アルコールが消えた
新型コロナウイルスの破壊に一定濃度のアルコールが有効とのことで
どこでもアルコールの入手が難しくなっている。
「アルコール」と書いてあればエタノール(工業用)であろうと燃料用であろうと
ウェットティッシュであろうと片っ端から店頭から消えている。
楽天などのインターネット通販ではアルコールのジェルが法外な価格(1本5千円程度)で
「※ご納得頂けない方はご購入をご遠慮願います。」などの表示で堂々と販売されている。
何が何でもアルコールでなければ新型コロナウイルスを減菌できないと思い込む消費者心理につけ込む悪徳業者である。しかもこの製品、調べてみると小売価格が1650円でアルコール濃度が46%程度にとどまっている。
ぼったくり通販にはくれぐれも手を出さないよう。
現在でもスーパーでときどき並んでいる商品である。
国は布製マスクの配布を決めたというが
台湾では2月からマスクの国内管理を国がITを用いて行うことで
全国民にマスクを配布して国民の不安を払拭しているし買い占めも転売も起こっていない。
蔡英文総統の支持がうなぎのぼりである。
アルコールを入れる容器も不足している
アルコールの需要がひっ迫しているということは精製量の問題だけでなく
容器の生産が追いつかずボトルネックとなっているからである。
ご存知のように高濃度のアルコールを入れられる容器は限られている。
ぼくのテストでもPET容器は35度程度のアルコール濃度なら短期間では影響はなさそうだが
70%を越えるパストリーゼ77を入れたら1日で破裂してしまった。
アルコールに変わる選択肢を探す
消毒(この言葉は変に思う。除菌もそぐわない。減菌が正しいのだろう)のためにアルコールが不可欠だが、液体も容器も生産が追いつかない。
ならば、以下のものを探せば良い。
@アルコール以外の物質で安全に減菌ができるもの
A現時点でも入手が容易であるもの
B廉価であること
C容器に依存しないもの
D手荒れしにくいもの
調べてみるとそれに該当しそうなものがあった。
それは、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを無機塩で調整した粉末を水に溶かして弱酸性次亜塩素酸水をつくる粉末の活用である(商品名を書かないのは各社から販売されているため)。
塩素系漂白剤との違い
似た名称の次亜塩素酸ナトリウムはハイターなど塩素系漂白剤でおなじみである。ノロウイルスなどにも効果があるため罹患者が使用したトイレの清掃やふきんの減菌で活用されている。
希釈してドアノブなどにも用いることができるが、金属を変質させる怖れがあり拭き取りを要するなど取り扱いに注意が必要とされている。しかし次亜塩素酸水はこれと違うのである。
弱酸性次亜塩素酸水とは2009年に食品添加物に指定されたもので人体への安全性は確保されている。
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/dl/s0819-8m.pdf(厚生労働省)
アルコールで手指を減菌する場合、手荒れが気になる方もいらっしゃるだろう。
塩素系漂白剤は希釈しても手につけることは避けた方がいいが、
次亜塩素酸水は手に付けても皮膚には影響がない。
ただし行き過ぎた除菌は皮膚の善玉菌を殺傷しかねない。
(除菌を気にするあまり過度の使用による弊害、潔癖症になってしまっては元も子もない)。
手すりやドアノブなどに触れた直後に減菌できれば感染のリスクは減らせるだろう。
つまり外出したときに迅速かつ的確に手指の減菌を行えることが感染防止に役立つ。
家庭用であっても潤沢に使えないと減菌が徹底できないことがあるだろう。
廉価で入手しやすいことは不可欠である。
粉末は入手が容易で長期保存も可能
次亜塩素酸水の素となる粉末は意外に高くない。
またボトルに入れて販売しないので現在も流通に出回っている。
ぼくも地元の家電量販店の売り場で購入したが、
8袋(1袋で500ccの弱酸性次亜塩素酸水ができる)入りで1000円少々で買える。
ドラッグストアなどにも幅広く在庫されていて4月時点でも容易に入手できるはずだ。
液体(次亜塩素酸水)では日ごとに効果が落ちていくが、
粉末では長期間の保存が可能で災害時の感染予防などの備蓄にも適する。
粉末を溶かすのが面倒だからと次亜塩素酸水(液体)を購入する場合は
製造してからの経過日数(鮮度)と効能がある期間に使い切れるかどうかの吟味が必要。
また、空間除菌という効能には根拠がないことに注意。
空気清浄機(○○イオンなど)、加湿器(次亜塩素酸水使用)、ペンダントなどで空間除菌をうたっていても効果がないばかりか、場合によっては人体に悪影響がある場合がある。仮に加湿器からの蒸気に除菌効果があるとしてもそれは加湿器本体から数十センチ程度の範囲ではないか。新型コロナウイルス患者が咳をしても飛沫は2メートル程度とのこと。加湿器から重い水蒸気を発散させても近距離しか届かないはず(その証拠に加湿器は置いてある周辺が湿ったり濡れたりしている)。ペンダントに至っては詐欺まがいの製品。人々の不安につけ込む商売はやめよう。
容器の確保はどうする?
