2019年05月12日

横瀬立川から恐竜の里へと入る 往時の里山と近未来のシナリオ(勝浦町立川)


新緑に覆われる勝浦川はいい。
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(仁淀川のようにも見える。徳島市飯谷町周辺。勝浦川では最下流の屈曲点)

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(長柱潜水橋から)

でもかつての流れを知るものとしては
いまの勝浦川は一抹の寂しさを覚える。
中学時代は最下流の江田で通学の途中で毎日泳いでいた。
だから身体が水を覚えている。

水量が少なく淀み気味で透明度が下がっている。
河原に草木が増えた。
河床の苔の質が低下。
おそらく水質評価のデータ=生物化学的酸素要求量や溶存酸素量など=には出ないが
生物が感じる川の劣化はここ半世紀で進んでいる。
この変化は正木ダムができて数年後からだろう。

ダムの洪水調節機能で水が出なくなると川は荒れていく。
洪水調節といってもほとんどの場合、
洪水は社会生活に影響を与えることなく
適度な出水は河川の生態系の回復の一助となっている。

かつて勝浦川が好きな人はこう言っていた。
「横瀬立川のアユが日本一」と。
(自称日本一の鮎は全国に数えきれず。親父がこう言うのは谷崎鱗海さんがいたからだ)

勝浦町横瀬地区(棚野)は勝浦川の屈曲点。
ここで勝浦川は東流から北流へそして再び東流する。
最初の屈曲点の少し上流に支流の立川(たづかわ)が流れ込む。
上勝町福川からここまでは勝浦川の秘境ともいうべき区間で
民家がなく川沿いの道路も途中までで立川へと入り込む南岸、
ガードレールのない細道が川から高いところを心細げに通る北岸と、
横瀬橋から上流は川に沿う連続した道がない区間。

勝浦川は本来の表情を取り戻し
谷の湧き水を集めた冷たい水が良質の苔を育み
上流の沢のような水に潜れば
対岸まで見通せる透明度だった。
ここでは5分も泳いでいられなかった記憶がある。
つまり、川は生きていた。
(ダムが生態系のみならず地域の共同体を破壊していく話はここでは繰り返さない)

いま勝浦川を見に来るといっても
それは川ではなく川とともにある里山の風景。
そうは言いながらも川を見に来てしまうのはどうしてだろう?

横瀬の屈曲点。
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対岸の河原から手前の岩場まで泳いでたどりつく。
(意外に流れはある)
水深は2メートル少々だったろうか。

現在の横瀬立川(ここでの立川は地名でここはまだ勝浦川本流)。
この水質できれいと思う人はほんとうの川を知らない。
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支流の立川へ入る。勝浦川右岸(南岸)の道路は本流を通らず立川をたどる。
この地区が脚光を浴びているのには理由がある。
立川河畔の森に大きな動物が息を潜めているからだ。
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それにしてもこの現実感、目の表情は虫類そのもの
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いい場所に鎮座している。林間の光では今にも動き出しそう。
道の駅に置かなくてよかったね。この場所でないと。

谷の水を引いた噴水?
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恐竜の里を過ぎて立川渓谷を歩いて登っていく。
高低差のある渓谷で降りられそうにない。
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やがて平坦な地形に出る。
この辺りまで来ると立川はおだやかな渓相。

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(対岸に石垣と棚田の跡があるから集落があったことがわかる)

水辺の木陰が印象的な場所
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さらに上流には民家に渡るコンクリートの小さな橋がある。
車は渡れない。
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水辺にはヒメレンゲが咲いていた。
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立川の散策はときめきを感じながらも心身は緩めている。
でも、運転はそうではない。
ガードレールのない崖っぷちの狭い箇所が何カ所かある。
(まちなかでしか運転したことのない人は怖いと思う)

日陰に展開する植物。テンナンショウ、ユキモチソウ、マムシグサがまっさかり
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キツネノボタンのように見えるが5枚花弁ではなく八重咲き
もしかしてヤエキツネノボタンかもしれない。
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在りし日の川を思う半日。
帰りはJA東とくしまの「よってネ市」で地元の柑橘を買った。
勝浦町は有数の香酸柑橘の産地。
きょうも甘夏を驚くような価格で買った。
甘酸っぱい思い出の川は記憶のなかで存在し続けるけれど。


追記
人が滅びダムが崩壊する近未来を想像しても往時には戻らない。
なぜなら、森が変わってしまったから。
手入れの行き届かない人工林には光が差し込まず
森林の新陳代謝が起こらない。
長い時を経て杉が枯死したり
大規模崩落が発生した後に自然林が蘇生することはあっても
それを手入れする人はもういない。
里山は人と自然の織りなす協働作業であったから。
経済とは経済界だけの定義ではなく(為替や株価などどうでもいいよ)
自然、風土との相互作用から引き出される社会的利益も含む概念だから。

タグ:勝浦川
posted by 平井 吉信 at 11:50| Comment(0) | 山、川、海、山野草
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