお茶の世界がほのぼのと。宍喰の寒茶物語
→ かけがえのないこと 宍喰の寒茶のある暮らし そして甘みと旨味が溶け込んだ「寒茶物語」

吉野川流域(支流)、仁淀川流域(支流)、四万十川上流域、那賀川、勝浦川流域など良質の川に面した斜面で育つのが四国茶の特徴である。

食卓には四国産だけでなく、知覧茶、八女茶、出雲茶など西日本の茶がずらりと並ぶ。
淹れ立ての茶を香りとともにすするとき、単なる水分の補給ではない心の癒しを感じる。

→ 四国は茶所 緑茶、番茶(乳酸発酵)、釜入り茶。太平洋高気圧で梅を干す


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posted by 平井 吉信 at 11:18| Comment(0) | 山、川、海、山野草
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