問題は粉末を購入するはいいが、容器をどのように確保するか。
弱酸性次亜塩素酸水は光を遮断する必要があることので
中味の見えない遮光ボトルが必要だ。
そこで次亜塩素酸水をスプレー容器で販売しているメーカーの製品を調べてみた
(ノロウイルスが流行したときに買ったもので容器は洗って保管していたもの)。

手元にあった次亜塩素酸水のスプレー容器を見てみよう。
販売元は商社や卸ではなく次亜塩素酸水の製造元で直販で流通を行っている。
次亜塩素酸水は高い除菌力と安全性を兼ね備えているが、
前述のように液体では時間とともに効力が落ちていく難点があり、備蓄していても意味がない。
このメーカーでは液体は自社生産をしているが、メーカーにとっても容器の入手難があるものと推察する。
それでも数日の品切れはあるが、インターネット通販で入手できる。
家庭用(400〜500ml用)と外出用(50ml)の確保
容器にはPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)とある。

まずはこの液体(中味は調整した次亜塩素酸水)を買って
中味をそのままつかってみる。使い切ったら次亜塩素酸水用のボトルとして再利用する。
500mlと50mlの容器がある。
特に市場から消えているのは50ml用の容器である。
ここでは4本(次亜塩素酸水塩素水入り)が2千円前後で購入できるが、
容器単独で買ってもその程度の価格で入手するのは難しいのではないか。
50ml用 https://amzn.to/2R0IZH9
500ml用 https://amzn.to/2UTYORh
(ただし500ml 4本の次亜塩素酸水を数ヶ月で使い切れるかどうか確認をお願いします)
既存のボトルの活用
無印良品のアルカリ電解水クリーナー (400ml)も利用できる。
https://www.muji.com/jp/ja/store/cmdty/detail/4550182554113
投稿時点(2020.4.2)で店舗も通販も在庫があるようだ。
中味入りと容器のみの2つの形態で販売されている。
ぼくは容器のみを店舗で購入した。
用途は自作の虫除けスプレーの容器として使うため。
ハッカ油+アルコール+精製水でつくるのだが、作り方は簡単。
ただしPET容器には入れられない。
自宅では蚊除けとして(ハッカの清涼感があるのも良し)、
山ではブヨなどの虫を除ける用途で使っている。
皮膚につけても安心で廉価につくることができる。
無印良品のボトルの表示は以下のとおり。

フマキラーはスーパーで見かける製品だが、これも店頭から消えている。
フマキラーによれば新型コロナウイルスの減菌に一定の効果があるとリリースしている。
https://www.fumakilla.co.jp/new/3720/
https://www.fumakilla.co.jp/new/3725/
上記のWebの情報からは製品に記載されていないアルコール濃度も判明。
・フマキラー キッチン用アルコール除菌スプレー(アルコール濃度49v/v%)
・アルコール除菌プレミアム ウイルシャット(アルコール濃度63v/v%)
・ウイルシャット ノンアルコール除菌プレミアム(アルコール不使用)
上記の情報が正しいならば、
アルコール濃度50%でも効果があること、
ノンアルコールも同等の除菌効果があったとしている。
また、手指用とはうたっていないが、手指にかかることは想定していると書かれているので
手指用に使っても差し支えないと判断できる。
フマキラーの容器を使い終わったあと、
弱酸性次亜塩素酸水を入れておけるかどうかだが、
容器の材質については現物にもWebにも記載がない。
しかし容器は遮光性があること、
50%濃度のアルコールに耐えられる容器であることから
弱酸性次亜塩素酸水には問題がないと判断できるのではないか
(くれぐれも容器は捨てずに洗浄して再利用してください)。
手指だけではない用途
政府が布マスクを2枚配布する方針を発表した。
効果は限定的であることに加えて洗浄のノウハウが必要なことから
かえって体調不良につながらないかと懸念がある。
布マスクの再利用については専門家の助言を守って運用してください。
その際に洗い終わって乾いた布マスクの表裏両面に
次亜塩素酸水のスプレーを塗布することは有効ではないかと個人的には考えている
不織布のマスクを減菌して洗うのは難しいと思われる。
もみ洗いができないので浸け洗い、そして乾燥させるのだが
これには時間がかかる。室内干しでは雑菌が増殖する怖れがある。
だから洗わずにマスクの両面に次亜塩素酸水を噴射して天日もしくはドライヤーの熱風で乾かす。
これで数回は使えると思うのだが、いかがだろう?
