どこまでも果てを知らない 空の谷間にこだまする…
熱を出していたのだろう。
子どもの頃にぼんやりとした意識に吸い込まれていく歌があった。
朽ちていく黄昏感漂う世界に朗々と響く歌声。
誰が歌っているのか知らない(男性歌手だと思った)。
おとなになってわかったその曲は五輪真弓の「落日のテーマ」。
Amazonプライムで見つけて聞いてみたが
何かあの頃の記憶と違うような気がする。
久しぶりに通りかかった第十堰の北岸に夕暮れが訪れる。

住民投票に至る数年間はここが徳島でもっとも光が当たった場所。
著名人、政治家、県民が訪れてはマスコミの取材がなされた。
ある夜、月の音楽会と称して演奏会があった。

エストラーダ率いる川竹道夫さんは、
いまや若いギター界のプリンス、徳永真一郎さんの師匠。
コンサートはいつしか河原の草に腰を下ろし
焚き火を眺めながら知らぬ者同士が酒を酌み交わす時間になっていた。
堰本体を透過する水のため堰直下流の水は澄んでいる。
(それは干潮のときだけ。満潮時は海の水が14km上流のこの地点まで到達する)

そこはシジミなど魚介の宝庫であり
子どもがハゼ釣りなどをして楽しんでいた。

第十堰は、上堰(かみぜき)と下堰(しもぜき)の二段構えで流れに斜めに置かれることで
水流の抵抗を減らすとともに分流に配慮した構造となっている。
上堰は青石を積んだ箇所があって
大水で堆砂が除かれると思いがけず美しい堰の姿が現れる。


下堰は昭和30年代にコンクリートで補強されているが老朽化しており、
漏水なのかパイピングなのかはわからないが
水が漏れている箇所がある。

当時誰が言い出したか、だいじゅう=大事YOUという洒落でカップルが訪れていた

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☆、。 ・*'★ .。 ・':....*.:'☆ .。・:'*・':'・★
ところが久しぶりに訪れた第十の堰の北岸は
帰化植物が生い茂るジャングルと化していた。



かつて音楽会が開かれた場所がどこなのかもわからない。
車の幅すれすれの草をすり抜けて
ようやく堰の間際にたどりついた。

それでも人々で賑わった往時と変わることなく
鳥たちの営みが見られる。


誰もいない堰に落日が迫ると、
子どもの頃、熱にうなされながら聞いたあの曲が聞こえてきた。
どこまでも果てを知らない 空の谷間にこだまする…
いや、聴いているのではなく自分が歌っていた。

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