桜を眺めていたのがついこの間までで
季節はいつのまにか初夏へと。
連休中はやりたいことがたくさんあって
時間がいくらあっても足りない、
というかやりたいことが次々と出てきて
夜寝るのが先延ばし、朝起きるのが楽しみという日々。
もっとも連休が多いと収入は減少するけれど
それよりもやれることが多いことがうれしい。
→ パラレルワールド(異なる結末の記事)に行く
何をしているかといえば
・潮風に浸りに海へ行く
・地球の鼓動が感じられる場所でゆったりと過ごす
・新緑の山へ行く
・小さな山野草に心を通わせる
・自宅でいる間は料理をすべてつくる
・普段できない清掃をする
・紙の本を数冊、Kindleを数冊購入(8冊のうち半分は読んだ)
・ナイアガラ(大滝詠一三昧。運転でも自室でも風呂での鼻歌でも)
・ベートーヴェンの田園をさまざまな指揮者で聴く(いまの季節にぴったり。ここ数日よく聴いたのはワルター/ウィーンフィルのオーパス蔵による復刻版。音質もさることながら当時のウィーンフィルの想像を絶するみずみずしさと指揮者の個性が一体となっている。戦前の録音なのに音だけ聴けば誰もそうは思わないだろう)
・入浴時の呼吸(簡単な瞑想)
・仕事(したいとき、インスピレーションが湧いてしたいときに)
・このブログを書く
すべてに共通項があるとしたら
どれも「愉しい」ということ。
10連休でも20連休でも飽きることはないけど
みんなが同時に休むことはありえないので
(この休日が負荷の高い生活や仕事になっている方々も多い)
今回だけにして欲しいというのが大多数の人の声だと思う。
(休みたいときにそれぞれが休めるのがほんとうの姿ではないかと思うけど、個人的な利点があるとしたら仕事の電話がかかってこないので遊びに集中できることぐらい)
大滝詠一について再び書いてみようと思う。
A LONG VACATIONとEACH TIMEは日本のポップスの金字塔。
それ以前のナイアガラレーベルは一部の愛好家向きという感じはするけれど
この2枚(長い人生でたった2枚!)のすばらしさは言葉に尽くせない。
初出時はそれぞれ1981年と1984年。
A LONG VACATIONは初回プレスのアナログを持っているのは以前に書いたとおり。
この2枚、ひとことでいえば
完成度の高い(そして唯一無二の)A LONG VACATIONと
音楽に浸ってときを忘れるEACH TIMEと思っている。
前者は、「君は天然色」の衝撃に始まり
どこもかしこも松本隆、大滝詠一の描く音の情景のさわやかさ。
(さわやか、とは誰もが良いと思うような音世界の美しさ、わかりやすさを表している)
それでいて奥に秘められた職人芸の深さという聴き手の場面に合わせて
深度を変える音楽の懐の奥行きがある。
後者は松本隆の世界観が極まった感がある感傷的な詩の世界に
A LONG VACATIONを上回る職人芸で音楽を閉じ込めている。
何度聴いても色あせることがない。
けれど、発売される度にアレンジ、曲順、収録曲、リミックスが変わっていく。
(この点については大滝さん、考えすぎでは? 初出の構成が最善ではと思う)
ところがなぜか手元にあるのはコンプリートEACH TIMEのアナログ盤。

初出オリジナルを持っていない。
ところがアルバムの最後を飾る「レイクサイドストーリー」は
初出のエンディングが以後のアルバムでは変更されているというのだ。
(ファンの間では「大エンディング」と呼称されている)
待てよ、EACH TIMEのオリジナル、どこかで見たことある―。
そう思って記憶をたどるようにカセットを探したらすぐに見つかった。
オリジナルEACH TIME(見本盤)。

再生はどうするって?
いまは良質のカセットプレーヤーが入手できない。
いえいえ、これを持っています。

ソニーがカセットデンスケ(TC-D5M )とともに世界に誇る名機「ウォークマンプロ」(WM-D6C)。
(テレビは液晶ではなくていまだにブラウン管のトリニトロン15インチプロフィールプロを使っている。程度は極上。19インチプロフィールも健在、VHS再生も当時のソニーの名機が2台完動で待機中)
海外の民族音楽レーベル「ノンサッチ」で
名手ディヴィッド・ファンショーが現地録音で用いた機材が
これでないかと推察している。
(ぼくの好きな「南太平洋の島々の音楽」など)。
虫の声やせせらぎをワンポイントステレオマイクで録音するのに使っていた。

(さすがにナグラは持っていかないだろう。アンペックスやスチューダー? どうやって密林を歩いて運ぶの?熱帯の高温多湿な場所、電力確保が容易でない場所ならデンスケやウォークマンプロなどのカセットタイプがずっとハンドリングがいい。もしかして音質も負けていないのでは? それにしてもテープによる録音機って夢があるよね)
(コンポに組み込むデッキでは意外にトリオKX-880がよかった。定番のソニーTC-K333ESは長年使い込んだけど)
ヘッドもピンチローラーも極上のまま、
端子も錆びていない。
久しぶりにクリーニングを行う。
ACアダプターは紛失しているので(この時代のソニーの極性はいまと違う)
単三電池を4つ、新品を投入。
まずはカセットを装着して早送りでテープ面に風を送る。
シュルシュルと静かにキャプスタンが廻る、上々。

そしてステレオのイヤフォンをミニジャックに挿す。
再生でのドルビーはオフにする。
そして耳に流れた。

アナログのカセットってこんなにいい音だったのだ。
おそらく当時のCDよりもスペック(仕様)では負けていても
人間の聴く音楽としてはこちらが優っている。
エコー感を伴いながら高域が粒立ち、低域が有機的に弾みながら
声が浮かび上がる。
(これは30thリマスターの方向性でもある)
そして「レイクスサイドストーリー」の大エンディング、
聞き慣れたフェードアウトではなく
余韻を残して完結する。
まるで人生をかけて音楽と向き合った人たちの
最終章(コーダ)のよう。
涙がこぼれそうだ。
やはりEACH TIMEは初出(作り手のインスピレーションの高揚があった)がいい。
これをデジタルアーカイブしておきたいけれど
手持ちのPCや機材ではできそうにないな、と思いつつ。
(USBオーディオの変換装置が必要なんだろうね。いまは入手できない貴重な音源のカセットがたくさんある。購入後30年以上を経ているウォークマンプロフェッショナルが健在なうちに)
追記1
なぜ、業界の人みたいに手元に見本盤(非売品)があるかって?
それは秘密。
追記2
もし、EACH TIME 30thリマスターをやり直せるのなら
ぼくならこうしたい。
1.魔法の瞳
2.夏のペーパーバック
3.木の葉のスケッチ
4.恋のナックルボール
5.銀色のジェット
6.1969年のドラッグレース
7.ガラス壜の中の船
8.ペパーミント・ブルー
9.レイクサイド ストーリー(初出の大エンディング)
〔ボーナストラック〕
・フィヨルドの少女
・バチュラーガール
令和が始まって部屋でも車でも仕事中も浸りっぱなし。
大滝詠一の音楽は幸福感に包まれるね。
タグ:大滝詠一
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