(自己判断でお願いします。専門家の見解等が判明すればブログ記事を修正することがあります)。
追記
布マスクの下にティッシュやキッチンペーパーを挟む布紙ハイブリッド構造がウイルスの透過を妨げるとの情報があります。一定の根拠があると判断されます(少なくとも弊害はないでしょう)。一日に数回挟んでいる紙を取り替えるのは感染予防に効果がありそうです。
最後に2つのお願いがあります。
次亜塩素酸水(ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを水に溶かしたもの)は
新型コロナウイルスへの減菌効果についての検証はなされていません。
このことを理解したうえで既存ウイルスへの反応などから各自が判断してください。
新型コロナウイルス感染症への対応は人類全体の叡智と良心で当たらなければなりません。
また、不要な買い占め、転売は厳に慎んでください。
〔参考文献〕
新型コロナウイルスに対する次亜塩素酸水の有効性について((一財)機能水研究振興財団 )
http://www.fwf.or.jp/data_files/view/1707/mode:inline
亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの有機物存在下における殺菌効果及びウイルス不活性効果(論文)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsei/31/3/31_15-053/_pdf
新型コロナ 消毒・除菌ニーズ 対応待ったなし(化学工業日報Web記事)
https://www.chemicaldaily.co.jp/%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%80%80%E6%B6%88%E6%AF%92%E3%83%BB%E9%99%A4%E8%8F%8C%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%80%80%E5%AF%BE%E5%BF%9C%E5%BE%85%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%AA%E3%81%97-2/
次亜塩素酸水 手指消毒の有効性は「未確認」(2020年4月10日、毎日新聞記事)
https://mainichi.jp/articles/20200410/k00/00m/040/175000c
追記(2020年4月18日)
経済産業省は、電気分解で生成される次亜塩素酸水について
手指の消毒には効果がないとしていた当初の見解を修正。
評価を×から△とした。
「検証対象となる物資の選定について」
新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価に関する検討委員会 事務局(ナイト・経済産業省)
https://www.nite.go.jp/data/000108034.pdf
効果が持続する時間が短いとされるが
それこそが次亜塩素酸水の利点と考えている。
現在不足しているアルコールの用途のうち、
かなりの部分をコストが安く入手しやすい次亜塩素酸水が賄うことができれば
それが社会的に意義があることと考える。
手指に関しても持続時間が短いことは皮膚への影響が少ない。
(アルコールが手荒れしやすいのは皮脂を除去するため)
その代わり、費用が安いのでたっぷりと使えば良い。
減菌すれば水に戻る。
ドアノブなど汚れた箇所に触れたらまた使用すれば良いだけ。
杓子定規の基準ではなく用途を見極めれば有効との事例だろう。
次亜塩素酸水については
メーカーの品質管理や考え方にばらつきがある可能性があるかもしれない。
信頼できるメーカーの粉末を水に溶いて早めに使い切るか
鮮度の高い次亜塩素酸水を小ロットで購入して回していくか
電解水生成装置で次亜塩素酸水を生成して早めに使い切るなどの運用ができれば
アルコール生成と併せてコロナ対策に貢献するのではないかと考える。
追記(2020.4.17)
アルコールを含む各製品(商品名)のウイルス不活性効果の検証結果が発表されました。
「医薬部外品および雑貨の新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)不活化効果について」
タグ:マスク 新型コロナウイルス対策
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