すだちには酸味だけでない独特のえぐみがあり
さわやかな酸味で押し切るレモン果汁などとの違いがある。
個性が強いはずなのだが
食材にかけられたとき、このすだちの風味が足し算にならずに
引き算として捉えられるところに特徴があると思う。
引き算とは、素材の余分な脂分や冗長な雑味を削ってくれる感覚。
もちろん、すだちをかけることは本来は足し算なので
特有の酸味が乗ってくる。
その相互作用が素材や料理を活かして食が進むように思う。
徳島ですだちといえば(価格面では)高級食材ではない。
各家庭でふんだんに使われている。
なにせ生まれたときから初秋の食卓に載っとうけん。
ゆこうという香酸柑橘についてはこのブログで取り上げた。
冬の風物詩としてぼくは毎日ゆこう(果実)を絞って蜂蜜の湯割で飲んでいる。
これ以上にほっとする飲み物がこの世にあるとは思えない。
http://soratoumi2.sblo.jp/article/185115564.html
http://soratoumi2.sblo.jp/article/181807058.html
そのゆこうに高い整腸作用、抗菌作用があることが徳島大学の研究で判明した。
それはユズなどの他の香酸柑橘と比較してもである。
すだち、ゆず、ゆこうが徳島の香酸柑橘の三姉妹であるが
すだちに従姉妹が現れた。
徳島県が開発したすだち徳島3X−1号という品種で
種が少なく果汁が多いのが特徴だが、繊細な性格で栽培に手間が掛かる。
県内でも佐那河内の一部の生産者しか栽培していない品種らしい。
名前を「さなみどり」という。
数年前にさなみどりに出会ったときのときめき(驚き)は忘れない。
すだちと見た目は同じ大きさだが、どこまでもエンドレスで絞り出される果汁の豊かさ、
そしてその鮮烈な酸味が天に向かってどこまでも伸びていく。
豊かな潤いとコクに酸味を重ねて濁らない絵の具としかいいようがない。
(すだちにゆこうの豊潤かつ鮮烈な酸味をブレンドしたような)。

実際に豆腐をいただくとき、醤油とすだちをかければ
ほかに何も要らないというごちそう。ほんとうに要らない。
番茶とご飯と豆腐+さなみどりだけで食事は完結。
(北大路魯山人の満足感とでもいおうか)。
なお、ここでの豆腐はさなみどりを活かせるものが、
豆腐も活かせるものとなる。
具体的な銘柄はあえてひとつだけ。
「北海道産とよまさり美味しいとうふ絹ごし」
https://www.satonoyuki.co.jp/lineup/416/
県内はもとより県外にも豆乳系の濃厚豆腐がある。
それはそれでひとつの世界をかたちづくるけれど、
濃厚というわかりやすさでぐいぐい押してくるが
それが仇となって毎日食べると飽きてしまう。
(なぜか、さなみどりとも合わないのだ)
おいしくて毎日食べられるというと
これまで食べた豆腐では上記が抜けている。
(社内に豆腐の目利きがいるのではないか)
封を切って皿に落とし、鰹節やらさなみどりやらをそのときの気分で振りかけて
自家製梅干しも添えてご飯とともに口へ運ぶひとときが幸福感といわずして何?
さなみどりと最高の相性と思ったのが
「すだち鮎」との掛け合わせ。
天然アユの芳香をはからずしてさなみどりが補ってくれ
すだちアユの節度ある旨味にブレーキをかけることなく
相乗効果で口福につなげる黄金の組み合わせ。
さなみどりの大仲さん、すだち鮎の岩崎さん、
どちらの生産者とも面識はないが
この二つを組み合わせたら徳島の特産品として
個性が尖りながらも豊潤な徳島の食を伝えられるのではないか。
すだち鮎(この写真のすだちがさなみどりである)
http://soratoumi2.sblo.jp/article/186557302.html
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